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「侵略的な覇権主義路線」に走り出した習近平...政権3期目が最も危険なワケ

2022年02月22日 公開

石平(評論家)

石平

かの毛沢東は、周辺民族と国々に対する侵略戦争に明け暮れた。それは、周辺民族を支配下に置いて、彼らから「臣服」を受けることが皇帝の証明だったからである。そしていま再び、中国の独裁権力者である習近平は、毛沢東と同じ道を疾走しようとしている――。

※本稿は、石平著『新中国史 王の時代、皇帝の時代』(PHP研究所)を一部抜粋・編集したものです。

 

世界全体を支配するのが皇帝の証明

紀元前3世紀に秦の始皇帝の手によって創建された皇帝政治は、それからの二千数百年にわたってずっと中国の民にとって災いの元であって、中国史の「悪」そのものである。

じつは、自国の民を奴隷のように搾取して抑圧するのと同時に、中国の皇帝と皇帝政治が持つもう1つの悪習は、すなわち王朝周辺の諸民族と国々に対して侵略行為と征服を繰り返して、周辺民族と国々を無理やり中国王朝の支配下に置こうとすることである。

前漢時代に儒教によって生み出された「皇帝観」からすれば、中国王朝の皇帝はたんなる「中国」という1つの国の皇帝ではなく、むしろ「天」に代わって「天下」を支配する最高主権者と位置付けられている。

そして伝統的な中華思想においては、この「天下」とはまさに世界全体であって、中国王朝周辺の諸民族と国々もそのなかに含まれている。

つまり、中国独特の皇帝観と中華思想の世界観に基づけば、周辺の諸民族の住む土地は全部中国の皇帝様の所有物であって、諸民族は皆、中国皇帝の臣民でなければならない。

したがって、中国の皇帝は中国大陸だけを支配するのではなく、周辺民族と国々をも支配しなければならない。その一方、周辺民族を自らの支配下に置いて彼らからの「臣服」を受けることはまた、中国皇帝が皇帝であることの証明であって、「天」から選ばれた「真命天子」であることの印なのである。

 

侵略戦争に明け暮れた毛沢東

1912年2月の清王朝の崩壊から37年後の1949年10月、王朝の宮殿の正門だった天安門の上から、内戦に勝ち抜いた毛沢東という人物が今の中華人民共和国の成立を宣言した。まさにその瞬間から、この毛沢東は「皇帝」という称号を持たない事実上の「新皇帝」として中国に君臨し始めたのである。

その時から1976年に彼自身が死去するまでの27年間、毛沢東皇帝が中国人民に対してどれほどひどい圧政を行ない、国家と人民を食い物にしてどれほど貪欲な生活を送っていた。その一方で、彼はまさに中国史上の偉大なる皇帝たることを目指して、周辺民族と国々に対する侵略を繰り返した。

1949年に中華人民共和国建国の直後、毛沢東配下の解放軍はまずウイグル人たちの住む新疆地域に進軍して占領した。翌年の1950年からは独立国家だったチベットに侵略軍を差し向け、時間をかけてチベット全域の征服に成功した。同年1950年に朝鮮戦争が起きると、毛沢東は数十万人単位の解放軍部隊を「志願軍」と称して朝鮮半島に派遣し、アメリカ軍を中心とした国連軍と戦った。

1962年には、毛沢東の解放軍は国境を越えてインドの領内に侵攻し、インドとの国境戦争を発動した。さらに1969年には、もう1つの大国であるソ連とも国境を挟んで軍事紛争を起こした。

こうして見ると、新皇帝の毛沢東はかつての前漢の武帝や清王朝の康熙帝のように、偉大なる皇帝となるべく侵略戦争に明け暮れていたことがよくわかる。幸い、当時の中国は近代化された強大な軍事力を持たなかったため、毛沢東の征服戦争の快進撃は新疆とチベットの占領で止まり、それ以外の侵略戦争は領土の拡大や周辺国の征服にはつながらなかった。

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