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“DNAの9%”はウイルス由来…大昔に感染したウイルスが、いまや「全人類の体の一部」だった



2021年06月03日 公開

宮沢孝幸(京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授)

 

タンパク質合成に使われているのはわずか1.5%、ウイルス由来の配列はその6倍

まず、そのジャンクと言われた98.5%のゲノムDNAの配列にリピートしているものがあります。長い反復配列と短い反復配列がそれです。長い反復配列はLINE(long interspersed nuclear element)、短い反復配列は、SINE(short interspersed nuclear element)と呼ばれています。

LINEはレトロウイルスと同じく逆転写酵素の配列をもっています。LINEは逆転写酵素によってDNAを増殖し、ゲノムでのDNA配列を増やしていくことができるということです。

それに対し、SINEは逆転写酵素の配列をもっていません。ですからSINEだけでDNAの配列を増やしていくことはできないのですが、実はSINEとLINEの相互作用によってゲノムDNAの配列を増やしているのです。

このようにしてゲノムDNAを増やしていける仕組みが、ゲノムDNA自身の中に組み込まれています。最近になって、SINEやLINEが進化に大きく関わっていることも明らかになっています。

また、DNAの中には、古代のレトロウイルスである内在性レトロウイルスの配列が8%入っていることもわかりました。その後研究が進み、現在では9%以上入っていることがわかっています。

私の学生時代(1980年代)から、ヒトの遺伝子情報の中には、レトロウイルスの配列が入っていることはわかっていました。1984年頃には1%くらいは入っているだろうと予想されていたのですが、ゲノムプロジェクトにより8%も入っていることがわかったため、研究者たちは驚いたのです。

30億塩基対の8%がレトロウイルス由来の配列で、人間の体を作っているタンパク質の遺伝情報の5倍以上もの量だったのです。ちなみに、マウスの場合は、レトロウイルスの配列は10%入っています。

大昔に流行したレトロウイルスが、ヒトを含む哺乳類の生殖細胞に感染し、それが子孫に受け継がれて、体の一部になっているわけです。

 



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