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橋下徹「府庁幹部が驚いた僕の“謝罪対応”」

2021年07月19日 公開

橋下徹(元大阪府知事・弁護士)

橋下徹

38歳で大阪府知事、42歳で大阪市長に就任し、大阪府の財政再建や都構想住民投票実施など、絶対に実現不可能だと言われた難題を実行してきた橋下徹氏。

その理由を、「どんなに正解がわからない問題であっても、組織やチームが納得できる結論を導いてきたからだ」と言い、今の日本のリーダーにはそれが足りないと語る。

そんな「橋下流・意思決定術」をあますところなく解説した著書『決断力』から、今回は「謝罪対応の極意」について紹介する。

※本稿は橋下徹 著『決断力』(PHP新書)より一部抜粋・編集したものです。

 

間違えたら「即謝罪」。隠ぺいなんてもってのほか!

日本の行政には、「政府・行政は間違いを犯さない」「だから謝罪はしない」という考え方が染みついています。民に謝ると、政府・行政の権威がなくなるとでも思っているのでしょう。これは、自分たちは絶対的に正しいんだという、ある意味、実対的正義の考え方です。

僕も大阪府知事になるまで、行政機関というのは間違いがあってはいけない、また間違いはめったに犯さない組織だと思っていました。

ところが、いざ自分が知事や市長になってみると、現場の幹部たちはスーパーマンでもなんでもなく、普通のおっちゃん、おばちゃんです(笑)。もちろん、向学心に富み、真面目に一生懸命に仕事をしていて、副知事(副市長)、局長、部長、課長などという立派な肩書きを持ってはいますが、言ってみれば、みんな普通の人。当然、間違えることもあります。

僕自身も、知事、市長として「あっ、失敗した」と思うことの連続でした。そろそろ政治家も公務員も、「絶対に間違えない政府」「絶対に間違えない行政」という考え方を捨て、少し肩の荷を下ろしたほうがよいのではないかと思います。

たとえば僕は知事時代に、完全に間違った議会答弁をしたことがあります。教育問題について問われたときに「それについては、教育委員会に『指示』をしておきます」と答えました。議場が騒然となり、「教育委員会の独立性を侵害している」「知事が教育委員会に指示をする権限なんてない」と批判が巻き起こりました。

実際、答弁は僕の完全に間違いでした。法律上、教育委員会は知事から独立しています。だから、知事は教育委員会に対して指揮命令権はありません。知事と教育委員会は相互に独立した関係にあり、知事は教育委員を任命することまではできるけれども、任命後は委員に指示することはできない。

この件は色々なメディアでも取り上げられ、騒ぎとなりました。当然、翌日の議会で釈明しなければなりません。早速、どのように釈明するのかを考えるために会議室に府庁の幹部が集まり、知事会議が開かれました。府庁の役人が作った釈明答弁用の分厚い説明資料が僕の前に出されました。

それを読むと何が書いてあるのかさっぱりわからない。ダラダラと長い文章が続いているものの、僕の発言の間違いは最後まで認めていない(笑)。とにかく相手を煙に巻くように、ああでもない、こうでもないと文章が続いて、終わります。

 

すぐに謝れば、物事も組織も前に進む

思い出すのは馬関戦争(下関戦争)に敗北した長州藩の高杉晋作が、英仏蘭米の四か国連合艦隊との敗戦処理をめぐる交渉の中で、『古事記』を延々と詠み始めたという都市伝説的なエピソードです。

意味不明な言葉の洪水に、相手は音を上げてしまったという話で、府庁のこの釈明答弁案は同じ作戦だったのでしょう。間違っているのに間違いは認めないときの役人たちの常套手段です。

僕は「法律上、知事は教育委員会に指示できないんだから、僕の発言は完全に間違いです。まず謝りますよ」と言いました。すると幹部たちは「えっ? 知事が謝るんですか!」と、飛び上がらんばかりの驚きよう。しかし「だって、間違えたんだからしょうがないでしょう」と僕は言い、結局、議会で謝罪することを決めました。

もちろん府庁幹部たちも、僕の立場を守るためになんとか間違いを認めない方法を必死に考えてくれたのでしょう。しかし、明らかな誤りについてはごまかさずに誤りをスパッと認めないと、信用を失うだけです。

間違いを認めなければ、延々おかしな言い訳に終始するだけで、そのおかしさは周囲に必ず伝わります。いまの政府はおかしな言い訳が多く、信頼を失っていますよね。

他方、謝罪すると決めれば、コメントは簡単。3行くらいですみました。議場で「『教育委員会に指示』と言ったのは間違いでした。知事に教育委員会を指示する権限はありません。申し訳ありません」と釈明して終わり。

僕は幹部たちに「これからは間違っていたら、言い訳をするのをやめて、謝って修正する。変な言い訳は考えないでほしい。他にも何か間違いがあったら、修正するので言ってください」と伝えました。

すると「実は、この点については間違っていました」というものが、各部局から山のように出てきた。「みなさん、こんなに謝らなあかんことをこれまでごまかしていたの?」という感じでした(笑)。

そこから、「○○は間違いでした。申し訳ありません」「××は間違いでした。申し訳ありません」の連続でしたが、「僕が知事(市長)でいる限りは、間違ったら謝って修正する」という方針が、組織にある程度浸透したのではないかと思います。

このように僕は知事、市長の8年間に謝罪・修正の表明をいくつもしています。手続的正義の考え方に基づいていったん決めた判断については、激しい批判を受けても貫くことが多いので、「橋下は絶対に謝らない」というイメージがあるかもしれません。しかし、実は謝るときにはきっちりと謝っています。

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