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発達心理学が明かす「子どもに親が取るべき態度」



2021年07月05日 公開

森口佑介(発達心理学者・京都大学大学院文学研究科准教授)

森口佑介

自分の子には「思いやりある子」「自制心のある子」に育ってほしい――そう願う親は多いだろう。しかし、子どもとどうかかわればいいのか、悩む親もまた多い。発達心理学の進展でわかってきた、子どもの心の成長に欠かせない“親の態度”とは?

※本稿は、森口佑介著『子どもの発達格差』(PHP新書)を一部抜粋・編集したものです。

 

親のかかわりの重要性

虐待やネグレクトなどの極端なケースにならないまでも、子どもとのかかわり方に悩みを抱える親は少なくありません。自分が受けた養育に何らかの問題があった場合に、その傾向は強いようです。

たとえば、ダニーデンの縦断研究(ある年に生まれた1000人程度の赤ちゃんを生涯にわたって追跡調査)からは、女性に限り、子育てが世代間で伝達することが示されています。

この研究では、子どもが3〜15歳の間に、その親がどのような子育てをしているかを調べました。そして、子どもが大人になって、親になったときに、自分の子どもに対してどのような子育てをしたのかを調べたのです。

その結果、女性の参加者は、母親の子育ての影響を受ける可能性が示されています。たとえば、女性の参加者の母親が3〜5歳期に厳しすぎない柔軟な子育てをした場合、女性の参加者が親になったときに、子どもに対して肯定的な子育てをする傾向があることが示されました。

3〜5歳のときが特別大事というわけではなく、7〜9歳のときや13〜15歳のときの母親の子育ての影響もみられています。

一方、男性については、親の影響はみられていません。これは、男性の父親が子育てにあまり協力していなかったからなのか、男性では世代間伝達が起きないのか、現時点では不明ですが、女性にのみ世代間伝達がみられるようです。

このような結果から、自分が適切な養育を受けなかった場合、親になったときに子育てに苦労する可能性があります。そして、その結果として、子どもが親や他者に対して、信頼を示せないということが起こりうるのです。

 

敏感さの重要性

それでは、養育者が子どもと安定した関係を築くために必要な、適切な養育とはどのようなものでしょうか。この点に関しては、様々な研究がなされているのですが、養育者と子どもの関係が構築される赤ちゃんの時期において一貫して重要であることが示されているのは、養育者の敏感さです。

ここでの敏感さとは、養育者が、子どもの視点に立ち、子どもの出す何らかのサインに気づき、正しく解釈し、適切に反応することを指します。

たとえば、赤ちゃんが泣いたとします。自分の意思表示がまだ十分にできない赤ちゃんは、泣くことによって自分を表現します。それは、空腹のサインかもしれませんし、おしっこをしてしまい、不快になってしまったことのサインかもしれません。

このようなサインに養育者が気づくことができるかどうか、赤ちゃんが何を伝えようとしているのか、そのときにどのように対応したらいいのか、ということが敏感さです。

空腹の場合であれば、敏感な養育者は、赤ちゃんの泣きを感知すると、時間的にお腹が空いたのかと見当をつけ、赤ちゃんの気持ちを代弁し(お腹空いたのよね、など)、母乳やミルクを与えることで対応することができます。

一方、敏感ではない養育者は、赤ちゃんの泣きを感知しなかったり、感知したとしてもその意味について解釈することができなかったりして、正しく対応できません。

子どもの出すサインに敏感に反応する養育者は、子どもとの間に安定した関係性を築きやすい一方、子どものサインに敏感ではない養育者は、子どもと安定した関係性を築きにくいことが示されています。

もちろん、実際の育児場面では、乳児の出すサインは必ずしもわかりやすいものばかりではありません。泣いたとしても、空腹でもおしっこでもなく、抱っこしても泣き止まないというのはよくみられる光景です。

実際には子どもの出すサインにすべて反応することは難しいので、3割くらいに反応すればよいのではないかとも言われています。

敏感さ以外にも、養育者側の様々な行動が、子どもが赤ちゃんの時期に安定したアタッチメントを形成するために重要です。そして、これが他者への信頼につながっていきます

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