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直感と論理はどちらが強いのか

2011年04月07日 公開

青島健太(スポーツジャーナリスト)

《 PHP新書『長嶋的、野村的 ~ 直感と論理はどちらが強いのか』より》

◎ 3×19=最強

 長嶋さんと野村さん。さて、このお二人はいったいどっちがすごいのか。
 みなさんは、どうお考えになるだろうか。
 野球界の大先輩を俎上に載せて、「どっちがすごい」などと比較検討させていただいている失礼を、お二人にはどうかお許しいただきたい。
 長嶋さんに軍配を上げる方、あるいは野村さんを推す方、それぞれの好みで意見が分かれるのかもしれない。
 しかし、拙著『長嶋的、野村的』を読んでくださった方々の多くは、きっと私にこう言いたいのではないだろうか?
「これはそう簡単には決められない」
 あるいは、こう。
「長嶋さんと野村さん、どっちがすごいか? 両方すごいに決まっているだろう」
 たしかに、この勝負、どう考えてもどちらがすごいとは言いきれない。それぞれにそれぞれの特性と魅力があるからだ。
 長嶋さんの野性はいつも楽しくて前向きだ。そして、野村さんの知性は明解で論理的だ。長嶋さんは未来を語り、野村さんは過去を分析する。それぞれのスタイルで自分らしさを存分に発揮してきた方々だ。そして、その揺るぎないスタイルでゾーンに身を置き、数々の偉業を成し遂げてきたのだ。
 長嶋さんと野村さん、どっちがすごいのか。う~ん?????
 じつは、この逡巡こそが、野性と知性を意識するということだ。
 この両者の存在を知った以上は、長嶋さんと野村さんのよいところを盗んで、私たちが向かう局面にもっとも適した戦いを挑まなければもったいない。
 IT化が進む規代社会。数字やデータの処理も飛躍的なスピードでかなうようになっている。野村さんが苦労の末に集めたデータも、いまではあっという間にそろってしまう。こうした時代になった以上、何事においても野村さん的アプローチは必須の作業といえるだろう。
 一方で、これだけ情報にあふれ、さまざまな価値観が闊歩するなか、数あるオプションからスピーディに何かを選択するのが難しくなっている。そんなときには、長嶋さん的直感の出番だ。論理や思考を省き、己の信じる感性で大胆に事に当たっていく。こうした感覚と決断も、現代社会では重要な態度だ。
 長嶋さんと野村さん。
 どっちがすごいか。
 私の答えは、「両者が手を組んだら、それがいちばんすごい」だ。
 長嶋さんの背番号3と野村さんの背番号19は、数学的にはともに素数である。1とその数以外に割りきれる数字をもたない、個性的な、あるいは孤高の数字。
 だれの介入も許さない。だれの影響も受けない。オリジナリティに富むお二人には、その姿勢を表すのにピッタリの数字だ。
 素数の特性として、ほかの数字で割ることはできないが、掛けることはできる。
 ならば、3と19を掛けてしまえというのが、本書のめざすところだ。

 式にすれば、3×19=最強。

「二兎を追う者は一兎をも得ず」と言われる。ある成果を求めようとするなら、これは真理だろう。欲張っていくつもの獲物をねらえば、一つも手に入らないものだ。潔く自分の目標を一つに決めて頑張ろうとすることが、力を発揮するコツだという教訓にも聞こえる。
 しかし、一兎を得るための方法論が一つである必要はない。試行錯誤のなかでいろいろなものを試せばよいのだ。そのための思考法や行動におけるスタイルは、二兎と言わず三兎も四兎も追いかけてみる。
 野性の人も、知性の人も、オプションが増えるに越したことはない。ならば、長嶋さんと野村さんの二兎を追いかける。そして、臨機応変に長嶋的と野村的を使い分ければよいのだ。
 私たちの使命は、偉大な先輩・長嶋さんと野村さんを超えること。
「野性で戦い、知性で守る」=「3×19」
 それは、いまを生きる私たちの柔軟なタクティクス(戦術)となるだろう。

青島健太(スポーツジャーナリスト) 青島健太(あおしまけんた)
1958年、新潟県生まれ。スポーツジャーナリスト。埼玉県立春日部高校、慶應義塾大学、東芝を経て、1984年ドラフト外でプロ野球ヤクルトスワローズに入団。
1989年に引退後、オーストラリアで日本語教師を務める。帰国後、執筆活動を開始。ユニークな視点と真摯な語り口を買われてオリンピックやサッカーワールドカップ、情報番組のキャスターに抜擢される。あらゆるメディアでスポーツの楽しさ・奥深さを伝えつづけている。その間、社会人硬式野球チームの監督も歴任。鹿屋体育大学、流通経済大学、日本医療科学大学客員教授。
著書に『父と子のキャッチボールのススメ』(スキージャーナル)『"オヤジ目線"の社会学』(電子書籍、日経BP社)がある。

関連書籍

長嶋的、野村的 ~ 直感と論理はどちらが強いのか

『長嶋的、野村的 ~ 直感と論理はどちらが強いのか』

青島健太 著
税込価格 756円(本体価格720円)
 動物的なひらめきと「カンピューター」で常識を打ち破った長嶋茂雄。徹底した分析と言語化で「ID野球」というセオリーを打ち立てた野村克也。対極にいる二人のスーパースター、はたしてどちらがすごいのか?
勝負を決するのは直感か論理か。一流選手の言動に見る、勝負を決めた決断のプロセスと思考法を紹介。
0から1を生み出す(イチロー)/なぜ跳べなくなったのか(浅田真央)/飛距離はいらない(宮里藍)/自分自身へのドンマイ(石川遼)/守備にこだわる理由(松井秀喜)/褒めて危機感を煽る(原辰徳)/野性と知性を兼ね備えたスピーチ(斎藤佑樹)etc.

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