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働き盛り世代が損するコロナ対策...「マジでトランプ5秒前!」な日本の現状

2021年10月25日 公開

谷口功一(東京都立大学法学部教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

 

「マジでトランプ5秒前!」

【三浦】それでは政治が何をすべきかといえば、私はまず「民を恐れよ」と言いたい。政治家は軽々に「不要不急」などという言葉を使うべきではありません。

【谷口】西村康稔経済再生担当大臣(当時)が、酒の提供停止要請を拒む飲食店の情報を金融機関に流して順守を働きかけてもらうこと、また酒類販売事業者に対して酒の提供要請に従わない飲食店への酒類取引の停止を呼びかけたことは、飲食業者の権利をあまりにも軽んじる行為でした。

法的根拠に基づかない圧力そのものであり、大臣を更迭されてもおかしくなかった失態でしょう。

【三浦】ええ。本来は権限がない事柄に対しても当然のように要請する政府の対応を見ていると、どうも感覚が麻痺しているといわざるをえません。

ただね、飲食店の酒類提供停止や夜8時以降の営業停止にしても、「優越的地位の濫用」をもち出すまでもなく、政府による過剰な権力行使であるわけですが、それは話題にならない。

【谷口】酒類の提供停止に関する政府のやり方はじつに狡猾で、あくまで「要請」という立場をとっている。政策を国民の「自発的な意思」に委ねるのは、法律として本来は望ましくないことです。

公衆衛生上の観点から必要な措置だというならば、法理を明確にして立法すべきでしょう。法的手続きがなければ、納得のいかない飲食店が訴訟自体を起こすことさえできないのですから。

【三浦】飲食業の産業としての位置づけを考えると、日本においては保健所の指導などはあるものの、政府からの締め付けが比較的緩い、非規制産業です。一方で、アメリカやヨーロッパの多くの国では規制が厳しい産業であり、平時は国による締め付けが厳しい代わりに、有事における補償は充実している。

私は本来であれば、欧米のように窮屈にコントロールされた体制ではなく、日本のようにある種の「緩さ」や「余白」を残して規制するほうが健全だと考えています。

ただし、今回の感染症蔓延のようなケースは今後も起こりうるわけで、特例措置としての補償の仕組みに関しては公平性をもって整備すべきでしょう。

【谷口】私も、欧米のように窮屈な営業認可のコントロールには反対です。そもそも自営業者には、お上からの干渉を避けたがる人が多い。

飯田泰之さん(明治大学政治経済学部准教授)が指摘するように、飲食業は開発経済学でいうところの非公式セクターに近い存在です。たとえ学歴がなくとも、自分の腕一本でのし上がることができる。そんな人びとを世間知らずの政治家や官僚、学者が見くびって冷遇しているわけです。

日本の現状は憤懣(ふんまん)のマグマが暴発寸前で、「『夜の街』の憲法論」で友人の学者の発言に触れたように「マジでトランプ5秒前!」ですよ。

 

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