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フラット組織に問題あり!  まずはコミュニケーション効率化から

2013年08月27日 公開

小笹芳央(リンクアンドモチベーション会長)

《『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』2013年9・10月号 特集 「打てば響く組織」への挑戦 より》

「打てば響く組織」である要素の1つは、組織を構成するメンバーのやる気・本気、すなわちモチベーションが著しく高いことではないだろうか。
企業の人事部で採用や教育を担当し、その経験から組織のコンサルティング事業を提案した小笹芳央氏。その後独立起業して、今や東証一部上場を果たした氏の視点は、まさしく人の心の中のやる気・本気であった。
「モチベーション」研究の草分けである氏がモチベーション論の本質と、活気ある組織をつくるためのコミュニケーション力向上のヒントを語る。
<取材・構成:阿部久美子/写真撮影:永井浩>

 

リクルートのDNA

 「打てば響く組織」というと、自分の原体験にあるリクルートを想起します。私がリクルートに入社したのは1986年ですが、上から下まで実にコミュニケーションがよく通っていて組織が活性化していましたし、男女の差別もない、派閥・学閥もない、当時からダイバーシティ(人材の多様性)を体現した集団でした。

 私は総合商社への採用内定が決まっていたのを蹴ってリクルートに入ることになったのですが、その決断の決め手は、ベンチャーとして成長著しい企業の活気と風通しのいい雰囲気に惹かれたからだといえます。

 2000年に起業するまで14年間在籍しましたが、前半の7年は人事部で人材の採用と初期教育を担当し、後半の7年は人事から出て組織人事関係のコンサルティング事業を起ち上げ、その責任者をやっていました。

 リクルートには、「PC(プロフィットセンター)制」といって、会社の中で小さな会社をつくるような形で新規事業を展開できるシステムがあります。PC制で私が1人で起ち上げた「組織人事コンサルティング室」は、7年後にはスタッフ35名、年商10億円を超える事業にまで成長しました。

 顧客の方たちから「そろそろ自分でやったらどう?」と言っていただいたり、チームの中枢メンバーから「小笹さんが旗を立ててくれるならついていきます」と言ってもらったりして、社内外から機が熟した感があったので、一念発起して独立・起業したわけです。ですから、実業家としての私の扉を押し開けてくれたのは、やはりあの環境の中で組み込まれた「リクルートのDNA」だと思います。
   

なぜ「モチベーション」に着目したのか

 7名で創業した経営コンサルティング会社、われわれはその基軸を「モチベーション」に置きました。当時は心理学用語として使われている程度で、まだ一般的な認知度はほとんどありませんでしたが、これから組織において「モチベーション」「人のやる気」というテーマが必ず重要になってくるだろうという確信がありました。

 1つには、マズローの欲求段階説で知られるように、人間は根源的な生存欲求、安全欲求が充たされると、人に認められたいとかもっと成長したいといった自己実現に根ざした欲求を持つようになります。実際、採用担当としてたくさんの学生と接していた経験から、若い人たちの就労観、働くことの意義が、かつてのような「生きるため」「食べるため」という次元から、自己成長的な意味合いのものへと明らかに変わっていることを感じていました。

 また、人事のコンサルティング事業を通じて接した企業経営者の方々が、業種・業態・規模を問わず、皆さん一様に「いかに社員のやる気を高めて業績につなげるか」「組織をどうやって活性化させていくか」ということに悩んでおられるのも熟知していました。

 その社会背景には、企業と働く個人との関係が大きく変質したということもあります。終身雇用が保障されていたかつての日本の企業と個人の関係は、1回関係を結んだら定年まで綿々と続く「相互拘束型」でした。しかし、バブル崩壊後の90年代以降、正社員をかかえ続けることをリスクと考えるようになった企業は、社員に自立を求めるようになり、その結果、人材の流動が激しくなったわけです。ある意味、自由恋愛に変わったことにより、企業、個人双方に二極化が起こりました。

 企業のほうでいうと、「自分のキャリアアップにつながる」「やりがいを獲得できる」と見なされて優秀な人材が集まってくる企業、すなわち個人から選ばれる企業と、「ここで働いていてもいいことはなさそうだ」と見切りをつけられていく企業、募集をかけても人が集まらない、すなわち個人から選ばれない企業とに二極化しました。

 個人のほうも、高額なオファーであちこちの企業から請われる人材と、なかなかどこにも帰属できない人とが出てくるようになりました。

 企業と個人との関係がこのような「相互選択型」になったことで、今後いっそうモチベーションへの関心が高まると予想できたのです。

 私はもともと社会科学的な視点に興味があり、リクルートにいたころから心理学、社会システム論なども勉強していましたし、行動経済学や科学的に組織を活性化させる仕組みを研究したりもしていました。そうした蓄積、ノウハウをもとに、モチベーションという目に見えないものを体系化したいと考え、創業スタッフとともに当社独自の思考フレーム「モチべーションエンジニアリング」を構築しました。

 組織をどうとらえるかというマクロ視点は、チェスター・バーナードの、組織はコミュニケーションのシステムであるという関係論的な視座を下敷きにしています。個の満足と組織の成果が両立しないと永続的な発展はない、「One for all, all for one(1人はみんなのために、みんなは1人のために)」というバーナードの考え方は、学生時代にラグビーをやっていた私にとって、からだに染みついて実感できる考え方でもあったからです。
  

「問題は間 <あいだ> にあり」 
めざせ、血液サラサラ状態!

 組織においてコミュニケーションが良好な状態とは、人間のからだにたとえれば、血液がサラサラ流れている状態です。

 「打てば響く組織」というのを、松下幸之助さんは松下電器では社員が100名くらいのときだったとおっしゃっていたそうですが、おそらくそのくらいの規模のときは上下、左右、斜め、社外との関係も含めて、コミュニケーションがたいへん円滑に取れていたのだと思います。

 

☆本サイトの記事は、雑誌掲載記事の冒頭部分を抜粋したものです。
以下、「昆虫型でいきたいか、脊椎動物型でいきたいか」 「運動神経のよい組織の条件」「経営者は不感症になってはいけない」 などの内容が続きます。記事全文につきましては、下記本誌をご覧ください。 (WEB編集担当)


<掲載誌紹介>

 『PHPビジネスレビュー松下幸之助塾』
 2013年9・10月号Vol.13

<読みどころ>
9・10月号の特集は「『打てば響く組織』への挑戦」。 「打てば響く」という句は、もともと太鼓や鉦(かね)をたたけばすぐに音がするように、反応のよい利発な“人”を形容する表現であったが、今では組織の評価を示す際にも一般的に使われる。風通しやコミュニケーションがよく、目標達成に向け統制された行動が取れている組織が、「打てば響く」組織と言えよう。
 本特集では、(1)モチベーション研究のスペシャリスト、(2)弱小高校サッカー部をインターハイ優勝校に育て上げた公立高校の監督、(3)徹底したガラス張り経営で業績を伸ばす経営者――など、さまざまな分野で実績を上げている組織づくりのプロから、そのヒントを学ぶ。
 そのほか、タイで出家した日本人僧が綴る「ほほえみの国 タイから」が連載開始!ぜひお読みいただきたい。

iyashi

著者紹介

小笹芳央(おざさ・よしひさ)

リンクアンドモチベーション会長

1961年大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルートに入社し、人事部で採用活動などに携わる。組織人事コンサルティング室長、ワークス研究所主幹研究員などを経て独立。2000年に株式会社リンクアンドモチベーションを設立し社長に就任。’13年から現職。モチベーションエンジニアリングという同社の基幹技術を確立し、幅広い業界からその実効性が支持されている。
著書に、『1日3分で人生が変わるセルフ・モチベーション』『変化を生み出すモチベーション・マネジメント』(以上、PHPビジネス新書)、『会社の品格』(幻冬舎新書)、『お金の話にきれいごとはいらない』(三笠書房)など多数。

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