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橋下徹「会話時の“マスク着用”を義務化せよ」

2021年07月14日 公開
2023年07月12日 更新

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

橋下徹(写真:大坊崇)

 

コロナ禍により、世界各国における危機管理能力の差が浮き彫りになった。日本は「要請」や「自粛」によって感染をある程度抑え込んだが、橋下徹氏は、国民に対する最も重要な政策が欠けていると訴える。どういうことなのか。日本がコロナ禍を乗り越えるための「次の一手」について提起する。(聞き手:Voice編集部 中西史也)

※本稿は『Voice』2021年8⽉号より⼀部抜粋・編集したものです。

 

コロナ禍で露呈した、「戦勝国」と「敗戦国」の差

――コロナ禍は各国の危機管理能力の差も浮き彫りにしました。世界と比較したとき、日本の危機下における実行力や決断力をどう評価しますか。

【橋下】現在の日本では菅さんの手腕で急速にワクチン接種が進んでいます。その点は評価すべきですが、アメリカやイギリスに比べれば動きが遅れたのも事実です。

アメリカは約60万人、イギリスは10万人以上の死者を出しているにもかかわらず、現在はもの凄い勢いでワクチン接種を進めており、経済活動も再開していますね。

アメリカはトランプ前政権時代に、ワクチンの開発・生産・供給を加速させる「ワープ・スピード作戦」を断行しました。

イギリスでは、健康な若者を意図的にウイルスに晒してワクチンの効果を調べる治験「ヒトチャレンジ」や、医療資格をもたないボランティアを訓練して注射を担う計画を実践しています。ワクチン接種を進めるという目的のためならば、多少のリスクは厭わない。じつに米英らしい姿勢です。

日本と米英では、そもそも政治システムや国柄が異なるし、「敗戦国」と「戦勝国」ならではの違いもあります。とはいえ、仮にこれが戦争だとすれば「完璧な治験がまだなので運用できない」「二重予約だから接種できない」などと言っていては、その間に敵国に攻め込まれてしまいますよ。

日本人の慎重さは、平時には良い部分が発揮されますが、とりわけ有事では「助走期間」が長すぎて実行力に欠ける。ワクチン接種については、米英の底力をまざまざと見せつけられた思いです。

 

一部の事業者ではなく、国民全体に義務を課せ

――コロナ禍を経験したことで、日本人のなかでも以前よりは、政府の権限をより強めるべきと認識する国民が増えているように見えます。

【橋下】まだ不十分です。本来であれば、いちばんの感染リスクである飛沫を防ぐ会話時のマスク着用の義務化を、罰則規定付きで行なうべきです。

緊急事態宣言やまん延防止等重点措置によって飲食店や映画館など特定の事業者の権利を制限してきたにもかかわらず、国民全体には何の義務も課していない。

外出自粛はあくまでも「要請」にすぎないし、飲食店でのマスク着用にしても、店側には客にマスクを着用させる義務があるけれど、客側には着用の義務はないというおかしな状況です。最も重要な感染対策を国民全体に強制せずに、特定の事業者の権利だけを制限するなんて、こんなに不公平極まりない話はないでしょう。

会話時のマスク着用の義務化は、第一義的には政府が提起したうえで、国会で早急に立法してもらいたい。その際、メディアや国民は、手続的正義が担保されているのかをチェックしなくてはなりません。

日本がコロナ禍を乗り越えられるかどうかは、政治家が決断力を発揮するとともに、国民全体が自分たちも負担を引き受けることを覚悟できるかどうかに懸かっているのです。

 

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