松下幸之助が創刊した雑誌が、いま、職場で読まれている理由

『PHP』は、心あたたまるエピソードや感動エッセイが詰まった雑誌。社員の人格形成や職場活性化にも役立つと、現在、全国1,000社以上の職場で愛読されています。
2018年04月19日 公開
芥川賞作家・又吉直樹氏もその作品を称賛し、ショートショートの旗手として注目される作家の田丸雅智氏。実は東京大学工学部、同大学院を経て作家となったキャリアを持つ。なぜ東大、それも理系卒で作家を志したのか? その理由、そして学ぶことの意義、作家としてのスタンスについて聞いた。
「理系で東大卒、それも院卒なのになぜ小説家?」
これまでに何度となくされてきた質問です。
いま、理系作家は珍しくないですし、東大卒の作家もたくさんいるにもかかわらず、やはり聞かれることが多いです。
現在作家であるぼくは、大学では環境・エネルギー問題を学ぶ学科に在籍し、大学院ではその延長線上で材料力学を専攻していました。
修士論文は、簡単に言うと軽い材料でクルマをつくって燃費を改善しましょう、という研究が主なテーマだったのですが、これだけ聞くと小説とは何の関係もなさそうに思えるかもしれません。
誤解を恐れず言うならば、ぼくは昔からどの教科も大好きで、国語も数学も、理科も社会も、体育も美術も、越えられない壁で区切られたものではなく、本質的にはひとつのものだと感じていました。
全部の科目が得意だった、という自慢話をしたいわけではありません。
そもそも理系と文系、もっと言えばそれらとスポーツや芸術などとの間にも、根本的には境なんて存在しない。少なくとも、ぼくはそう感じていました。
もちろん便宜上の区別は場合によっては必要だと思います。ですが、無意味な境界線は、その物事を「やらない理由」として使われてしまいがちではないでしょうか。
「理系だから」「東大卒だから」ということも同じです。これらもあくまで世間が引いた境界線であって、少なくとも自分自身が小説を書かない理由には決してなりませんでした。
ですので、学生時代の研究も、いまやっている創作も、一見すると関係なさそうに思えますが、個人的にはあまり違うことをやっているという感覚はありません。
ちなみに、初めて小説を書いたのは高校二年生のとき。
もともと本はほとんど読まず、小説を書きたいと思ったことも一度もありませんでした。ただ、ショートショートというジャンルの小説だけは好きで、読んでいました。そんなぼくが暇を持て余して何となく書いたものがショートショートだったのは、単なる偶然ではなかっただろうと思います。そのときは、後に自分が作家になろうとは夢にも思っていませんでしたが。
ぼくの二人の祖父は、それぞれ造船業と大工を営んでいました。だからぼくは、機械や鉄屑、木材に囲まれて幼少時代を過ごしてきました。
それゆえに小さいころから工作が好きで、気がつけば、簡単なおもちゃなら自分でつくって遊ぶようになっていました。もちろん既製品で遊ぶことも最高に楽しかったのですが、この世にないものを自分で生みだす快感は何にも代えがたいものがあったのです。
そんな背景もあり、選択肢としての「理系」の道を選んだことは、ぼくにとってはじつに自然なことでした。
自分も将来、祖父のようなものづくりに携わる人間になるのだろうなぁ。漠然と、そう考えていました。
ところが。
大学に入って、ぼくは科学の凄さに圧倒されることになるのです。
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境界線のない空想世界に夢中になった工学部学生・田丸雅智 >
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