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世界一豪華な寝台列車「ななつ星」が教えてくれた「世界一が人を動かす」

唐池恒二(JR九州会長)

2021年03月01日 公開 2021年07月19日 更新

世界一豪華な寝台列車「ななつ星」が教えてくれた「世界一が人を動かす」

九州新幹線全線開通を控えたJR九州――当時のJR九州社長・唐池恒二氏は次なる夢として「世界一豪華な寝台列車」の構想を周囲に話したが、反応はあまりよくなかったという。しかし次第に熱が伝わり、「世界一」を目指すことの重要性を確信したと語る。

※本稿は、唐池恒二著『逃げない。』(PHP研究所)より一部抜粋・編集したものです。

 

夢は方向性を与えてくれる

リーダーの役割は、組織(集団)の目的を達成するために組織(集団)を動かすこと。すなわち組織を構成するメンバーを動かすということです。その際、メンバーがばらばらな方向に向かって動いても目的の達成には至りません。

メンバーがどの方向に動くべきかを示すことがリーダーの最大の役割です。リーダーは、組織の進むべき方向を明確に示さなければいけません。示すべき方向の中には、夢(ビジョン)と目標、この二つが含まれます。

辞書を引きますと、「夢」は「将来実現したい願い、理想」とあります。また、「目標」は「行動を進めるにあたって実現、達成をめざす水準」とあります。

ワールドカップに日本代表として過去3大会出場を果たしているプロサッカー選手の本田圭佑氏が、公式ツイッターで夢と目標の違いについて語っています。

「僕の中では夢と目標は明らかに違う。そしてほとんどの人が夢を持てていない。目標は今の自分でも頑張れば実現できるターゲット。夢は今の自分では頑張っても不可能なターゲット。子供だけでなく大人が新たに素晴らしい夢を持つことが出来れば世界はもっと素晴らしくなるはず」

夢は、現実の世界ですぐに実現して目の前に現れたり、手で触れたりできないものです。もう一つの目標は、英語でいうと「ゴール」であり、自分で具体的に行動を起こして実現させることが前提となっています。

本田氏が言うように、自分の将来に夢を抱く人はあまり多くありません。途方もない夢をみても到底実現しそうもない、と最初からあきらめているのでしょう。

ビジネスの世界でも、スポーツの世界でも、大きな夢を抱いた人のほうが大成功しています。リーダーは、組織の進むべき方向を示さなければいけません。

その際、まずリーダーが思い描く夢を語ることが大切です。次に、その夢を実現するために具体的な目標を設定し、実行計画を策定することが求められます。京セラの創業者、稲盛和夫氏は夢についてこう語ります。

「夢を持つことは、とても大切なことです。まず、夢がないことには、人間は人生を漂流してしまいます。ちょっとした困難にも立ち止まってしまいます」

 

夢を見よう、夢を語ろう

幕末の思想家、吉田松陰は夢と成功を結びつけています。

「夢なき者に理想なし、理想なき者に計画なし、計画なき者に実行なし、実行なき者に成功なし。故に、夢なき者に成功なし」

「逆境をバネにする」という言葉がありますが、バネにするだけでは足りません。そこから何をめざすのか、どの方向に向かって進むのかがわからないからです。

逆境の中でこそ、夢をみることが欠かせません。もちろん、逆境でない場合でも、つまり順調に来ているときも夢を持たなければいけません。さもないと、どの方向に進めばいいかわからないから、稲盛氏の言うように、組織は「漂流」してしまいます。

松下幸之助氏は、1958年、63歳のときにビジネス誌の中で次のように述べています。

――ぼくは人はすべて希望を失ってはいけない、いいかえると、明日に夢を持てといいたい。この夢を持つということが人生において、どんなに大切なことかわからないと常々考えている。

ぼくは昔から、非常な夢の持ち主である。だから早くいえば、仕事も一切夢から出ているわけだ。よく人から「あんたの趣味は何ですか」と聞かれるが、ぼくは「私は趣味はないですな、ま、しいていえば夢が趣味ということになりますかな」と答えることにしている。

実際、夢ほどすばらしいものはない。空想は幾らでも画けるし、きりはない。広い未開の地にいって、そこの開拓王になることだってできるし、大発明をして社会に非常な貢献をすることもできるし、あるいは巨万の富を持つことも夢では成り立つ。

ぼくみたいに芸のないものは、夢でも画かんことにはしようがないかもしれないが、そういう意味で空想もまた楽しいものだと思っている。これをぼくの夢哲学とでも名づけようか――

実際、幸之助氏の人生は、絶えず夢を描き、それを追い求めた軌跡でした。松下電器を創業して十数年経ったころ、従業員に「産業人の使命は、物資を水道の水のごとく安価無尽蔵に供給して、この世に楽土を建設することである。この真使命を250年かけて達成しよう」という壮大な構想を訴えています。

これが社員を奮い立たせ、松下電器は驚くべきスピードで発展していきました。これこそ夢の力といえるでしょう。

京セラの創業者・稲盛和夫氏は、夢についてこうも述べています。「夢に酔っていればこそ、それを実現させる情熱が湧いてくるのです」

日本電産の創業者・永守重信氏は夢についてこう述べています。「皆、夢を見なさすぎだ。大きな夢を見て、一心不乱に努力する。そうすればここぞと思ったら掴みかかることができる」

ぜひ夢をみましょう、夢を語りましょう。

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