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もし日本がNATOに参加したら...新冷戦で求められる「新たな外交戦略」

2021年05月11日 公開

グレンコ・アンドリー(国際政治学者)

グレンコ・アンドリー(国際政治学者)

NATO(北大西洋条約機構)には、世界で他に例のない実績がある。加盟国の本土が70年間、一度も武力攻撃を受けたことがない、ということだ。

全構成国が70年間も平和でいられた、というのは奇跡のような出来事である。現在、米中「新冷戦」のはざまにある日本は「世界最強の軍事同盟」に何を学ぶべきか。

※本稿は、グレンコ・アンドリー『NATOの教訓』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

 

世界最大の平和維持装置

NATOは世界最大の平和維持装置である。NATOは西・中央ヨーロッパにおいて、恒久的な平和を可能にした。また、NATOが東ヨーロッパに拡大してから、同じく恒久的な平和が東ヨーロッパの空間にまで伝播した。

「NATO圏=恒久的な平和が実現された空間」という論理で行くと、「全世界がNATOに入れば世界平和が訪れる」という結論になる。だが、これはあまりにも非現実的な展開なので、期待できない。

なぜなら、空間的な範囲を横においても、NATOとは自由・民主主義の価値観を共有し、基本的な安全保障の方針が共通する国同士の軍事同盟だからである。

世界にこの価値観と方針を共有しない国は多く存在するから、全ての国がNATOには入れない。

それでは、どこまで範囲を拡大すれば、NATOは世界規模での平和維持を可能にするのだろうか。

 

環太平洋軍事同盟とNATOを合併させる

まず、太平洋における集団防衛体制の確立は極めて重要だ。太平洋の周辺には、自由・民主主義の価値観を共有する国がかなりある。

日本、台湾、オーストラリア、ニュージーランド、チリ、メキシコ、アメリカ、カナダ。他にも中米や太平洋の島国で、自由・民主主義の価値観が通じる国はある。

また、改革を進め、自由や民主主義を導入する努力をすれば、インドネシアやフィリピンなど、東南アジア諸国も見込みがある。このように、環太平洋地域には、強力な軍事同盟を築くポテンシャルが十分ある。

もちろん厳密に言えば、北大西洋条約機構は名前からして「大西洋」であり、太平洋までは拡大できない。

実際の方法論としては、NATOと同じ方式で環太平洋地域の軍事同盟を形成し、その同盟がNATOと合併して世界規模の巨大な軍事同盟を築く、ということになる。

そして、NATOと環太平洋の軍事同盟の両方に加盟するアメリカとカナダを介して、両同盟は地理的にも繫がる。

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