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簡単な数学でわかる「消費税増税は要らない!」

高橋洋一(嘉悦大学教授)

2012年01月18日 公開 2024年12月16日 更新

簡単な数学でわかる「消費税増税は要らない!」

「経済は数学が分かっていないと分からない」。

学説史に過ぎない「マルクス経済学」が隆盛を極めた日本では、この当たり前のテーゼが機能してこなかった。

そしていま、数学を知らないのをいいことに、財務官僚は思うがまま国民を操ろうとしていると、高橋洋一氏は言う。

われわれがだまされないために必要なのは「高校レベルの数学」。

理学部数学科・経済学部経済学科出身のエコノミストが、ビジネスマン必須の知識とともに、経済のほんとうの読み方を伝授する。

※本稿は、高橋洋一著『数学を知らずに経済を語るな!』(PHP研究所)の一部抜粋・編集したものです。

 

みんな、なぜ騙されるのか

ずっと、ずっと、ず~っと疑問に思っていたことがあった。

世の中の人は、なぜ、これほどたやすく官僚・政治家・マスコミ・御用学者の嘘に騙されるのだろう、と。

マスコミが「東日本大震災の復興財源を確保するためには10兆円規模の増税が必要」と報道すれば、「う~ん、みんなで痛みを分かち合わないと」と、すぐ納得してしまう。

政治家が、「このまま赤字国債を放置していると第二のギリシャになるから、増税が不可欠」といえば、ギリシャと日本は大違いという事情もわからぬまま、「そんなものか。仕方がない」とあきらめる。

どちらも裏で糸を引いているのは、財務官僚である。じつは復興財源の捻出も、財政再建も、まったく増税なしで行える。それらを増税だけで解決しようというのは、きわめて偏った「解決法」に他ならない。

しかも、財務官僚が意図的に偏った「解決法」を押し付けようとするのは、彼らの私利私欲を満たしたいから。それだけなのである。なのに、わが日本国民の多くは、それを唯一の解であるかのように信じ込まされてしまう。

私は、それが不思議でならなかった。

だが、このたび、ようやく、その謎が解けた。

自称「日本を代表するド文系頭」の編集者S君と出会えたからである。

S君、からっきし数学的思考が弱い。用語の定義が暖味なまま質問をする。数字が2乗、3乗と乗数的に増減すると、もうついていけない。ましてや、高校の数学などは一切合財忘れてしまっている。

にもかかわらず、「グラフだとわかるんですよ」とのたまう。そんなわけはない。あらゆるグラフは数式と一対一対応をしている。数式がわからなくてグラフがわかるわけがないのである。そこで、「本当にわかっているの?」と意地悪く問い詰めると、やはり、わかっていない。

要は、わかっていないのに「わかったつもり」になることに慣れすぎてしまったのだ。これは、おそらく日本国民の多くに共通する「思考様式」なのではないだろうか。「思考様式」などというとたいそうな仕組みのようだが、「わかったつもり」とは「思考停止」の同義語である。

「わかったつもり」でとどまる人は、どういう具合に報道記事などを「理解」しているのか。S君という、大変ありがたい生徒を得て、ようやく腑に落ちた。それじゃあ、騙されてしまうわけだ。

社会を牛耳る嘘つき野郎たちに騙されないためには、どういう思考回路、どういう知識が必要なのか。皆さんもS君とともに考えていただければ幸いである。

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