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孫正義のエネルギー革命 「アジアスーパーグリッド構想」

自然エネルギー財団(会長:孫正義)

2012年06月28日 公開 2022年12月27日 更新

孫正義

迷ったときは、遠くを見る

いま我々が求められているのは、10年、20年先のための解決策ではありません。100年、200年先を考えた解決策を考えなければなりません。10年、20年先のための解決策なら、「とりあえず化石燃料による火力発電でいい」という話にもなります。原発の再稼働も、選択肢の1つになるかもしれません。

とはいえ、今後の日本で原発を新たにつくるのは、かなり難しいでしょう。また、かりに再稼働したとしても、いずれ寿命がくれば使えなくなります。そう考えたとき、やはり原発依存には限界があります。

人類はまだ、原子力を十分にコントロールする方法を手にしていません。非常に危険すぎるものです。コントロールする方法を知らないエネルギーは、けっして使い続けてはなりません。

日本に54基あった原発は、トラブルや定期検査などで2011年の冬には2基しか稼働していませんでした。一時は「日本経済が全停止する」「家庭の電気はすべて停電する」などと危惧されましたが、なんとか乗り越えられました。そこには国民の節電の努力があり、また停止していた火力発電が稼働する方向で動いたこともあります。

火力発電も一時的には依存せざるを得ないでしょうが、将来的に燃料費の値上がりは避けられないでしょう。

気候変動や資源枯渇の問題もあり、やはり100年、200年先という長い年月で考えたら、自然エネルギーをもとにしたアジアスーパーグリッド構想の実現しかありません。

物事に迷ったときは、遠くを見ることです。答えはシンプルに見えてきます。そして見えた答えがあれば、迷わずシンプルにそこに全速力で向かう。あとで振り返ると、結局それしか解決策はないのです。短期的な解決は、途中の寄り道にしか過ぎません。

しかもこれは経済的に成り立つ方法です。だから国民に負担をかけず、税金に頼らず、実現できます。いま現在は、自然エネルギーによる発電はコストがかかります。そのため固定価格買取制度などに頼らざるを得ませんが、中長期で見れば、むしろ火力より安くなります。当然、原子力よりも安くなります。

福島原発の事故以来、安全レベルのハードルがいっきに上がりました。原子力を新たにつくる場合、これから大変なコストがかかります。これから新たにつくろうという動きは、世界中でどんどん減るでしょう。

その意味でもアジアをスーパーグリッドでつなぎ、長く持つような、自然エネルギーによる新しいシステムをつくる必要があります。

アジアスーパーグリッド構想について言えば、自然エネルギー財団を設立した当初、私自身、荒唐無稽な夢物語と思っていました。直後に開いた会合でも、「まだ信じないでください。とりあえずクレージーな夢物語を語っています。ただの大風呂敷ですから、忘れてください」と発言しました。

ところがそれから半年経って、夢は着実に前進しています。本文でご紹介するように、世界の人びとが我々の構想に関心を抱いてくれています。日本政府の方々にも、ぜひ大きなスケールで日本のエネルギー政策を解決する議論をしていただきたい。

本書『孫正義のエネルギー革命』が、そのための一助となることを願いたいと思います。

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