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「居心地の良い顧客」には注意...できない営業マンほど時間を割く訪問先

山田和裕(株式会社フリクレア代表取締役)

2023年03月20日 公開

「居心地の良い顧客」には注意...できない営業マンほど時間を割く訪問先

あちこちの顧客に精力的に顔を出しているのに、なかなか営業成績につながらない...。それは、「行くべき顧客」と「行く必要のない顧客」の分析ができていないからかもしれません。

約1000人のトップセールスを分析してきたコンサルティングの山田和裕さんが、できる営業マンがやっている「プロセス思考」について解説します。

※本稿は、山田和裕著『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』(かんき出版)より抜粋・編集のうえ一部加筆したものです。

 

「行くべき顧客」はどこか見える化する

「できる営業」は、「行くべき顧客」に行きます。現在はあまり取引が大きくなくても、将来性のある顧客のところにも行きます。一方、「できない営業」は、自分が「行きやすい顧客」のところに行きがちです。

次の「顧客のセグメンテーション」の図を見てください。

山田和裕
<『1000人のトップセールスをデータ分析してわかった 営業の正解』P.249より>

【Aゾーン】は、現在の取引が多く、将来性もある顧客です。 
【Bゾーン】は、将来性はあるが、現在の取引は少ない顧客です。
【Cゾーン】は、現在の取引は多いが、今後はあまり伸びない顧客です。
【Dゾーン】は、取引額も少なく、将来性もない顧客です。

【Aゾーン】の顧客はわかりやすいので、何も指示せず放っておいてもどの営業も行きます。関係をさらに強化する、取引を拡大・深掘りする、商材を増やす、取引部署を増やすなど、「深耕」対象になります。

【Dゾーン】は基本的には行く必要のない顧客なのですが、相手も暇で世間話などで相手にしてくれるので、「できない営業」はここに行って時間をつぶしていたりします。

インサイドセールスなどの仕組みで効率化するなどの対応策はありますが、そもそも行くべきかどうか「再評価」すべきです。

 

できる営業が攻める顧客は?

問題は【Cゾーン】です。取引が多く関係もできていて居心地がいいので、たいていの営業はここで多くの時間を費やしています。ところが、データを取って顧客当たりの有効時間をとると、営業効率はあまりよくありません。必要以上に手をかけなくてもよいのに、つい長居して時間を使ってしまうためです。

生産性向上を求められる時代ですので、このCゾーンばかりに行っている営業はほめられません。営業の効率化を図り、現状を「維持」するという対応が正解です。

「できる営業」は【Bゾーン】の顧客を攻めます。

「将来性はあるが、現在の取引は少ない」というのは、例えば「競合の得意先」である場合です。ということは、競合の守りが固いため簡単に入り込めず、訪問しても冷たく対応されることが多いわけです。営業にとっては行きづらい客です。

しかし、シェアを伸ばすことができれば、取引額を伸ばす余地が大きいということになります。飲料や食品など売上の伸びが期待できない成熟産業では、シェアの取り合いからは逃れられません。

経営者が営業に攻めてもらいたいのはBゾーンであることが、ヒアリングを通じてわかっています。そのことを、「できる営業」はよく理解し、言い訳をせずに実践しているのです。

補足すると、経営としても本当にそうしてもらいたいのであれば、人事評価の面でもインセンティブを与えるべきです。目先の数字しか評価されないのであれば、営業にとっては難しいBゾーンを苦労して攻めるメリットはありません。

Bゾーンの顧客に対して正しいプロセスでアプローチしているのであれば、プロセスを評価して報いるべきです。

 

ラクな場所に入り浸らないシステムを作る

営業がCゾーンに入り浸らないように、人事評価で経営の意思をわかりやすく伝えている会社があります。

空気圧機器メーカーのS社は、「難易度の高いBゾーンの新規顧客開拓を、既存顧客からの実績より高く評価する」という評価尺度を明確にしています。実績数字の大きさだけでなく、新規顧客を創造することを奨励するため、結果だけでなく途中のプロセスも評価する仕組みにしています。

また、大手顧客を担当しているベテラン営業もCゾーンに安住することがないよう、顧客との関係が安定した段階で、あえて他の担当者に変えてしまうそうです。

引きついだ後任者は同程度の成績ではまったく評価されません。引き継いだあとにその既存客からどれくらい売上や利益を伸ばしたか、また、自分の実力で新規顧客をどれだけ増やしたかでしか評価されません。

徹底した公正な評価の結果、この会社の製品の国内市場シェアは断トツの65、海外シェアも40%のトップシェアを誇ります。

「ニッチであり続けろ」という信念のもと、あえて広告やホームページも充実させず、意識的にそのマーケットの存在を知らしめないというのも、本当のトップシェア企業だけができる心憎い戦略です。

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営業にも「正解」はある

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