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「相続させたくない」「⼦どもたちの仲が悪い」…今すぐ遺⾔を作成すべき9のパタ ーン

長谷川裕雅(弁護士・税理士)

2020年12月03日 公開 2022年06月07日 更新

 

⼦供との関係で複雑化する相続…遺⾔が無いともめやすいパターン

【(2)子供がいない場合】
子供がいない場合は、配偶者と被相続人の両親が相続人になります(※相続分は、配偶者が3分の2、両親が3分の1)。両親や祖父母が亡くなっている場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1を相続します。

兄弟姉妹のなかで、すでに亡くなっている人がいた場合は、甥や姪が代襲して相続人となります。

被相続人の配偶者と両親や兄弟姉妹との間にはもともと血のつながりがなく、結婚に反対していたなどの事情があればなおさらもめやすいのです。

遺言があれば、もめることなく遺産を相続させることができます。特に兄弟姉妹、甥や姪には遺留分がありませんので、遺言を残すことによって確実にもめ事を回避することができます。

【(3)内縁のパートナーやその人との間に子供がいる場合】
内縁のパートナーとは、婚姻届が出されていない事実上のパートナーを指します。内縁のパートナーに相続権はありませんので、たとえ長い間、夫婦と変わらない生活を送ってきたとしても、財産を相続することはできません。

相続人でない内縁のパートナーに財産を残したいときは、 生前贈与をするほかに、遺言で遺贈する方法があります。

内縁のパートナーとの間にできた子供を認知していない場合、子供に相続権はありません。ただし、遺言によってその子供を認知したり、財産を残す(遺贈)ことはできます。

【(4)結婚した相手に連れ子がいる場合】
養子縁組をしない限り、相続権は発生しません。故人が連れ子を実子と同様に可愛がっていたとしても、連れ子が献身的に故人の世話をしたとしても、相続人としては認められませんので、遺産を相続することはできないのです。

したがって、配偶者の連れ子に財産を残すには、生前に養子縁組を行うか、遺言で遺贈を行わなければなりません。

【(5)未成年の子供がいる場合】
未成年者には親権者(※通常は両親)が必要です。親権者とは、子供の財産を管理したり、教育したり、保護したりする立場の人のことです。

自分が死んだあとに親権者がいなくなる場合、最後に親権を行う人は、遺言で未成年後見人を指定できます。未成年後見人には親権者と同様の権利義務が与えられます。

大切な子供の行く末が心配でない人はいないと思います。一番信頼できる人にみてもらえるように、遺言で指定しておきましょう。

遺言によって指定していない場合は、親族などの請求により家庭裁判所が未成年後見人を選任することになります。

 

「相続させたくない⼈」がいるならば、遺⾔が効果を発揮する

【(6)相続させたくない相続人がいる場合】

「親不孝息子や面倒をみてくれない養子には、財産をいっさい残したくない」

このように考えたとしても、遺言を残さない限り、遺産は法定相続分に従って相続されることになります。また、相続させたくない相続人の相続分をゼロにする遺言書を書いたとしても、遺留分侵害額請求権が行使されると、遺留分は取り返されます。

遺留分を含めて、すべての相続分を皆無にしようとする場合、「相続廃除」によって相続人の権利をなくしてしまう方法があります。

相続廃除は生前にもできますが、遺言によってもできます。遺言で行う場合は、遺言に相続廃除の意思とその理由を書き、遺言執行者を指定します。そして相続開始後に遺言執行者が家庭裁判所に対して相続廃除の申し立てを行います。

ただし、相続廃除が認められるには、家庭裁判所の決定が必要です。これまでの判例では、相続廃除が認められるケースは決して多くありません。

したがって遺言書には、相続廃除が認められなかった場合と認められた場合を想定し、両方の遺産分割方法を明記しておく方がよいですね。

【(7)相続人がいない場合】
相続人が1人もおらず、特別縁故者さえもいない場合、遺産は国庫に帰属することになります。このようなケースでも、遺言によってお世話になった友人に財産を残したり、学校や公共団体などへ寄付することは可能です。その場合は、遺言を執行する遺言執行者もあわせて指定する必要があります。

なお「相続人がいない」と思っていても、戸籍などをくまなく調べてみると見つかるケースがあります。特別縁故者に相続させることを希望する場合は、しっかり確認しなくてはいけません。

【(8)行方不明の相続人がいる場合】
遺産分割協議は、相続人が1人でも欠けていると行うことができません。預貯金の引き出しなどは原則として相続人全員の同意が必要ですから、所在がわからなくて連絡が取れない相続人がいると、引き出しが認められなくなる事態が発生します。

しかし、遺言によって相続分指定および遺言執行者を指定すれば、遺産分割協議は不要となり、遺言執行者が相続人に代わって遺言どおりに手続きを進めてくれます。所在不明の相続人がいても、預貯金の引き出しや登記手続きを行うことができます。

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