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「なんとなく居心地が悪い職場」が改善されない決定的な要因

佐々木正悟(作家/心理学ジャーナリスト)

2021年12月02日 公開 2022年12月27日 更新

「なんとなく居心地が悪い職場」が改善されない決定的な要因

「なんだかギスギスしている」「ミスを許さない空気がある」「気軽に相談しにくい」...そうした「なんとなく居心地が悪い」と感じてしまう職場と、そうではない職場とはいったい何が違うのか?

作家・佐々木正悟氏は著書『つい顔色をうかがってしまう私を手放す方法』で「他人に怒られること」を過剰に恐れる感情のメカニズムとその対処法を紹介している。本稿では、同書より「なんとなく居心地が悪い職場」で見落とされがちな「甘え」の隠れた効用について書かれた一節を紹介する。

※本稿は佐々木正悟著『つい顔色をうかがってしまう私を手放す方法』(技術評論社刊)より一部抜粋・編集したものです。

 

「ミスを恐れる心理」の背後にあるもの

「甘え」といえば、わが国にはなんといっても大ロングセラーである土居健郎さんによる『甘えの構造』(弘文堂)があります。この本のくだくだしい説明はさておき、そこで「甘え」がどう定義されているかをまず見ておきます。

――「甘え」は親しい二者関係を前提にするとのべた。一方が相手は自分に対し好意を持っていることがわかっていて、それにふさわしく振舞うことが「甘える」ことなのである。ここで肝腎なのは相手の好意がわかっているということである――

たとえば、職場でなにかミスをしたというケースを考えてみましょう。職場が「甘えられる場」であれば、申し訳ないことをしてしまったという罪悪感を抱いたとしても、立ち直れないほどの心理的ダメージを受けるには至りません。というのも、「相手の好意がわかっていて、それにふさわしくふるまう」ことが十分に可能だからです。

たとえば、そのふるまいとして「心からていねいに詫びる」といったことがあるでしょう。職場の同僚や上司の好意がわかっていれば、好意的であるからこそ申し訳ないと思うかもしれませんが、心の痛手はそれほど重大なものにはならないはずです。「詫びればわかってもらえる」でしょうし、だからこそふさわしいお詫びの言葉も容易に見つかるはずです。

ここで肝腎なのは、まさに「相手の好意がわかっている」という点です。おそらく現在の日本の職場であっても、関係者がすべて好意的であるとわかっていれば、このような「甘え」が成立するはずです。

しかし、少なくとも現代社会で叱責恐怖症で顔色ばかりうかがっている「繊細さん」は、以上のようなわけにはいかないと感じるはずです。なぜならば「甘えは許されない」からです。

それはどういうことかというと「相手の好意がわからない」「相手は少しも好意的ではない」といった「場所」で仕事をしているからです。そんな場所でミスをしでかせば、不安を越えて、強い恐怖に襲われるでしょう。

「詫びればわかってもらえる」なんて、とんでもないことです。ミスをしたのだから、やることとしては、甘えられる場合と同じように「心からていねいに詫びる」しかないかもしれません。

けれども、それは「相手の好意を知ったうえでのふさわしいふるまい」(つまり甘えたふるまい)ではあるかもしれませんが、相手が好意的かどうかがわからないか、もしくは相手が好意的でない場合には「さらなる烈しい激怒と叱責」を招くだけかもしれません。

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本当に怖いのは「怒られること」ではない

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