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“恐れ”と“遠慮”を捨てたとき、真のリーダーになれる!

吉越浩一郎(元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長)

2012年09月28日 公開 2022年12月01日 更新

“恐れ”と“遠慮”を捨てたとき、真のリーダーになれる!

リーダーシップ研修を受け、リーダーの心得について書かれた本を何冊も読んだはずなのに、いざ部下をもってみると、コミュニケーションはうまくいかず、信頼も得られず、結果も出せない。このように自分はリーダーに向かないと考えてしまう人は多い。

元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長の吉越浩一郎氏は、理想のリーダーとなるためには、うまくいかなくても強い意志をもって、何度も何度も挑戦するものだと語る。

吉越氏の長年に渡るリーダー経験から学べるものは何だろう。

※吉越浩一郎 著『結果を出すリーダーの条件』(PHPビジネス新書)より、一部内容を抜粋・編集したものです。

 

個人のやる気より雰囲気づくり

1人ひとりのメンバーが意欲をもって仕事に取り組まなければ、職場やチームの生産性は上がらない。

始業時刻のギリギリになって出社し、眠気の覚めやらぬまま昼を迎え、午後になってようやくエンジンがかかってくる。こんな社員ばかりでは、競争に勝ち抜いていけるわけがない。

では、どうやって個々の部下のやる気を高めていけばいいのだろう。

これに関しては、リーダーのできることは、ない。

「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」ということわざもあるように、やる気の低い部下の耳元で、いくらリーダーが「もっと全力で仕事に取り組め、手を抜くな」と声を張り上げたところで、そんなのは文字どおり、馬の耳に念仏だ。

しかしながら、まともなリーダーが代わったら、俄然メンバーの眼の色が違ってきて、みんなやる気を出し始めたというようなこともよくある話だ。

それは、そのリーダーの雰囲気づくりが上手いのだ。

メンバーのやる気というのは、もちろん本人の資質や性格もあるだろうが、それよりも職場やチームの雰囲気に左右されるところが大きい。

弛緩した空気に包まれた職場にいたら、自分への厳しさなどあっという間になくなって「そんなに頑張らなくてもいいんだ、自分も適当にやろう」という気持ちに自然となっていくものだ。人間とは元来弱いものである。

逆に、気力をみなぎらせ、朝からハイテンションで仕事をするのが当たり前という感じの職場では、リーダーに尻を叩かれなくても、みなそうなっていく。自分だけのんびりしていると、かえって居心地が悪いからだ。

職場のやる気モードを高めるには、まずリーダー自身が自分に厳しく、高いレベルで仕事をしている姿を、部下に見せるのである。また、苦しくてもつらそうな顔をせず、リーダーがその苦しさを楽しんでいるというのを伝えることも大切だ。

実際、高いハードルを越えたときほど、より大きな喜びと満足感を手に入れることができるのだから、それを思えば苦しいことは、むしろ歓迎すべきことなのである。

苦しさから逃げて楽をすることを優先する人は、ハードルを越える喜びと満足感を知らないだけなので、上司がそれを教えてあげればいいのだ。

上司を筆頭に、全員が高い目標に向かって努力し、達成した喜びを分かち合う。そんな雰囲気をチーム全体に作れたら最高だ。

ひとつ自慢話を許していただけるなら、私がトリンプ時代の部下に会う機会があると、みながみな口をそろえて「吉越さんが社長のときは、いちばん仕事がきつかったけれど、いちばん楽しかった」といってくれる。

いちばん厳しくていちばん楽しい。リーダーとしては何より嬉しい言葉である。

 

部下からの反発も総攻撃も当たり前

部下がいうことをきいてくれない。
部下から反発されたらどうしよう。

そんな邪念はさっさと振り払ってしまうべきだ。リーダーを優しく迎えてくれる部下など、この世にいるはずがないではないか。

とくに新任のリーダーの場合、本当にこの人についていって大丈夫か、部下も疑心暗鬼になっている。まだ結果も出ていないのに、それまでと違ったことを強制させられたら、反発するのは当たり前である。

私だってトリンプ・インターナショナル・ジャパンに来て、それまで香港でやっていた仕事のやり方を日本にも根付かせようとしたら、社員からいきなり総攻撃を受けた。

デッドラインを付けて仕事を任せようにも、それまでそのように厳しい、圧倒的なスピードを要求していくやり方をしていなかった当時の社員は、それでなくても忙しいことは事実なので、「時間がとれませんから3日後なんて無理です」「1週間は必要」「いや1カ月」と期限をできるだけ引き延ばそうとする。

さらに、会議で社員がまとめてきた対策の甘いところを追及すると、怒って会議室から出ていったということも何回かあった。

それでも私は、デッドラインを浸透させないと低迷していた業績を回復させることはできないという信念をもっていたので、どんなに反発されようと毎日会議をやり、デッドラインを付けて働くというスタイルをしつこく社員に叩きこんでいった。

おかげでこちらの髪の毛はあっという間に白髪になった。その早さたるや本当に驚くほどだった。しかし徐々にそのやり方で、確かに仕事ができるようになり、結果が出てくるということがわかってくると、ようやく社員も私の仕事の進め方・ひいては私自身を受け入れてくれるようになったのである。

それでも、不満分子は完全にはいなくならなかった。しかし、リーダーはそういう人たちも戦力にしていかなければならない。リーダーが部下を抵抗勢力と呼び、対峠していては何も進まない。

そこで、さらにデッドラインの力を借りたのである。

ことごとく私に反発してくるAさんの部門で問題が起こったら、その部門会議でその問題を解決する担当者をAさんとし、同時にいつまでやらなければならないかというデッドラインを決めてしまうのだ。

そうしたら今度はその流れを早朝会議で発表するのである。すると、他部門も知るところとなり、同時に全社の合意事項となるので、Aさんはいくら私に反発していても、やらざるを得なくなるのだ。

また、早朝会議では、何度やっても担当者から満足のいく解決案が出てこないとき、会議でまったく別の部署の人間を指名し、次はお前がやれとその課題を任せてしまったこともあった。

そうすると、担当者としては面目丸潰れである。二度とこんな思いをしたくないと、次回から必死に課題解決に挑むようになるという寸法だ。

このように、やり遂げる、結果を出すという役割を果たすために、リーダーは腹をくくり、あくまでもブレずに命懸けで事に臨まなければならないのである。

世にリーダーシップの本はたくさん出ているが、とくに競争の厳しいこれからの時代、この部分を端折っているものは使えないと思っていい。

 

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