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記憶力低下と年齢は関係ない? 実は「脳の活性化を妨げてしまう」行動

西剛志(脳科学者)

2022年12月05日 公開 2024年02月05日 更新

 

「30分で強制終了」が脳のやる気を高める 

学びたい意欲はあるのに忙しくてまとまった時間が取れない……。これは、仕事も責任も増える40代、50代のビジネスパーソンが抱える大きな悩みだと思います。

しかし、実は勉強にまとまった時間は必要ありません。集中力は、学習時間が長くなればなるほど低下していき、効率も悪くなっていきます。

「長時間学習を続けられる=集中力がある」というのは思い込みです。5分、10分、15分といった短い時間を見つけてはこまめに勉強をしたほうが、脳は学んだことをしっかりと記憶してくれます。

脳は、インプットした情報のうち、最初と最後にインプットした情報を強く記憶します。これを、「初頭効果」「終末効果」と呼びます。

休憩なしで2時間勉強をした場合、最初の15分と、最後の15分でインプットしたことは記憶に残りやすいのですが、その間の記憶はほとんど残りません。せっかく2時間勉強しても、1時間半分の学習内容は、ほとんど記憶に定着していないのです。

初頭効果、終末効果は、時間の使い方を工夫することでうまく使えます。

例えば、勉強時間を2時間確保できそうなら、30分×4回に分けて取り組みましょう。30分で区切ると、初頭効果が持続する15分と、終末効果が持続する15分ですべての時間が構成されるので、記憶の定着率が高まります。

さらにこのとき、タイマーを使って、30分経ったらどんなにのっていたとしても勉強をいったん切り上げるようにしてみてください。勉強を続けたいのに途中でやめざるを得なくなると、脳は勉強がしたくてたまらなくなり、かえってやる気が持続するからです。

これを「ツァイガルニク効果」と言います。テレビ番組の途中にCMが入ると、続きが気になって仕方なくなりますよね。あの効果を学習にも利用するのです。

30分経って勉強を途中でやめたら、5分間程度、好きなことをして過ごしましょう。動画を見たり、気になる情報を検索したり、本を読んだり、軽食をとったり。

たった5分でも好きなことをすると、脳はドーパミンというやる気ホルモンを出します。そのドーパミンが出てきたところで、次の30分の学習時間に入ると、意欲が持続します。

気分がのっているときは、30分でアラームが鳴っても続けたくなるものですが、学習時間が長引くと、気がつかないうちに記憶力は低下し、意欲も薄れていきます。やる気がピークに達したときにあえてやめるのが絶対にお勧めです。

 

20秒でもいいから、まずは始める

では、逆にまとまった時間はあるのに、やる気が出なくて始められないときはどうしたらいいのでしょう。

こういったときは、たった20秒だけでいいので、とにかくやり始めてみてください。脳は、一度やり始めてしまえばやめられなくなるという性質があります。これを「作業興奮」と言います。

掃除するのが面倒くさいと思いつつも、掃除機のスイッチを入れてしまえば意外と掃除ができてしまったという経験はありませんか? その性質を学習にも利用します。

長時間やろうとすると、人は面倒くさいと感じてしまいます。でも、たった20秒ならどうでしょう。できそうな気がしますよね。もちろん、20秒経ったらやめてしまってもいいのですが、ほとんどの場合、「もうちょっとやってみようかな」と思うのが人間の脳なのです。

また、勉強を始める前に、心地いいと感じるお気に入りの場所に移動したり、好きな音楽をかけたり、好きな飲み物を飲んだり、好きな香りを嗅いだりすることもお勧めです。

どんなに自分を励ましても、気が向かないことに対してやる気は出てきません。やる気は好きなことをしたり、心地いい環境に身を置いたりすることで出てくるもの。気分がのらないときは、あえて一度勉強から離れ、好きなことをしてやる気を充電するといいでしょう。

また、他者を応援することでもやる気は出てくるので、好きなスポーツチームや芸能人、アーティストの応援をする「推し活」も、学習意欲を高めるきっかけになってくれます。

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スマホを別室に置くと集中力は倍増する

著者紹介

西剛志(にし たけゆき)

脳科学者

1975年生まれ。東京工業大学大学院生命情報専攻修了。工学博士取得後、国家公務員を経て新会社を設立し、世界的に成功している人の脳科学的なノウハウや才能を引き出す方法を講演会などを通して1万人以上に提供。『なぜ、あなたの思っていることはなかなか相手に伝わらないのか?』(アスコム)など著書多数。

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