ホーム » 趣味・教養 » ネコはいつ、どこから来たの?

ネコはいつ、どこから来たの?

2016年11月10日 公開

黒瀬奈緒子著 《大妻女子大学社会情報学部環境情報学専攻准教授》

ネコがきた道

最古のネコ

ネコはいつ、どこで、どうやって飼い慣らされ、ヒトのそばで生活するようになったのかをみていきましょう。世界的に研究が進むなか、分子系統学も新しい発見に寄与しています。

最初は時期について。これまでは、古代エジプト人が約3600年前にネコを飼いはじめたといわれていました。しかし、2004年、地中海のキプロス島で驚くべき発見がありました。9500年前のお墓にヒトとネコが一緒に埋葬されていたのです。ネコとの「同居」の歴史は、従来考えられていたより3倍近くも長かったことになります。

農耕が始まった時期には諸説ありますが、最終氷期が終わって温暖な気候になり、ヒトが移動しながらの狩猟採集生活から農耕生活に切り替えて定住するようになった証拠は、おもに約10000年前の遺跡から多く見つかっています。農作物をつくって倉庫に貯蔵するようになると、それを狙ってネズミが倉庫に侵入し、繁殖していきました(イスラエルにある約10000年前の最古の穀物貯蔵庫跡から、ハツカネズミの骨が見つかっています)。ネコは、このハツカネズミを狙ってヒトのそばで生活するようになったと考えられています。

さて、話をキプロスのネコにもどしましょう。キプロス島の9500年前のお墓から見つかったネコは8カ月の子ネコで、埋葬されていたヒトからちょうど40㎝ほど離れた小さなお墓のなかに、ヒトと同じ西向きに埋葬されていました。

当時もいまも、キプロス島を含む地中海のほとんどの島に野生のネコ科動物はいないので、ヒトが船に乗せてネコを連れてきたのだと考えられます。これは近くのレバント(東部地中海沿岸地方)あたりから運ばれたとも推察されています。わざわざネコを船に乗せて運び、ヒトと一緒に埋葬する……約10000年前の中東で、ヒトとネコが深い関係にあったことがわかります。とくにお墓まで一緒に、という行為からはヒトの、ネコに対する愛情や信仰のような強い執着がうかがえます。

 

ネコの祖先が判明

このように約10000年前から、ネコはヒトのそばにいるようになりました。最初は、ネズミを求めてヒトの住居に近づいたと考えられるので、ネズミを餌とする小型のネコ科動物がネコの祖先であることは確かでしょう(比較的大型のネコ科動物でも、ネズミなどの小型の餌を捕ることはありますが、ヒトのほうが身の危険を感じて撃退し、自分たちには近寄らせなかったはずです)。

ところが、これらヤマネコといわれる系統は、北はスコットランドから南はアフリカまで、西はスペインから東はモンゴルまで、ユーラシアとアフリカ全体に広く分布しており、現在、5つの系統に分けられています(リビアヤマネコ、ステップヤマネコ、ミナミアフリカヤマネコ、ヨーロッパヤマネコ、ハイイロネコ)。ですから、ネコの家畜化はさまざまな場所で始まり、各地でヤマネコが飼い慣らされて、いろんな品種のネコがそれぞれつくられたとしてもおかしくありません。

しかし、ネコが来た道は1本でした。2007年、オックスフォード大学および米国立がん研究所のメンバーであるドリスコルらが、ヤマネコ系統とネコの遺伝子解析を行なったところ、イスラエル、アラブ首長国連邦、サウジアラビアの人里離れた砂漠に住む「リビアヤマネコ」という野生のヤマネコだけが、ネコとほとんど区別できないほどよく似た遺伝子パターンをもっていて、同じ系統であることがわかりました。広範囲に分布し、5つに分かれているヤマネコ系統のなかで、中東のリビアヤマネコだけがネコの祖先だと判明したのです。

 

なぜリビアヤマネコだったのか?

ではなぜ、ヤマネコのなかでリビアヤマネコだけがヒトに飼われるようになったのでしょうか。それは、リビアヤマネコがヒトに対して比較的警戒心が弱く、またヒトになつく性質をもっていたからだと考えられています。対して、ヨーロッパヤマネコやハイイロネコなど、他のヤマネコの系統は警戒心が強く、ヒトになつきにくいといわれますから、同じくネズミを餌としながらもヒトとの生活には適応できなかったようです。この性質の差が、リビアヤマネコだけがネコの祖先になった理由だと考えられます。

またリビアヤマネコは、人類最初の定住の地であるメソポタミア周辺地域の近くに住んでいたため、他のヤマネコたちより有利だった可能性もあります。

飼い慣らされペット化したリビアヤマネコの子孫は、メソポタミア周辺から農耕が伝わるにつれ、農耕文化と連動して移動したと思われます。そして行く先々で「ヒトと生活する」という同様の「ニッチ(生態系のなかで占める位置や役割)」を獲得し、その土地に住んでいたヤマネコを締めだしていったと考えられます。農耕と連動してイエネコが移動してきていなかったら、その土地固有のヤマネコがヒトのそばに住み着いていたかもしれません。リビアヤマネコが一歩先んじた、ということなのでしょう。

さて、前述したように、定住したヒトは農耕を始め、穀物などの農作物を貯蔵しました。それを狙ってハツカネズミが移り住んで繁殖し、それを狙ってネコがヒトの近くで生活をするようになったと考えられています。

※本記事は、黒瀬奈緒子著『ネコがこんなにかわいくなった理由』(PHP新書)より一部を抜粋編集したものです。

 

黒瀬奈緒子(くろせ・なおこ)
愛媛県生まれ。北海道大学大学院地球環境科学研究科にて博士号を取得後、岩手医科大学医学部法医学教室、神奈川大学理学部生物科学科などを経て、現在、大妻女子大学社会情報学部環境情報学専攻准教授。専門は分子系統学と保全生物学。環境教育にも力を入れており、野生生物と人との共存をめざした環境づくりをテーマに講演や、子供たちとの「生きもの観察会」なども行う。処女作となる本書では、生物の進化とその解釈について一般に伝えるため、長年の研究対象である小・中型食肉目に思いを馳せつつ、大好きなネコへの情熱をぶつけた。街でネコを見つけると、写真を撮らずにはいられないネコマニア。

癒しフェア2018 東京(8月)、大阪(3月)出店者大募集!!

関連記事

編集部のおすすめ

ネコはなぜ、人と生活するようになったのか?

黒瀬奈緒子著 《大妻女子大学社会情報学部環境情報学専攻准教授》

じつは夏目漱石は猫派ではなく犬派だった?

伊藤氏貴

「ねこ占い」でわかるあなたの性格&人生

マーク・矢崎治信


WEB特別企画<PR>

WEB連載

アクセスランキング

WEB特別企画<PR>

WEB連載

癒しフェア2018 東京(8月)、大阪(3月)出店者大募集!!
  • Facebookでシェアする
  • Twitterでシェアする

ホーム » 趣味・教養 » ネコはいつ、どこから来たの?