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「アフリカでのワクチン大量廃棄」が引き起こす次の心配

2022年02月17日 公開

國井修(グローバルファンド戦略・投資・効果局長)

國井修(グローバルファンド戦略・投資・効果局長)

依然として続く新型コロナウイルスのパンデミック。感染力の強いオミクロン株に対して我が国は、そして世界は今後どう対応するべきなのか。グローバルファンド〈世界エイズ・結核・マラリア対策基金〉戦略・投資・効果局長を務める公衆衛生の専門家が提言する。

※本稿は『Voice』2022年3⽉号より抜粋・編集したものです。

 

ウイルスと共に生きる未来を考えよ

依然として猛威を振るう新型コロナウイルスのパンデミックにおいて、日本は今後、どのような方針をとっていくべきだろうか。

今年1月19日、政府の新型コロナウイルス対策を議論する有識者会議「基本的対処方針分科会」後の会見で尾身茂会長は、繁華街への人出を減らす「人流抑制」から飲食店などの「人数制限」へ対策をシフトすべき、メリハリのついた効果的な対策が必要、何でもやめるというステイホームは必要ない、リスクの高い状況に集中して対策を行なうことが重要、などと語り、波紋を広げていると聞く。

現在のオミクロン株の特性、そして社会経済の正常化を考えると、尾身会長の発言は方向性として間違いだとは思わない。

1918~19年のスペイン・インフルエンザや2002~03年のSARSのようなパンデミックの消退も期待されていた。しかし現状では、新型コロナが完全に消えることは考えづらく、ウイルスと共に生きる未来も考えなければならない。これまでの新興感染症がそうであったように、新型コロナもその可能性は高い。

ヒトに感染する微生物は約1400種類といわれる。そのなかにはエイズやエボラ熱、鳥インフルエンザなどのようにかつては世界を脅かしたものも、一方で結核やインフルエンザ、麻疹など、古くから存在しながらいまだに感染者・死亡者がなかなか減らない感染症もある。たとえば結核は、2020年に世界で推定150万人(1日4000人以上)が死亡し、その潜在性感染は世界で17億人ともいわれる。

しかし、これらの感染症に対して人類がそれほどの脅威を感じずに生きていけるのは、病原体の正体をある程度理解し、病気になったときに診断・治療ができる、それによって死亡する確率が高くはない、という安心感からであろう。

どんな感染症でも、100%確実に診断・治療・予防できる検査法・治療薬・ワクチンはない。ただ完璧でなくとも、それなりに効果的な対応を行ないながら、感染や死亡を抑えることは可能である。

現在、新型コロナに対しては、他の感染症対策と比べても遜色のない、いやむしろ優れた検査法・治療薬・ワクチンが開発されてきた。研究開発はいまも進行中で、さらに優れた製品が登場するかもしれない。

これらのツールを最大限に活用しながら、人びとが「脅威」や「恐怖」を感じずに生きることは可能だ。さらに、メリハリのある効果的な対策を行なうことで、「不自由」や「生きづらさ」を感じずに生きることもできる。

また、感染症と共に生きるうえで重要なポイントが三つある。

一つは、新規感染者が何人発生したとメディアで毎日煽る報道をやめ、重症者・死亡者数などを指標として専門家が分析・助言し、政府・地方自治体が定める措置・対策を一般市民にわかりやすいメッセージとして発信すること。

二つ目に、新型コロナ対策を緊急対策ではなく、ルーチーンの対策のなかに組み込み、他の疾病対策と共に包括的に取り組んでいくこと。

三つ目に、感染・死亡リスクの高いものに集中した措置・対策を進めることである。

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