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「定年廃止」「解雇規制緩和」「完全能力給の導入」が日本の雇用を救う

冨山和彦(経営共創基盤[IGPI]代表取締役CEO)

2012年06月22日 公開 2023年01月05日 更新

冨山和彦

知的労働的な仕事が増える時代の雇われ方

今後、社会の趨勢で知的労働的な仕事が増えていくにつれ、35歳を超えてもさらに能力が伸びる人の数はどんどん減っていくだろう。

その先行指標としてわかりやすいのが、役人の世界だ。かなり純粋に知的労働だから、全体の九割以上は35歳でピークアウト。残りの数パーセントの人間だけが、35歳を超えても右肩上がりで伸びていく。良い悪いではなく、そういう性格の仕事なので、しかたない。

戦略コンサルタントの世界も似たようなものだ。みんなが同じように成長できるのは35歳くらいまで。そこから先は、人によって成長の角度が全然違ってくる。さらに伸びる人間もごく稀にいるけれど、おおかたの人は落ちていく。

IT業界はもっとシビアだ。プログラミングやクリエーターの世界は、20代後半で早くもピークに達して、30代以降も通用するのは一部のスーパーマンだけ。

年を取ると、学習能力が落ちてくる。頭がだんだんカタくなって、新しいモノが吸収できなくなってしまう。ブレない軸を持つことは大事だが、現実の変化についていかなければ、言っていることが古くなってしまう。

変化の速い時代だから、キャッチアップしようという意識をなくしたとたん、持っている知識が陳腐化する。高い意識で日々勉強し続けるには、体力も欠かせない。

現実には「一流プロフェッショナル」的なレベルまで行けるビジネスパーソンは、そう簡単には生まれないだろう。であれば、各企業はコストパフォーマンスの観点から、35歳を超えた人々の給料は概ね下げたいと考えるはずだ。

その代わり、雇用期間を一定年齢で一律に切る必要もない。そこで下がった給料に耐えられないとしたら、自分がもっと比較優位のある仕事や会社に移動できる。

明らかにお荷物扱いされ、仕事ぶりと給料が釣り合わないと自他ともに認める人々を、「雇用を守る」という大義名分だけでたくさん抱えている職場が、私には真に人間的職場、本当に人に優しい職場とは思わない。

リアル経営者として言わせてもらうなら、人を大事にする経営とは、その人の適性、比較優位をよく理解し、尊敬し、その人にフィットした仕事、適性を伸ばせるような仕事を提供する経営である。

裏返して言えば、そういう仕事を提供できなくなったときには、その人を飼い殺しにするのではなく、次のステップに進むことを勇気づけ、その移行過程を物心ともにできるだけサポートする経営である。

そういう意味で、いま、日本に定着している労働慣行が、このIT化の時代に、若い世代に(おそらく中高年世代にも)人間的な働き方を提供できているとは思えない。

 

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