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「世界遺産」と「大河ドラマ」は地方創生の起爆剤になるのか?

2016年10月02日 公開

牧野知弘

PHPビジネス新書『老いる東京、甦る地方』より

世界遺産登録の意図は観光とは直結しない

「世界遺産」という看板をもらって掲げてみたものの、その効果はわずか1年から2年、移り気な観光客の足の速さに多くの地方が戸惑いを見せています。いったいどこに原因があるのでしょうか。

世界遺産については、日本でも一定のマニアがいます。この人たちは新しい世界遺産登録が発表されると、寸暇を惜しんで遺産を見に出かけます。観光地からいえば、お得意様です。しかし、この人たちの多くは、どちらかといえば遺産に対して足跡を残すことに興味がある、「切手収集家」のような存在です。こうした人たちはリピーターとしてあまり期待はできません。

世界遺産といえども、遺産の持っている文化的価値だけのアピールでは、実は「観光的要素」としては決して十分なものとはいえないのです。現代の旅人は、ただ与えられたものを「眺める」だけでは飽き足りなくなっているからです。

自分が探索人となる、ナビゲーターになったつもりで旅をするのには、文化的価値のみならず、そこに感動や発見が実感できるようなプラスアルファの要素が必要なのです。

もちろん、世界遺産は「観光客の誘致」を目標に登録されているわけではないという視点も忘れてはなりません。世界遺産は遺産の「保護」を目的としているため、必ずしも見学にやってくる観光客の「趣味・趣向」に対応した審査をやっていないからです。

ところが世界遺産登録が「観光の呼び水」とだけ考えて、登録さえされれば、大勢のお客様が訪れて観光収入で大いに潤うと期待しすぎるきらいもあるようです。

せっかくの遺産登録を観光として利用するには、遺産の「売り出し方」が大事です。ただ、その場にあるからといって、みんなが喜んでやってくるのは、登録されたのちのわずかな期間だけです。この遺産のみならず、遺産のあった背景、歴史や文化とともに、「今、旅行しても楽しく、わくわくどきどきする」街の演出を行わなければならないのです。

ある世界遺産を見学して帰ってきた友人の言葉。

「う〜ん、なんだかな。人はいっぱい来てたけど、いったい何が目的なんだかよくわからないんだよね。街もつまんないし。なんにもないんだよ。え? ああ、もう二度と行くことはないな」

この言葉に世界遺産の、観光地としての活用の難しさが体現されています。

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著者紹介

牧野知弘(まきの・ともひろ)

オラガ総研株式会社代表取締役社長

1983年、東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループ、三井不動産を経て、2006年、J‐REIT(不動産投資信託)の日本コマーシャル投資法人を上場。現在はオラガ総研株式会社代表取締役としてホテルや不動産のアドバイザリーのほか、市場調査や執筆・講演活動を展開。主な著書に『空き家問題』『インバウンドの衝撃』(以上、祥伝社新書)、2020年マンション大崩壊』(文春新書)、『不動産投資の超基本』(東洋経済新報社)など多数。

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