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専門家が語る、不透明な時代に求められる「キャリアの自由度」とは

渡辺秀和(コンコードエグゼクティブグループCEO)

2022年09月26日 公開

専門家が語る、不透明な時代に求められる「キャリアの自由度」とは

新型コロナウイルス感染症や、ロシアによるウクライナ侵攻、20年ぶりの円安水準に止まらない資源高...数年前には想像もしていなかったような変化が急速に進む現代。日本だけでなく世界全体の社会情勢に不透明感が増す中で、自身のキャリアや収入に対して不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

東京大学のキャリアデザインの授業で教鞭を執っていたコンコードエグゼクティブグループCEOの渡辺秀和氏は「変化の激しい現代においては、柔軟に対応できるキャリアを形成しておくことが大切」といいます。東大生も学んだという「自由度の高いキャリア」を設計する方法について解説してもらいました。

 

不透明な時代のキャリア形成は「自由度」が鍵を握る

ここ数年、ご自身のキャリアの将来に不安を感じ、相談にいらっしゃる学生や若いビジネスパーソンが増えています。大企業のリストラや外資系企業による日本企業の買収が珍しくなくなり、終身雇用の終焉が取りざたされて久しくなりました。

それに加えて、昨今の不透明感を増す国内経済や世界情勢を考えると、キャリアに不安を抱かれることも無理からぬ話です。業界・国境を越えた競争が激化していく中で、どの大手企業も安泰とは言えないでしょう。

それでは、どのようにキャリアを形成すればよいのでしょうか。その解決策のヒントは、ここ20年ほどで急速に発達した「人材市場」にあります。

現代は、優良企業の魅力的なポジション・条件での中途採用が増え、優秀な人材が転職をし、それを受けて企業はますます中途採用に力を入れるーーという連鎖が起こっています。

今や、豊富な経験や専門性を持った人材は企業間で争奪戦となっています。従来の大手企業では考えられないような高額の年収を提示する企業も珍しくないのです。

30代前半で2000万円を超える年収となるコンサルティングファームやPEファンド、外資系企業やITベンチャー企業の幹部ポジションなどは、その好例です。ITベンチャーと聞くと、「プログラミングスキルが必要では?」と思われる方もいらっしゃいます。

しかし、これらの企業にも経理や人事、営業、事業開発といった一般企業と同様のポジションが多数あり、転職にあたりプログラミングスキルは必須ではありません。また、人気のコンサルティング業界も20代、30代を中心に未経験者も含めて積極的に採用が行われています。

このように発達した人材市場が誕生した現代では、たとえ勤務先の会社が苦境に陥ったとしても、他の企業で必要とされるスキルを身に着けていれば、新たなキャリアを歩むことができます。

ひとつの企業をセーフティーネットとするのでなく、人材市場をセーフティーネットとすることで、キャリアの安定度は大きく増します。もちろん、充実したキャリアを歩まれている場合、転職する必要はありません。

ただし、人材市場で評価されるスキルや経験を身につけておき、いざとなれば転職や再就職できる自由のあるキャリア――いわば「自由度の高いキャリア」を形成しておくという視点はとても大切です。

そして、この自由度の高さは、出産や育児、介護、パートナーの転勤といったライフイベントにおける不確実性に向き合う上でも非常に役立ちます。

それでは、人材市場で評価されるためには、どのようなキャリアをつくれば良いのでしょうか。

これまで多くの方のキャリア相談を受けている中で、よく見られる「3つの誤解」があります。いずれも良かれと思って努力したことが、マイナスの要素になることもあるため、注意が必要です。それぞれについて詳しく解説していきましょう。

 

苦手克服に対する誤解...“必須スキル”であふれる現代

最近、書店を覗くと、「プログラミングは文系でも必須のスキル」、「財務は現代の読み書きそろばん」、「営業力はすべての職種に必要不可欠」といったタイトルの雑誌や書籍が並び、あらゆる分野の知識やスキルが必須と謳われています。

もちろん身につけておいた方が良いのは確かでしょうが、それらは本当に"自分にとっての必須スキル"なのでしょうか。

座学の勉強であればまだしも、情報システム部門と財務部門でキャリアを積んだので、次は営業職に就こう…という真面目な方とお会いすることもあります。あらゆる分野のスキルを伸ばそうとしても、現実には他人より少し詳しい程度の知識を、薄く広く持つに留まることが多いでしょう。

各分野のスキルレベルをレーダーチャートで表わすと、デコボコが少ない円に近づくため、「まるいキャリア」とも呼ばれます。実は、まるいキャリアは苦労のわりに、人材市場では評価されにくいので要注意です。

これは採用企業の視点に立つと明快です。例えば、経理職を採用しようとした場合、経理2年、営業2年、人事2年という経験を積んだ人材と、経理を6年経験した人材であれば、多くの企業が後者を採用したいと考えるでしょう。

つまり、なんでも70点ずつできるという人材よりも、特定の分野で100点あるいは120点を取れるという明確な売りを持つ人材のほうが、人材市場では高い評価を得やすいのです。いわゆる「ゼネラリスト」が人材市場では高い評価を得にくい所以でもあります。

「念のため、このスキルも身につけよう」といろいろな領域に手を出すよりも、むしろ「この領域はやらない」という捨てる勇気を持ち、好きな領域や得意な領域に資源を集中させる方が、効果的なことが多いのです。人材市場で高い評価を得るには「領域を絞り、ライバルよりも高度なスキルや力を身につける」ということがベーシックな考え方になります。

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難関資格に対する誤解...その資格は“キャリアの保険”になるのか

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