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ITへの転換を“余儀なくされた”エネルギー業界が教える「アフターコロナに生き残る術」

平松昌(エネルギービジネスコンサルタント)

2020年06月02日 公開

ITへの転換を“余儀なくされた”エネルギー業界が教える「アフターコロナに生き残る術」

首都圏も緊急事態宣⾔解除を迎え、アフターコロナの生活や経済の行方について議論が展開されている。コロナ以前の生活様式に戻ることはない、とするならばビジネスにおいても今までとは違ったスタイルが求められるようになるだろう。

これまで、当たり前のように存在していた前提が一変した業界に、エネルギー業界がある。2016年に電力の全面自由化、2017年にはガスの自由化が始まり、サービスや事業スタイルが多様化。従来のやり方が通用しない時代に突入し、ITを駆使した戦略が求められるようになった。

エネルギービジネスコンサルタントである平松昌氏によると、きっかけはまったく異なるとはいえ、アフターコロナの時代にはエネルギー業界と同じようにあらゆる業界でIT戦略がビジネスにおいてカギを握ることになるという。

アフターコロナという未曾有の時代を勝ち抜くための戦略とは何か。平松氏に聞いた。

※本稿は平松昌著『エネルギー自由化 勝者のIT戦略』(PHPエディターズ・グループ)より一部抜粋・編集したものです。

 

IT戦略があるか否かで、事業拡大・撤退が決まる

2016年に電力が全面自由化、翌2017年にガスが自由化となり、巨大なエネルギー市場をめがけて、各社が一斉に動き始めた。新規参入企業は増加し、世はエネルギー戦国時代に突入。しかし、電力全面自由化から4年、ガスの自由化から3年が経過し、必ずしもすべての企業が事業に成功しているとは言えない状況が出始めている。

当初電力事業を検討していた企業でも、制度設計や市場の成り行きを見極めて参入を一旦延期したり、リスクを取らず単なる代理店や取次店として参入するところも見受けられる。さらには、自ら小売事業者になったが、取次店として事業を見直している事業者や、すでに身売りをする、または身売りをせざる得ない状況になっている事業者も出始めているほどだ。

電気、ガスといったエネルギーは、生活において不可欠なライフラインの一つ。電気を必要とする機器は生活のなかでも増えており、需要は増すばかり。目に見えない商品の代表例でもあり、食品やモノのように、質や量、デザイン等で一般人が良し悪しや好みを判断できるようなものでもない。それにもかかわらず、エネルギー自由化が始まって、成功している企業とそうでない企業が出始めているのはなぜか。――それがIT戦略にほかならない。

意外に思われるかもしれないが、エネルギー自由化後の業界におけるIT戦略の成熟度は、他業界と比較して非常に低いレベルにあった。しかし一方で、エネルギー事業を支える仕組みは、益々ITとシンクロナイズしていた。それ故にIT戦略をいち早く積極的に取り入れている会社が、エネルギー戦国時代といわれる激動の中で生き残りを見せているのだ。

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