1. PHPオンライン
  2. くらし
  3. 東大生の幼少期の習い事、第3位が野球。ダントツの1位は…? 指先と学力の見逃せない関係

くらし

東大生の幼少期の習い事、第3位が野球。ダントツの1位は…? 指先と学力の見逃せない関係

浜田一志(はまだ・かずし/東大野球部前監督)

2023年04月08日 公開 2023年04月20日 更新

東大生の幼少期の習い事、第3位が野球。ダントツの1位は…? 指先と学力の見逃せない関係

サッカー、ピアノ、テニス、英会話……たくさんある習い事の中でも、小さな子どもの能力を伸ばすためには何を選ぶのがベストでしょうか?

東大野球部出身で後に監督も務めた浜田 一志さんが、東大の運動部に所属している“文武両道”な学生たちに実施したアンケートをもとに「幼少期にオススメの習い事」を教えてくれました。

※本稿は、浜田一志著『東大野球部式 文と武を両立させる育て方』(かんき出版)から、一部抜粋・編集したものです。

背骨と指先を発達させる幼少期の習い事

全国各地で「文武両道のススメ」の講演を行うと、「小さい頃にどんな習い事をさせるといいでしょうか?」という質問を、親御さんから度々、受けます。

そんなとき、「早期から野球を始めてください」とお伝えしたい気持ちは山々のところ、「水泳とそろばんは、どうでしょうか」とお答えしています。

水泳は背骨の発育にとても有効ですし、姿勢もしゃんとする効果があります。どんな分野であれ、一流の人は姿勢がいいものです。実際、東大生の姿勢は、とても美しい。姿勢はとても大切です。同じように体操やバレエもいいかもしれません。

もうひとつのそろばんは、指先からの脳への刺激や発達にとても効果があります。「いまどき、そろばん?」なんて、思われた方もいらっしゃるでしょう。しかし、じつはいまでも子どもの頃にそろばんを習ってきた現役東大生はたくさんいます。単に計算が早くなるというだけではない効果が隠されていたのです。

ちなみに、2017年に東大の運動部に所属している男女300名に「5~9歳の頃、どのような習い事をしていたか」をアンケートしたところ、次のような結果となりました。

水泳がダントツ。ピアノ、野球と続き、そろばんは10位に入っています。(『東大野球部式 文と武を両立させる育て方』P.90より)

水泳とそろばん、これはまさに文武両道の典型例とも言えます。とはいえ、もちろんこの2つがマストの習い事というわけではありません。子どもの発育にとって「背骨」と「指先」が重要であるということを知っていただきたいのです。

習い事ではないですが、男の子ならプラモデルづくりもいいですね。サッカーに比べると野球のほうが指先をつかう競技ですので、よりオススメとも添えておきましょう。
 

なぜ、背骨と指先が大切なのか?

人類の進化について諸説ありますが、人間は、約300万年前に完全に二足歩行になったと言われています。背骨で脳を支えられるようになり、劇的に脳が発達した進化の過程を見ると、いかに人間にとって背骨が重要であるのかが容易に想像できるのではないでしょうか。恐竜はあれだけ体が大きいですが、脳のサイズは人間よりも小さいです。

学術的な話は専門書に譲るとして、ここでは、「背骨は脳の大きさを決める」と理解してください。また、脳の大きさはおおよそ10歳くらいでかたまります。

もうひとつの、指先の働きについては、脳のシワの数を決めます。つまり、脳の機能を高めるということです。脳のシワは小学生頃に格段に増えます。

子どもたちの脳細胞は、赤ちゃんのときからすでに大人とほぼ同じですが、小さな頃は、脳で情報処理する神経細胞同士はまだつながっていません。そして、神経細胞同士をつなげるためには、五感からの刺激が必須と言われています。

五感とは、味覚、聴覚、嗅覚、視覚、触覚の5つの感覚のこと。以前の記事で子どもたちにいろいろな体験をさせてあげてくださいとお伝えしたのは、まさに五感を刺激してもらいたいからです。

群馬大学教育学部の小山啓太氏の研究では、単純な握り運動ではなく、ボールを握るような指の運動のほうが、脳の活動が活発になるというデータも出ています。

ですので、習い事選びの際は、「触覚」「指先の運動」の体験や刺激をいかに与えられるかという視点に立つといいのではないでしょうか。
 

勉強は脳の整理整頓法のワザを覚えるためのもの

脳の大きさの話が出ましたが、容量があれば一概に良いというものではありません。

脳の容量というのは、いわば、家の大きさや部屋、タンスの大きさのようなもの。たしかに広い部屋にはたくさんのものを置けますが、小さな部屋でも整理整頓をすればたくさんのものを置くことができます。

勉強はまさにその整理整頓の技を覚えることです。関連する情報を近くに置く、よく使う知識をすぐに出せるところに置く、方程式で応用できるなら、要らない知識は捨てる、といったイメージです。勉強ができる子はこの整理整頓に長けていて、苦手な子はなんでもかんでも、あちこちに置いてしまう……。

なお、整理整頓の方法は後天的に学べて、熟練させていくことが可能です。脳という家や部屋、タンスの「容量」は親から受け継ぐので遺伝ですが、タンスの引き出しの中を整理整頓して、必要な知識や情報を自在に引き出せるかどうかは、本人の工夫次第となります。

この工夫の仕方を先生や親、大人たちが伝えてあげなければなりません。ですから、どんな環境で、どんなトレーニングをするかによって学力が左右されるのです。

浜田一志(はまだ・かずし/東大野球部前監督)
土佐高校で野球漬けの日々を過ごし、3年夏の大会引退後から一念発起して東京大学理科Ⅱ類に現役合格。東大野球部に入部し、4年次は主将として東京六大学野球リーグで活躍。卒業後は東京大学大学院工学系研究科に進学。その後新日鉄(現日本製鐵)に入社し、1994年「部活をやっている子専門の学習塾」としてAi西武学院を開業。2013年~2019年まで東京大学野球部監督。2023年4月からは母校土佐高校の校長に就任予定。

関連記事

アクセスランキングRanking

前のスライド 次のスライド
×