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大量の情報を"人が処理”するための「3つの脳」の使い方

狩野尚史(株式会社HRインスティテュート 取締役 シニアコンサルタント)

2019年12月24日 公開 2022年07月22日 更新

 

シミュレーション脳――未来を論理的に想像する脳

2つ目は「シミュレーション脳」です。これは、未来を論理的に想像する脳です。あらゆる物事には原因があり結果があります。

この「原因と結果の法則」にもとづいて、未来を見立てるという脳の使い方です。未来という結果を変えるためには、原因を変えなければなりません。そこで、自分が新しい原因を作り、新しい結果を生み出していくという考え方が重要です。

そのためには、自分なりに仮説を立ててみて、なぜそう考えるのか、またそこに対してどのような事実があったら検証が可能かということを考えなければなりません。「なぜ?」と問われたとして「なんとなく」と答えるのでは、誰も納得はしません。

客観的に見て結論と明確な根拠がきちんとつながっている必要があります。さらには、たった1つの事実から導かれた結論よりも、例えば3つの事実から導かれた結論のほうが、自分の中での確信も他者が抱く納得感も強くなるのではないでしょうか。これは自分の頭の中においても、他者に物事を伝える上でも肝要な考え方です。

そしてロジックを組み立てる時には、ルートが2つあります。

1つは、根拠を積み上げて結論を構築するボトムアップのアプローチ。もう1つは、結論から立て、その正しさを補強する根拠を集めるトップダウンのアプローチです。

前者が適しているのは、論点に対して仮説が描きにくい場合や結論に正確性が求められる場合ですが、結論を出すまでに時間がかかるというデメリットがあります。

後者は、論点に対して仮説が描きやすい場合や結論を出すスピードが求められる場合に適していますが、結論が思い込みになる危険性が高まるというデメリットがあります。

どちらが正しいというものではなく、状況と必要に応じて使い分ければよいでしょう。

こうしたアプローチを活用して、自分なりの仮説を立て、どのような情報があれば確証が高まるかを考え、それに応じて様々な情報を取り、自分の未来への仮説を検証して見ましょう。

未来をシミュレーションするということは、仮説構築の論理性と検証における情報収集を繰り返し、「新しい仮説」を情報処理と編集によって生み出していくという行為です。このサイクルを繰り返すことで、自ら未来を創り出す一助にして頂きたいと思います。

 

コンビネーション脳――違う分野の情報を組み合わせて新しいモノを創る脳

最後は「コンビネーション脳」です。これは、まったく異なる分野のもの・情報を組み合わせて、新しいモノ、新たな未来を創っていく脳です。

そもそも世の中に存在しているもののほとんどは、何かと何かの組み合わせできています。そして、一見新しく見えるものも、実は基本は組み合わせによってできています。組み合わされたものの分野が隣接分野ではなく、遠い分野であればあるほど、そこに面白さや驚きが生まれます。

つまり、異物と異物の混入こそが最高の創造性を生み出すと言えます。対極にあるものを組み合わせることで、まったく新しいものを生み出す。そういった脳みその使い方が、これからの時代において自分の知を高めていく上で重要になってくると考えています。

例えばガウディは、建築物をデザインするにあたり植物からヒントを得たりしています。つまり、アートという人工物とサイエンスという自然科学を組み合わせていると言えます。

これを応用して考えると、「1:人工芸術であるアートと芸術の機能化であるデザイン」、そして「2:自然科学としてのサイエンスと科学の実用化としてのエンジニアリング」、この2つのカテゴリーに含まれる要素を組み合わせる、しかもできるだけ一見関連性の低いもの同士を組み合わせることで、これまでになかった発想を生み出すことができるかもしれません。

人生100年時代に、これまでよりも長い期間にわたってビジネスの現場にい続けるとなると、自分の専門性にしがみつくだけでは対応が難しくなる局面も生まれるでしょう。

自分が専門だと思っていることとあえてまったく異なるカテゴリーのことを学び知見を増やすことで、新しい自分のロジックが組み立てられて、未来に対して考えるべき道が見えてくるのかもしれません。

そのため、普段扱っている分野とは隔たりのある分野に対して興味関心を向けるということを、少しでもご自身の生活の中でおこなってみてはいかがでしょうか。

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