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これから浮上する国、沈む国…世界経済のからくり

ワールドエコノミー研究会

2012年02月03日 公開 2021年08月10日 更新

 

[フランス]経済縮小の原因となる少子化問題を解決した成熟国

ドイツとともにヨーロッパ経済の牽引役となっているフランスは、多くの産業基盤をもち、豊富な労働力がそれを支えている。労働力については将来的にも不安は小さいといえる。なぜなら、少子化問題にいち早く取り組んで解決策を編み出したからである。

少子化による人口の減少は労働力や消費力の低下、社会保障負担の増加につながり、経済規模を縮小しかねない。そこでフランスは多様なアイデアでこの問題に対処した。

たとえば育児休業から復職後の地位を保障したり、ふたり以上の子供をもつ家族に所得制限なしで家族手当を支給する「全国家族手当金庫」をつくるなど、女性が子供を産みやすく早期に職場復帰を果たしやすい環境を整えた。

その結果、1993年に1.66まで落ち込んだ合計特殊出生率(女性が生涯に産む子供の数の推計)が、わずか15年で2.0を超えたのだ。いっぽうの日本の出生率は1.39。フンスの政策は、少子化が進む日本でも注目されている。

 

[デンマーク]25%もの消費税を課しながら「世界一幸せ」でいられる国

2011年9月、日本のトップに就いた野田佳彦首相は、財源確保のため10年代半ばまでに消費税率を5%引き上げるという方針を示した。この表明に、「どこまで上げれば気が済むのか」という不満や反発の声が湧き上がっている。

だが、消費税率にスポットを当ててみると、現在の5%という日本の水準は世界的には非常に低い税率といえる。世界には15%以上の国が多数存在する。とくに北欧諸国はどこも高く、デンマークの消費税率は25%にも達している。

デンマークでは、国民生活に直結する食料品にも25%の税率が課せられる。自動車にいたってはなんと約180%。100万円の価格がついた車は、280万円支払わないと購入できないということだ。消費税だけではない。所得税も最低40%、最高税率は60%。収入の半分以上が、税金として徴収されるシステムになっている。

しかし、税の負担と社会保障負担の対国民所得比を示す国民負担率を見ると、デンマークは世界最高水準の69.9%となっている。つまり国民の税金への依存度が高いのに、国民は「自分たちは世界一幸福だ」と感じているのである。(日本は40.6%)。

では、負担が重いのに日本人よりも幸福感を得ているのはなぜか。それは徴収した高い消費税などを、医療費の無償化や高い教育への投資、社会福祉制度の整備などに使っているからだ。

充実した社会福祉が保障するかわりに、製品やサービスへの税金を高く設定する。デンマークは高額の税金の徴収で国内経済をうまく循環させ、幸福を感じさせる経済構造をつくることに成功している国である。

 

[ブラジル]五輪、W杯を起爆剤にさらなる成長をめざす新興大国

BRICs4カ国のうち、今後もっとも伸びるといわれているのがブラジルである。

その理由は豊穣な国土にある。単純に国土面積をとって見ても世界5位の広さをもち、そこから石油や鉄鉱石など豊富な資源が得られる。2006年と10年には世界最大級といわれる海底油田が発見され、ブラジルの石油自給率は100%を超えた。これで世界の石油市場が混乱したとしても、ブラジルは臆することなく経済活動に邁進できる。

また、国土の99%は開墾可能な平坦な土地だから、農作物がつくりやすい。農産物のなかで注目されるのが輸出量世界一のサトウキビ。サトウキビは新エネルギーとして期待がかかるバイオエタノールの原料になるほか、バイオエタノール車などオリジナリティあふれる産業の創出にもつながっている。

人口が多く、政治的に安定していることも経済成長を後押しすると考えられている。

そして数年後には、経済成長のさらなる起爆剤になり得るビッグイベントが控えている。14年に開催されるサッカーのワールドカップと、16年に南アメリカ大陸ではじめて開催されるリオデジャネイロ・オリンピックだ。どちらも世界的なイベントだから、鉄道網や道路などインフラ整備が飛躍的に進み、景気が大きく刺激されるというわけである。実際、日本や中国などはオリンピックの開催地となったあと、経済大国へと成長している。

そもそもブラジルがこうしたビッグイベントの開催国に選ばれたのは、経済成長を続ける有望国だということが大きく影響している。ふたつの大会が終わった頃、どれくらい発展を遂げているのか、いまから楽しみである。

 

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