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橋下徹「僕が一目置く部下には“ある共通点”があった」

2021年07月21日 公開
2023年07月12日 更新

橋下徹(元大阪府知事/弁護士)

 

「反対意見」を意識できないリーダーは三流だ

拙著『実行力』(PHP新書)でも書きましたが、僕は職員に対して「案を出すときには、3つ出してほしい」と言いました。案を出すときには、たとえば両極端な案と中間案の3つを持ってきてもらい、みんなに議論をしてもらう。

僕は議論を聞いて、比較優位の考え方で案を選びました。これまで述べたように絶対的な正解というものは見つけられませんから、出された案の中で「どれがよりマシか」という基準で決めます。

提案をする人は、自分が担当している案件のことしか頭にないかもしれませんが、上司は同じような案件をいくつも抱えています。幹部クラスであれば、現場担当者の10倍、20倍の手持ち案件があり、並行して処理しなければなりません。

部下が一生懸命にプレゼン資料を作って持ってきても、上司にとっては、何十個もある手持ち案件のうちの1つです。全部の案件に対して、細かい問題点を指摘することなどできません。だから、上司が判断する案について複数の案を対比して、それぞれの問題点まで整理されていると本当に助かるのです。

逆にいえば、上司は部下から案件が上がってきたときに、「問題点は何だろう」「どんな反対意見があるのだろう」と意識しなければ、適切な判断などできません。問題点や反対意見を聞かない上司は、そもそも管理能力のない上司なのです。

ただし、上司自らがすべての案について、問題点を把握できるわけではありません。大きな組織の長の場合、自分でそれを見つけ出し、解を探し始めると、必ず失敗します。

大阪府知事・市長時代の僕は、問題点を指摘してくれる指摘役を置きました。大阪府には50くらいの部局があり、知事が各部局の1つ1つの案件について細かい知識を持つことはできません。

僕の場合、部局を超えて職員の中から40代くらいの優秀な人たちを集めてチームを作り、メンバーたちに各部局が持ってきた案件について、問題点を指摘し整理してもらいました。

部局が出してくる案件についての反対意見を述べてもらうのです。そして当該部局と問題点指摘チームの議論を目の前で聞いた上で、最終的な判断を下しました。これも手続的正義の考え方です。

組織において、この手続的正義の考え方に基づく判断の仕組みを共有すれば、組織の決定が円滑に、かつ適切に進むと思います。

ただし、出てくるすべての案件について「フル装備」の判断プロセスにすれば良いわけではないと思います。裁判の場合は、人の一生を左右しますから、100%の重装備かつ厳格なプロセスが必要です。しかし、皆さんの職場においては、案件ごとや状況に応じて、プロセスの軽重を変えていくべきでしょう。

「賛成70対・反対30」のような問題の判断のように、どちらを選択すべきかが比較的明らかな場合には、反対意見も少し聞けばいいかと思います。他方、「賛成51対・反対49」くらいの難しい判断を求められた場合には、両者の意見をしっかりと聞くプロセスを踏んでいくことが必要です。

簡単な案件はどんどん捌いていき、難しい案件ほど重厚なプロセスを踏む。これが原則です。

 

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