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愛と幸せを運ぶ「鳳凰」って、どんな生き物?

龍羽ワタナベ(実業家/占い師)

2019年12月11日 公開 2023年01月11日 更新

「陰」と「陽」を持ち合わせた存在

鳳凰は男性性と女性性を持ち合わせた両性の存在ですが、そもそもは「鳳」という雄と「凰」という雌の、つがいのトリでした。平等院鳳凰堂の屋根にいる鳳凰も一対で、屋根の両端に互いが向き合うように設置されています。

中国の思想の根源には、「陰陽五行説」という考え方があります。このうちの「陰陽説」は、この世の森羅万象、すなわち宇宙にあるすべてのモノは「地と天」「女と男」「暗と明」のように、「陰と陽」に分けられるという概念です。

陰と陽は、両方揃そろって存在することでバランスが保たれ、その状態がより望ましいものとされています。

雌雄一対である鳳凰は、まさに陰陽のバランスが取れた存在なのです。

そしてもうひとつの「五行説」とは、「木」「火」「土」「金」「水」の各要素、すなわち「五行」が互いに影響し合って宇宙が成り立っている、という考えです。

鳳凰の姿かたちは、中国の芸術作品にたくさん登場しますが、とても美しくきらびやかです。その姿は黄金に輝いています。

鳳凰の羽の五つの色は、五行に対応する「青」「赤」「黄」「白」「黒」を表しています。そして、その長く美しい羽をはためかせながら優雅に空を飛ぶことで、五行に結びつけられた五つの徳、「仁」「礼」「信」「義」「智」を私たちに向けて放ち、伝え、諭してくれています。

つまり、鳳凰は「陰」と「陽」と「五行」のすべてを持ち合わせているのです。

陰陽+五色=七色。七色といえば虹であり、鳳凰と虹はいずれも、よいことが起きる兆しとされています。

私たちに幸せのパワーを授けてくれる鳳凰を「虹色鳳凰」と呼ぶのは、この七色に由来しています。
 

龍は皇帝、鳳凰は皇后

中国の皇帝が龍を愛し、自らのパワーの象徴とする一方で、鳳凰は皇后に愛されるようになりました。皇帝のお召し物や持ち物に龍があしらわれていたように、皇后や皇太后のそれには鳳凰が用いられていたのです。

そして、皇帝と皇后のごとく、多くの芸術品や宗教施設の装飾などで龍が描かれている場面には、鳳凰も並んで登場するようになりました。いつしか中国では「龍といえば鳳凰」というように、この二つは高貴でありがたい存在として、切っても切れない関係になっていったのです。

ことわざでも揃って使われています。中国で有名な「龍鳳呈祥」は、至福や吉祥のみならず、長久の繁栄を意味する言葉です。また「人中龍鳳」とは、きわめて優れた才能がある人のことを指します。いずれも「形容しがたいほどよい」という意味を示すために、龍と鳳凰がともに用いられているのです。

また、「伏龍鳳雛」は、「まだ世に知られていない大人物」と「有望な若者」という意味です。『三国志』の中で諸葛孔明が「伏龍(かくれ伏している龍)」に、龐士元が「鳳雛(鳳凰の雛)」にたとえられたことからきています。

陰陽説においては、鳳凰が陰、龍が陽とされ、この二つが揃うことで陰陽のバランスが取れ、理想的な状態となります。つまり、鳳凰とペアになることで、より龍のパワーも発揮されるというわけです。

ここで思い出していただきたいのは、鳳凰はもともと、それ自体が陰陽をなす存在、つまり両性であるということです。

両性の鳳凰は、龍と一緒になることで、女性性となります。それによって陰陽が揃い、最強のペアが完成します。

単独でも完全な存在である鳳凰は、龍と一緒になると、伝統的な東洋の理想の女性像に備わる謙虚さや忠実、貞節、慈悲の心を持つようになり、龍(=皇帝)に寄り添う最高の伴侶となるのです。

鳳凰は愛と平安の象徴

皇帝は龍をシンボルとすることで、人々に、自らを大きなパワーを持つ龍と同一視させ、権力の維持をはかりました。

同時に皇帝の妻である皇后は、鳳凰をシンボルとすることで、愛と平安を象徴する存在として自らを位置づけたのです。

中国の歴史を紐ひも解と けば、王朝はたびたび変わり、比較的長続きした王朝でもその内部は権力争いや腐敗が絶えませんでした。

皇帝もまた、龍の力を借りているとはいえ、権力を維持するにあたっては危険な目にも遭ったでしょうし、残忍なことも数知れず行っていたことでしょう。

皇帝と一蓮托生の状態にある皇后や、皇帝の母である皇太后が、自分たちの身や立場を案じ、愛と平安の象徴である鳳凰を愛するようになったのも、自然な成り行きといえるのではないでしょうか。

そして、お召し物や持ち物に鳳凰の飾りを入れることで、諍いさかいのない、愛に満ちた平安な世界を願い、そのお力をいただきたかったのでしょう。

皇帝が、龍のパワーで国を強くすることによって民たみの安全をはかるとするなら、皇后は、鳳凰の愛で国を包むことにより、民に安寧をもたらそうとしたのです。
 

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著者紹介

龍羽ワタナベ(りゅうは・わたなべ)

実業家・占い師

台湾在住の実業家兼占い師。横浜市出身、青山学院大学卒業。中国・暨南大学への留学を経て、1997年に台湾で起業。台湾で初の「占いの館」や、クラブ、バーの店舗経営、フリーペーパーの出版のほか、現在では台湾進出企業のコンサルタントなども行なっている。
台湾でもっとも占いが盛んな台北において、「占いの館」の主幹として数十人の占い師を束ねるその実力は、“台湾No.1 女性占い師”として名高い。台湾元総統李登輝氏の手相鑑定をはじめ、自らの経験をいかした経営者視点のアドバイスは、台湾政財界の重鎮、日系企業の台湾支社長、プロスポーツ選手、芸能人までに広く支持されている。

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