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新型コロナ対策は2類でも5類でもない「P類」で

2022年02月24日 公開
2022年02月24日 更新

黒木登志夫(東京大学名誉教授)

 

オミクロン対策で重要なこと

もう一踏ん張りすれば、新型コロナはインフルエンザ並みになる。そのためには致死率を下げることである。作戦は単純である。

・ワクチンを義務化して、100%近くの人に接種すること。ブースター接種を急ぐ。

・死亡者の多くは、高齢者とリスクを抱えている人である。とくに病院、介護施設にクラスターが起きると死亡者はいっぺんに多くなる。これらの人を守るため、病院と介護施設に入っている人、医療従事者、介護従事者にワクチン接種を徹底する。

・服用薬が利用できるようになったのは大きい。これらの内服薬によって、ハイリスクの人たちの重症化を防げれば、致死率は相当に抑えられるはずである。ただ、これらの薬は発症後五日以内に使わないと効果がない。そのためには、PCR検査を徹底し、発症から時間をおかずに発見することだ。

・マスク、ソーシャル・ディスタンス、人流抑制などは依然として重要である。

・私は、コロナウイルスの感染症の分類を、SARS並みの二類から、インフルエンザ並みの五類に引き下げろと主張しているのではない。変異を繰り返すこのウイルスは、予想できないことが多い。私案として、パンデミック対策として「P類」を新たにつくり、これまでの枠に縛られることなく、対策を立てるのがよいと思う。

 

国民を混乱させるような情報を出してはいけない

最後に、「尾身さんご苦労様」といいたいのだが、コロナウイルスがオミクロン株になってからの彼の発言は、これまで以上におかしくなってしまったように思える。国民にわかりやすく情報を伝えることなく、逆に混乱させてしまったのだ。たとえば「ステイホームなんて意味がない」の発言は、「分科会なんて意味がない」といっているのと同じに聞こえた。「検査せずに症状だけで診断」は、医師とは思えない発言である。しかも、これらの発言は観測気球的に特定のソースにリークし、世間の反応をみたという証言もある。実際、発言の翌日に出された最終版では世論に従って変えてある。これは二流の政治家のやることである。

ブースター接種の重要性について、尾身氏をはじめとした分科会は積極的に国民に呼びかけてこなかった。残念なことに堀内詔子ワクチン担当大臣は何もしなかった。これは「未必の故意」的行動といってもよいだろう。

オミクロン株対策でいちばん先に分科会がすべきだったのは、飲み会の人数制限のようなあいまいな提言ではなく、ブースター接種の意義を国民に説明し、政府に対して早めるよう働きかけることであった。7各国のなかでは、日本は圧倒的に遅れている。

尾身さん、お疲れではないですか。少し休養をとったほうがよいのではないでしょうか。

***

冒頭に記したチャーチルの演説には、次の文章が出てくる。

Now, however, we have a new experience. We have victory - a remarkable and definite victory. The bright gleam has caught the helmets of our soldiers, and warmed and cheered all our hearts.

「われわれは新しい経験をしたのだ。われわれは勝利を得た。それも、驚くべき、そして確実な勝利を得たのだ。兵士たちのヘルメットは明るく輝き、われわれの心は暖められ、喜びで満たされた」

そんなに遠くない日に、われわれも「驚くべき、そして確実な勝利」を得たいものだ。

 

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