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働き盛り世代が損するコロナ対策...「マジでトランプ5秒前!」な日本の現状

2021年10月25日 公開

谷口功一(東京都立大学法学部教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

谷口功一、三浦瑠麗
(写真:吉田和本)

依然として続く新型コロナ禍で苦境に立たされる飲食業界。緊急事態宣言が解除されても、そのダメージは甚大だ。10月末に迫る衆議院議員総選挙を前に、政治家が成すべきこととは――。スナックの実情に精通する法哲学者と、自営業者の支援に取り組む国際政治学者が白熱議論。

※本稿は『Voice』2021年10⽉号より抜粋・編集したものです。

 

高齢者と若者に「挟撃」される40~50代

【谷口】コロナ下では「トロッコ問題」(ブレーキの効かなくなったトロッコが真っすぐ進めば5人を、ポイントを切り替えて曲がると一人を轢いてしまう状況)が再浮上しました。

ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか、という立論自体が非道徳的だと反発する人がいますが、じつは我々はすでに、高齢者を救う一方で、若い女性へのしわ寄せをやむなしとするスイッチを押しているわけです。

言い換えれば、ワクチン接種をはじめとするコロナ対策で割を食っているのは、生産年齢人口(15~64歳)の人びとです。ここからコロナで重症化するリスクが低い若者を除けば、残された働き盛りの40~50代はワクチン接種も思うように進まず、上下の世代に「挟撃」されているともいえます。

【三浦】コロナ禍で社会が負担するコストについて、岩本康志さん(東京大学大学院経済学研究科教授)が一度目の緊急事態宣言の解除後、2020年6月に興味深い議論を展開していました。彼は、コロナ第一波を抑え込むことで我々が得たものとその価値の定量化を試みた。

詳細は「岩本康志のブログ」を参照いただきたいのですが、一度目の緊急事態宣言で「何もしなかったら死亡したであろう42万人の余命を平均半年延ばした。その価値は国内総生産(GDP)の0.5%である」と計算しています。

西浦博さん(京都大学大学院医学研究科教授)が発表した死者42万人という想定を「怪しげ」としながらも最悪のシナリオとして採用し、第二波までの猶予を半年とおいた過程から導き出されたものですが、2020年のGDPは結果的に前年比4.8%のマイナス成長でした。

岩本さんがブログで指摘するように、命を守ることへの支払意思額は状況に左右される傾向にあります。感染拡大の初期段階では跳ね上がり、経済被害が長引くと下がってくる可能性があります。

少なくとも、GDPの中核を担う40~50代が失った富やそのコストに関する議論はあって然るべきでしょう。

【谷口】岩本さんの指摘は非常に重要です。つけ加えるならば、「ジャネーの法則」にも目を向けるべきだと思います。人生のある時期に感じる時間の長さは年齢の逆数に比例するという法則です。

たとえば18歳の人にとって1年の長さは18分の1なのに対し、54歳の人にとっての1年は54分の1、すなわち18歳の人のほうが3倍長く感じる。その分、若い人の1年のほうが3倍分の価値をもつともいえます。

このような観点から、いま無批判にまかり通っているシルバーデモクラシーも再考すべき局面にあるといえるでしょう。

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