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うつ病を予防する3つの方法

和田秀樹(精神科医/国際医療福祉大学大学院教授)

2013年07月03日 公開 2022年09月29日 更新

2.バランス良く食べる

うつ病のメカニズムとして、今のところ有力な説は、脳内のセロトニン不足が発端になっているというものです。

うつ病を予防するには、セロトニンのベースラインを高めておくことも役に立つはずです。セロトニンは、トリプトファンという物質からつくられます。

トリプトファンを含んだ食品を食べることは、うつ病の予防につながるはずです。トリプトファンは、肉類をはじめとして、納豆、たらこ、チーズ、牛乳などに多く含まれています。

納豆やたらこを一度にたくさん食べるのは現実的ではありませんが、肉100グラムなら、すぐに食べられるはずです。牛丼並盛りは牛肉が85グラム程度だそうです。大人の場合は、100グラムでは少し物足りないかもしれません。

食事で摂取した成分がすべて体内に取り込まれるわけではありませんが、摂取しておかなければ、セロトニンをつくる十分な材料を得られません。定期的に肉を食べて、トリプトファンをとっておけば、セロトニンをつくるための準備はある程度できていると思っていいでしょう。

トリプトファンは、睡眠と関係の深いメラトニンという神経伝達物質の原料でもあります。トリプトファンをとることは、快適な眠りにもつながります。

中高年以降になると、コレステロールを減らそうとして肉類を控える人もいますが、コレステロールは脳にセロトニンを運ぶ働きがあるのではないかと考えられています。

実際、「コレステロール値の低い人のほうが、うつ病になりやすい」という研究データも出ています。とくに高齢者の場合、コレステロール不足は、かえって健康リスクを高める要因となります。

世の中の高齢者の人たちを見ていただくとわかると思いますが、痩せている高齢者より少し太めの高齢者のほうが、元気で活動的です。肉を食べ、コレステロールをきちんと摂取しておくことが健康には必要なのです。

コレステロールが悪者扱いされるのは、欧米の医療知識が導入されたことによるものです。欧米では肉をたくさん食べる習慣がありますから、コレステロールが高くなりがちで、肉類を減らすことが心臓病のリスクを減らすことにつながると考えられています。

一方、日本では肉をたくさん食べる高齢者は多くないため、欧米の人ほどコレステロール値は高くはありません。

日本は、心臓疾患で亡くなる人よりも、ガンで亡くなる人のほうが多い国です。欧米の食習慣と日本の食習慣は大きく違いますので、欧米の健康常識を鵜呑みにしないほうがいいのです。

ただし、肉だけ食べていればいいということではありません。肉も含めて、バランス良く食事をとることです。魚にもトリプトファンは含まれていますから、魚を食べることも大切です。

肉と魚をバランスよくとるのが、うつ病の予防にも体の健康にも一番良いでしょう。

 

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