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「台湾問題」は国際課題...習近平の野望をなんとしても抑制させる意義

2021年11月01日 公開
2022年02月16日 更新

石平(評論家)、掛谷英紀(筑波大学システム情報系准教授)

 

日米同盟は「協力して台湾を守る」というメッセージを明確に

【掛谷】私は、アメリカ大統領選挙の前の段階で、ある信頼できる評論家の方に「バイデン政権になったときに、台湾は大丈夫ですかね」と尋ねました。

その方は「もうトランプ政権の間に、かなりの程度、台湾を防衛するシフトをつくってあり、政権が代わったとしてもそう簡単には方針を変えられず、シフトも変わらない。ですから、アメリカが台湾を守るのを放棄するということは、バイデン政権になってもないだろう」という見解でいらっしゃいました。

実際にバイデン政権になって、現在のところは、その方の見解の方向で来ているのかな、という認識です。さらに今後、冷戦的な分断が起きた場合、重要になってくるのは、台湾には半導体の大手メーカーのTSMCがあることです。

台湾は軍事的に必要な製品を生産している国ですので──まあ私は「国」と言いますが──そう簡単にアメリカは放棄できないはずです。そういう意味から考えても、やはりアメリカとしては台湾を守らないなんてことは、現状では考えにくいと思います。

その一方で、私は中国のタブロイド『環球時報』の英語版『グローバルタイムズ』をツイッターでフォローしていますが、『グローバルタイムズ』は、「もしも日本がアメリカと協力して台湾と尖閣を守るとするならば、日本は中国の攻撃対象になる」と、はっきり言っています。

しかし逆に言えば、ここまで脅しをかけるということは、要するに日本とかアメリカが絶対に動かないという状態をつくらないと、中国としても手を出しにくいということを、これは表しているのかなとも思います。

ただいずれにしても、中国は本音としては、安全に、絶対に失敗しないように台湾が獲れるなら、確実に獲ることは間違いありません。そういう状況をつくらないように、日本はアメリカと協力して防衛力を強化することが必要なのは確かです。

【石】私もまったく同感です。現状、台湾海峡、台湾の平和が維持されることが日本にとっては非常に重要です。逆に、台湾が中国に併合されれば、日本はもう地政学的に、中国の属国になるのと同然になってしまいます。シーレーンを封鎖されて、安全保障が台無しになりますから。

台湾問題は当然、日本にとって他人事では決してなく、日本の存続にも関わる問題です。先ほど掛谷さんがおっしゃったように、TSMCなどもありますから、アメリカにとっても台湾は簡単に放棄できません。

「協力して台湾を守る」というメッセージを日米同盟がより明確に送り続けることが、まさに、習近平の野望を思いとどまらせる非常に大きな抑止力そのものになるんです。アメリカと日本は台湾海峡を含め、この周辺を守るという決意をもっと明確に示す必要があると思います。

幸い、イギリス海軍もやってくるので、イギリス海軍とも連携すれば、中国に対してかなり大きな抑止力になることは確実であろうと思います。

 

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