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うんざりする一本道の先に...サザンも歌った「伝説のバー」が見た“横浜の今昔”

佐野亨(フリーライター)

2023年01月26日 公開 2023年12月26日 更新

うんざりする一本道の先に...サザンも歌った「伝説のバー」が見た“横浜の今昔”


バー・スターダスト

日本最大の人口を擁する市、横浜。観光地としても有名なエリアだが、開港以前の歴史をいまに伝える道、戦争の傷跡、アメリカが息づく場所、路地裏の名店...といった知られざる"ディープヨコハマ"も数多く存在する。

今回は、JR・京急東神奈川駅から徒歩15分近くかかる場所にありながら人気のバー「スターダスト」を中心に、かつての宿場町だった「神奈川」の港湾エリアを探訪する。

※本稿は、佐野亨著「ディープヨコハマをあるく」(辰巳出版)より、内容を一部抜粋・編集したものです。

 

大正初期に始まった京浜工業地帯の開発


京浜工業地帯(鶴見線海芝浦駅から撮影)

〈だるま船のおかみさんわ河の水で米をとぎ、たきつけをわり、朝の仕度にいそがしい。そばにわねぼけ顔の子供が船べりにつかまりうんこをしている。まつくろなおやじさんわ向うはちまきで船をあらつている。

となりにもやつた小蒸汽わ、重油(あぶら)を入れ、汽鑵(かま)をあつため、もやいをほどき、ポン ポン ポン と、煙を○(わ)形にはき出して今日の仕事に動き出した。〉(「朝―横浜臨港工業地帯風景―」)

浚渫船(しゅんせつせん)の船頭として京浜工業地帯で働いていた船方一(はじめ)の詩の一節だ。

京浜工業地帯の開発は、欧米のめざましい港湾開発に触発された実業家浅野総一郎の主導のもと、大正初期にはじまった。現在は県内の他都市や東京、埼玉、千葉にまでエリアが拡大しているが、当初の計画地は神奈川、鶴見、川崎の臨港地区であった。

神奈川は、東海道五十三次の三番目の宿場で、県名、区名の由来である神奈川宿を擁する。江戸時代には隣接する子安、生麦とともに幕府に海産物を献上する御菜浦(おさいうら)として栄えた。

 

謎の料理「マンハッタン」

横浜駅東口至近には、ポートサイド地区とコットンハーバー地区という二つのニュータウンがあり、港やベイブリッジを背に高層マンションが建ちならぶ夜景はマンハッタンを思わせる。

マンハッタンといえば、その名を冠したカクテルがあるが、コットンハーバー地区へ到る星野橋脇の宿場そばのメニューには、マンハッタンなる謎の料理が記されている。

「親父の気まぐれ」というふれこみのこの料理、じつはチーズカレー南蛮で、そばの上にとろみの強いカレーソースをかけ、大量のチーズを添えた南蛮が、白飯、タバスコと一緒に出てくる。ガツンと胃にくるが、港湾労働者には恰好の力飯だ。

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コットンハーバーと浅野ドック

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