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職場や家族に潜む「攻撃欲の強い人」~彼らが使う“7つの武器”とは

片田珠美(精神科医)

2013年12月06日 公開 2022年12月19日 更新

片田珠美

疑おうとしない被害者たち

攻撃欲の強い人がのさばる理由は、これら7つの武器を巧妙に使っているからというだけではない。周囲の人がなかなか反撃しない、いや反撃できないからでもある。なぜ、反撃できないのだろうか?

もちろん、自分がターゲットにされているという自覚がなければ、そもそも反撃など論外だが、薄々気づいていても、なかなか反撃できない場合も少なくない。

たとえば、「上司には逆らえない」「やはり妻は夫に従うべき」「子供は親の言うことを聞くべき」「他人に不快感を与えるようなことをしてはいけない」というふうな考え方にとらわれていると、反論などとてもできない。こういう考え方は、社会では「善」として受け入れられているので、それが適切かどうか疑ってみることさえしないわけである。

また、中には、現在自分の身に起こっていることで苦しんでいるものの、それが結局は自分のためになると思い込んでいる人もいる。いや、むしろ、思い込まされていると言うべきだろう。

このような場合、本人もかなり混乱していて、

「あの人が私を壊しているのは、わかっています。でも、それが結局は私のためになるんです。もちろん、今はつらいし、苦しいです。けれども、そのうちもっと楽になると信じています。あの人は私に対して厳しいけど、それは私のためを思ってくれているからで、私を助けてくれているんです」

という具合である。わが子を虐待する親は、自分の攻撃的な行為を「しつけ」とか「子供のため」というふうに正当化することが多いが、こうした正当化を許容するような素地が被害者の側にあることも少なくない。

攻撃欲の強い人に、ターゲットにされている人が依存している場合もある。経済的に依存していることが最も多く、「子供もいることだし」「他の仕事を見つけるのは難しいので」といった理由で、反撃などできないと思ってしまう。

もっとも、これは、攻撃欲の強い人が、ときには脅しながら巧妙に恐怖をかき立てるせいでもある。「おれと別れて、おまえ1人でやっていけるわけがない」「ここを辞めたら、次の仕事を見つけるのは非常に難しい」「ママ友の中で仲間外れにされたら、子供もいじめられるわよね」といった類の脅し文句を聞かされると、麻痺したように身動きがとれなくなるものである。

恐怖を与えるために、脅し文句だけでなく、恩着せがましい態度を示すこともある。「辞めるなんてできないはずだ。これまで、どれだけ世話になったと思っているんだ]「あなたが断わるはずないわよね。ずっと友達で、助け合ってきたんだから」という具合である。

「世話」とか「友達」とかいうのが、実はこそこそと痛めつけるだけの関係だったとしても、こんなように恩に着せる言い方をする。

第三者にどう評価されるだろうとか、失望を与えることになるかもしれないという恐怖を利用する場合もある。「そんなことをしたら、世間がどう思うか考えてみろ」「○○さんをがっかりさせるようなことはしたくないわよね」というふうに言われると、他人からどう見られるかを気にしている人ほど、相手に操作される羽目に陥りやすい。

そのせいで、無力感にさいなまれる人もいる。自分がこんな目に遭うのは、過去の悪行の報いなのではないかと自分自身を責める人さえいるが、まさに向こうの思うつぼにはまっているわけである。

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