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「躍進の維新」と「惨敗の立憲民主」の決定的な差

2022年01月25日 公開

逢坂巌(駒澤大学法学部准教授/駒澤大学ジャーナリズム・政策研究所所長)

逢坂巌「「躍進の維新」と「惨敗の立憲民主」の決定的な差」

2021年10月末の衆議院総選挙では与党が圧勝し、立憲民主党や共産党は議席を減らした。一方で野党のなかでも、日本維新の会は大きく議席を伸ばし、躍進した。政党間の戦略にどのような違いがあったのか。駒澤大学の逢坂巌准教授は、立憲民主党と日本の維新の会におけるメディア戦略の差を指摘する。両党の命運を分けたものとは。

※本稿は『Voice』2022年2⽉号より抜粋・編集したものです。

 

みんな維新のおかげ?

【逢坂誠二(立憲民主党・代表代行)】「我が党はいろんな政策もいっぱい法案も出していますが、伝える力が弱い。もっともっと伝える力をしっかりしなきゃいけない。もう一つは、先日テレビ見てましたらね、大阪のある地域の自転車置き場で中年の奥様が『この自転車置き場をきれいにしたの、維新なんだよね』と言うのです。それはまさに自治の課題です」

【司会】「大阪でいろいろ、与党としてやっていることが、それがみんな維新のおかげだと言う……」

【逢坂】「『みんな維新』っていうことで 国政にまで影響を与えている。やっぱりそういうところが我が党に不足しているところだと思う。理念とか政策とか法案のPR不足。それから地べたに這いつくばるようなですね。皆さんの本当に役に立つというようなことを、――みんなやってるんですよ――、やっているけれども馬場さん(の日本維新の会)はその点やっぱりお上手。あとで勉強に行かなきゃいけないですね」

【馬場伸幸(日本維新の会・共同代表)】「我々が全国政党に広がっていくためには、地方議員さんも必要です。で、地方自治体の首長さんをそのなかから誕生させていく。そういう基盤がしっかりできたなかで国会議員を誕生させる。そうすると国と地方がうまく絡み合いますんで、よりそのパワーアップした政治というのはできると思います」
(BS TBS「報道1930」2021年12月6日放送)

政治メディアを人々と政治をつなぐ媒体だと想定すると、政党や政治家が得票を得るべく有権者とコミュニケーションをとろうとする際には、組織と広報という二つの異なったメディアが考えられる。

組織とは、政党の地域・職域の支部や党員、所属の地方議員やその支持者、各種の支持団体とそこに所属している人びとであり、それ自体が票の母体であると同時に、ヒューマンパワーや選挙資金の源泉でもあり、ポスター貼りから電話かけ、知人の紹介まで選挙に欠かすことができない。

一方、広報とはマスメディアやインターネットを通じて、主として組織されていない人びとにメッセージやイメージを届けることである。前世紀末から無党派層が急増し、有権者の約半数となった。無党派は投票の二~三日前に投票先を決定する場合が多く、選挙においてどのような風が吹くか、党首のイメージや政党からのメッセージ、またマスメディアなどの報道が重要なものとなっている(*1)。

そこで以下では、組織と広報、二つのメディアの観点から、今回の衆院選では伸び悩んだ最大野党の立憲民主党と、逆に前回より四倍増の議席を獲得した日本維新の会を中心に、2021年後半の政治コミュニケーションを見つめ、課題などを考えてみたい。

【注釈】*1:メディアの報道が投票行動に直接に影響するかは政治学でも議論が続いている。ただ、先の衆院選でも僅差の小選挙区も多数存在している。選挙における「風」や「広報」の重要性は確認できよう。

 

古参政党がもつ基盤

各党の「組織」各所属の地方議員と当院数

まずは、組織から見てみよう。表1は各党に所属する地方議員数(都道府県議と市区町村議)と党員数を表したものである。日本の政党は地方議員の組織化や党員も少なく、いわゆる組織政党とは異なることが特徴とされる。

表を見ても、大半の地方議員は無所属で、全国政党に所属するのは全体の3分の1にとどまる。しかし、それでも共産・自民・公明などの古くから続く政党はそれぞれ3,000名ほど、都道府県で平均すると50〜70名の議員が存在している。それらの地方議員は、国政選挙となるとそれぞれの支持者に投票を呼びかけたり選挙の手伝いをしたりと、それなりの応援をおこなう選挙における組織メディアの基盤となる。なお、地方議員に多い保守系無所属議員は主に自民党の選挙運動をサポートしてきた。自民党の組織メディアは表の数字以上に大きい。

また、これら古くからの党は党員の数も多い。たしかに有権者全体からすると小さな数ではあるが、都道府県平均では6,000から2万名ほどとそれなりの人数となる。共産党の街頭演説会に行くと、会場設営やチラシ配布、そして応援など、多くはご高齢の方々が甲斐甲斐しく、「働いて」いるが、党員は票数のみならず、選挙をボランティアとして支える人びとの基数となる。

公明党には公称827万世帯を擁する(公式HP)創価学会が支持団体としてついており、選挙を支える重要な組織メディアとなっている。

 

組織への意識が薄い立民

それでは、立民と維新はどうだろうか。

まず、立民は地方議員、党員とともに数が少ない。地方議員は1,265名で都道府県平均27名、党員は約10万人で同平均2,000人にとどまる。自民と比較すると、地方議員数では3分の1、党員数では10分の1以下であり、自前の組織メディアの「足腰の弱さ」が数字でも表れている。

この「弱さ」を補填し、各選挙区で選挙の実働部隊になるのが労働組合とされる。しかし、今回の選挙では共産党との共闘に対して、職場や業種ごとで長年因縁の関係にあった組合が反発、連合の新会長も共闘反対の発言を連発するなど、立民の実働部隊、選挙メディアとしての労組は動揺した。

対して維新も地方議員は388名、都道府県平均も8名と少ない。しかし、周知のように議員は関西圏に集中しており、比例近畿ブロック(1府5県)で327名(うち大阪府に242名、兵庫県内に52名)、府県平均でも近畿圏では52名と共産党に並ぶ「濃いメディア」を有しているといえる。

また、維新に属する首長も大阪府を中心に17名おり、なかには代表の松井一郎大阪市長や副代表の吉村洋文大阪府知事など全国的にも発信力の強い人物も存在する。

維新の議員たちは地元の人の要望をよく聞き、それを同じ維新の首長につないで対応させる。直接陳情する人はわずかかもしれないが、発信力の強い首長らがその「成果」を宣伝することで、冒頭のような「みんな維新のおかげ」となる。人気者の橋下徹の元に自民党府議団の一部が参集したことを源とする維新は、軍団のような組織とテレビなどを「活用」した広報、地上戦と空中戦のうまい組み合わせが機能しているように見える。在阪メディア、とくに民放テレビの報道傾向も維新の空中戦を支える。

一方、前世紀末のアンチ自民、都市部の無党派、団塊の世代を苗床として成長した民主党を源とする立民は、組織への意識が薄い。2000年代初期、民主党の新人都議に「我々は『風(世論)』で当選した。後援会は必要がないので作らない」と言われて驚いたことがあるが、「地べたに這いつくば」って自前の組織を作るよりも、労組や市民団体などの既存の団体に実行部隊として支えてもらい、あとはいかに風に乗るか。

「アンチしがらみ」「アンチ利益集団政治」を掲げることもあって、そのような傾向が強かったように感じる。維新が党首や首長を上に据えるピラミッド型の軍団であるならば、立民は実行部隊としての各団体を喧嘩しないようにそっと風呂敷でまとめつつ、外に対してP Rを行う広報中心の政党に全体としては依然とどまっていたのではないだろうか。

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