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「飲食・エンタメ・観光業」をすくえるのか...来たる衆院選で試される政治力

2021年10月27日 公開

谷口功一(東京都立大学法学部教授)&三浦瑠麗(国際政治学者)

谷口功一、三浦瑠麗
(写真:吉田和本)

依然として続く新型コロナ禍で苦境に立たされる飲食、エンタメ、観光業界。緊急事態宣言が解除されても、そのダメージは甚大だ。10月末に迫る衆議院議員総選挙を前に、政治が成すべきこととは――。スナックの実情に精通する法哲学者と、自営業者の支援に取り組む国際政治学者が白熱議論。

※本稿は『Voice』2021年10⽉号より抜粋・編集したものです。

 

自営業者に求められる雇用保険と「政治力」

【谷口】三浦さんは飲食業のみならず、芸能関係者の支援制度の拡充も訴えていますね。

【三浦】はい。コロナ禍では飲食業や旅行宿泊業とともに、娯楽・生活産業も甚大な被害を受けています。演劇界への公的支援を求める「演劇緊急支援プロジェクト」が行なった調査によれば、回答者である俳優や声優、劇作家など文化芸術に関わる人の32.5%が「コロナ禍で死にたいと思った」といいます。

【谷口】3割以上ですか…深刻な数字です。

【三浦】私がいま政府に提言しているのは、フリーランス・自営業者も立派な労働者であり、その働く権利を守るべきだということです。そのためには、フリーランスが雇用保険に任意加入できる制度を速やかに整備すべきです。

しかし、私も参加している政府の成長戦略会議では、フリーランス・女性・若者・自営業といった立場を代弁できる人間は私一人しかいません。政府にそうした分野の人たちの実態に対する理解や想像力が圧倒的に欠けているのは不思議ではない。同じことは、学界や専門家についてもいえるはずです。

【谷口】コロナ下では「専門家」の役割についても議論されましたね。私は専門家に対しては一定の敬意を払い、自らの領域外の事柄については下手に口を出すべきではないと考えています。

ルソーやミルの思想にも出てくる「討議と決定の分離」につながる話です。感染症や税制といった専門的な内容については、その道の専門家がいくつかのパッケージを示したうえで、民主的な信託を受けた政治家が責任をもって決定する。専門家と政治家の役割を機能的に分離するのが望ましいでしょう。

ところが、現在は専門家が前のめりになって世の中に直接、言説を発信しているようにみえます。これは政治の側の無力・無責任であり、「権力の過少」というべき状態です。国会議員は先に述べた立法の職務を自覚し、遂行しなければならない。

【三浦】表に出て積極的に発信している「専門家」の多くは、自分たちの仕事の価値を過大評価しているように見受けられます。もちろん自負や責任感をもつことは大切ですが、人間には限界がある。

私が研究してきたのは軍ですが、軍人の戦場における責任感と高揚感に基づく暴走にも似ています。そのためにも政治と専門家の切り分けが必要ですね。政治の側も責任と決断とを担いきれていません。

【谷口】政府与党は、10月末の衆議院議員選挙で痛い目をみるかもしれません。かといって野党は、権力に抗うことこそが正義だと勘違いしているようですが。

【三浦】野党が事業者の補償を叫ぶのはいいけれども、それがすべての免罪符になるわけではありません。「労働の喜び」に対する想像力がなければ、事業者に評価されることはないでしょう。その意味では、野党の態度も表面的にみえます。

一方で事業者の側も、業界の横のつながりを広げる必要があるのではないでしょうか。今年8月に茨城県ひたちなか市で開催予定だった「ロック・イン・ジャパン・フェスティバル2021」が中止になったのは、県の医師会の要請があったにせよ、残念でした。運営側にとっては苦渋の決断だったと重々承知していますが、本音をいえば意地をみせてほしかった。

フリーランスの窮状は深刻化する一方でしょう。エンタメ業界の雇用保険の仕組みを整えると同時に、まとまりとして政策を動かせる「政治力」をつける必要があります。

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