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認知症リスクの低減にも...心身が整う「正しい歩き方」7つのポイント

長尾和宏(長尾クリニック名誉院長)

2023年04月27日 公開 2023年10月23日 更新

認知症リスクの低減にも...心身が整う「正しい歩き方」7つのポイント

健康づくりの基本は「歩くこと」。ちょっとした移動をできるだけ徒歩に切り替えると、見違えるほど健康な体になります。コロナ禍によって家にこもりがちになった方も、病気の予防のために歩いてみませんか?

※「慢性疲労症候群」「慢性心不全」「ひざ痛」などの方は、医師の指導のもと、けっして無理をしないようにしてください。<取材・文:森末祐二>

※本稿は、月刊誌『PHP』2023年5月号掲載記事を抜粋・編集したものです。

 

歩くことを忘れた現代人

クリニックで治療をする際、患者さんに歩行の指導をすることがよくあります。歩くことが習慣になれば、健康状態が改善するからです。交通手段の発達で便利になった反面、現代人の多くは「歩く量」が著しく減っているので、そのことが健康を損なう原因となっているのです。

「病気は薬で治すもの」という思い込みは捨てましょう。少しずつでも毎日歩けば、心身ともに元気になります。

 

病気の原因は「運動不足」と「食生活の乱れ」

生活習慣病を患う人が年々増え続けています。なかでも高血圧性疾患、糖尿病、高脂血症などを抱える方が多くなっているというデータがあります。

生活習慣病にかかる原因は、その名のとおり日々の「生活習慣」です。具体的には「運動不足」と「食生活の乱れ」が、生活習慣病を引き起こす二大要因といえます。

特に2020年以降、長く続いているコロナ禍によって、外出する機会が減り、運動不足に陥る人が激増しました。

生活習慣病は、がん、心筋梗塞、脳梗塞など、命にかかわる病気の原因となります。それほど深刻であるにもかかわらず、初期の段階ではほとんど無症状であるため、当事者が危機意識をもちにくいのが難点です。

日本国民の平均寿命は今後ものびていくと考えられていますが、幸せな老後を送るためには、健康寿命も同時にのばさなければなりません。そのためにも日々の運動と食生活の改善に努めましょう。

今回は、健康のために特に大切な「歩くこと」を中心にお話しします。

 

歩かないことで考えられるリスク

【歩かないと「うつ」になりやすくなる】

うつ病は、幸せホルモンであるセロトニンや、やる気ホルモンであるノルアドレナリンが脳内で不足することによって起こります。

 しかし、「歩くこと」でこれらの脳内ホルモンのバランスが改善されることがわかったのです。

 また、運動不足になると、体が疲れないため寝つきが悪くなりやすく、不眠は心の状態に悪影響を及ぼします。外に出なければ人との交流が減り、孤独感も深まります。つまり、歩かないことによって、「うつ」になりやすい条件がそろってしまうのです。

【歩かないと糖尿病や認知症のリスクが上がる】

糖尿病とは、インスリンというホルモンが不足したり効かなかったりすることで血糖値が抑えられなくなり、血管にダメージを与える病気です。運動不足が大きなリスクであると言われています。

また、アルツハイマー型認知症は、アミロイドβという物質が脳内にたまることで発症すると言われています。

糖尿病を患って脳内のインスリンの働きが悪くなると、アミロイドβが分解されず、たまりやすくなります。その結果、認知症のリスクが高くなるのです。

 

歩くことの5つの効果

【毎日歩くと健康寿命がのびる】

群馬県中之条町の65歳以上の高齢者5,000人を対象に、20年間にわたって行なわれた「中之条研究」という調査があります。

この調査によると、速歩き程度の運動を毎日行なうことによって、うつ病、認知症、脳卒中、がん、糖尿病などの発症率が10分の1程度まで抑えられることがわかりました。

具体的には、一日平均8,000歩の速歩きを行なうのが理想ですが、毎日続けるのは大変かもしれません。一日合計6,000~7,000歩くらいでも充分効果がありますので、時間を見つけて毎日続けることをまずは心がけてください。

【抗酸化物質を増やす】

心身がストレスを抱えると、ストレスに対抗するためのホルモンが分泌されます。その際に活性酸素が発生し、健康な細胞を酸化させて老化を促進させてしまいます。食べたものをエネルギーに変える過程でも活性酸素が発生します。

運動は、体内の活性酸素を増やすと同時に、抗酸化物質も多くつくってくれます。ハードな運動では活性酸素が増えすぎますが、食後のウォーキングくらいの適度な運動であれば、抗酸化物質が増え、細胞の老化を遅らせてくれることがわかっています。

【歩くと「テロメア」がのびる】

染色体の端っこにある寿命遺伝子「テロメア」は、細胞分裂を繰り返すほど短くなり、老化が進みます。ところがウォーキングなど中程度の運動をすることで、テロメラーゼという酵素が産生され、テロメアを修復し、のばしてくれることがわかっています。

【運動と食事で腸内環境を整える】

近年、腸内環境に注目が集まっています。腸の中でたくさんの細菌類が存在している状態を花壇にたとえた「腸内フローラ」という言葉も一般的になりました。

幸せホルモンであるセロトニンの原材料は腸でつくられているので、腸の不調は気分や性格にまで影響を及ぼすことになります。ヨーグルトや味噌、納豆などの発酵食品や、海藻類、オリゴ糖などをとって、腸の善玉菌を増やすことが大事です。腸内環境が整い、健康増進につながります。

軽い散歩で気分転換することも、腸内環境を整えて、脳にいい影響を与えてくれます。

【歩いてホルモンバランスを整える】

ホルモンとは、体のさまざまな機能を整える役割を担になう物質で、たくさんの種類があり、体のあらゆる部分から生み出されることがわかっています。

セロトニンやノルアドレナリン、インスリン以外にも、たとえば脳の海馬に働きかけて記憶力を高めるオステオカルシンと免疫力を高めるオステオポンチンは、骨から分泌されます。これらのホルモンの分泌量を増やすには、「歩くこと」によって骨に重力と振動で刺激を与えることが重要です。

また歩くことによってホルモン類全体のバランスも整います。

 

正しいフォームで歩くポイント

いよいよ実践です。毎日楽しく歩くために、次のものを用意しましょう。

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・リュックサック
両腕をよく振って歩くために、持ち物はリュックに入れましょう。

・コルセット、サポーター
腰やひざに不安がある方は、コルセットやサポーターで保護し、無理のない範囲で歩きましょう。

・ウォーキングシューズ
歩きやすい靴を選びましょう。外反母趾の方は整形外科でインソールをつくるといいでしょう。
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また、特に高齢の方は、歩いて体を傷めないように下記のような準備運動をしておきましょう。

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・腰の骨をほぐす
仰向けの状態で、ひざを立ててお尻を持ち上げたり、上半身を起こしたり、下半身を左右にひねったりします。

・肩甲骨をほぐ
両手を肩の上に置いてひじをグルグル回したり、両肩を引き上げてストンと落としたりします。

・ラジオ体操をする
ラジオ体操で全身を動かしておくのも効果的です。
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【正しく歩く7つのポイント】

(1) 背中を丸めたり、お腹を前に突き出したりせず、「お腹」と「背中」と「腰」を意識しながら、スッとまっすぐに立ちましょう。

(2) 腕を振る際、ひじを軽く曲げて後ろに引き、肩甲骨を動かす意識をもってください。上半身の動きが自然に下半身に伝わります。

(3) おへその下の「丹田」を意識しながら、骨盤を少し前傾させて歩きます。ただし前傾させすぎて反り腰にならないように。

(4) かかとで着地し、足の裏の小指側のラインで地面をとらえ、最後に親指側で地面を蹴ります。

(5) 5センチ幅の一本の線の上を「モデル歩き」しましょう。バランスを保つために脳を使うので認知症予防にもなります。

(6) いつもより歩幅を10センチ広くします。歩く速度が自然に少し上がります。

(7) 通勤するときや買い物に出かけるときに、「普段の速さ」と「少し速め」を交互に繰り返しましょう。運動効果が高まります。早歩きの時間が一日合計20分くらいを目標にしましょう。

姿勢を整え、正しいフォームで歩くことで効果がアップします。そして大切なのは、少しずつでも毎日継続すること。楽しみながら取り組みましょう。

◎歩く姿を録画しよう
自分が歩く姿を家族や友人にスマホで録画してもらってください。動画で客観的に見れば、姿勢の悪さや歩き方のクセを発見できます。

 

【長尾和宏(ながお・かずひろ)】
長尾クリニック名誉院長。1958年、香川県生まれ。東京医科大学卒業。医学博士。大阪大学病院第二内科などを経て、’95年に長尾クリニック(兵庫県尼崎市) を開業。予防医療、在宅医療・介護について積極的にメディアで発信している。2021 年より現職。『病気の9割は歩くだけで治る!』(山と溪谷社)など著書多数。

 

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