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アメリカも日本も「保守」が負けっぱなし?

2017年09月30日 公開

【特別対談】倉山満・ケント・ギルバート・ 江崎道朗

【特別対談】倉山満・ケント・ギルバート・ 江崎道朗

アメリカ人にも蔓延しつつある過剰な自虐史観

倉山 江崎さんは近年のアメリカでは「ホワイト・ギルト(白人の罪)」とも呼ばれる「アメリカ版白人自虐史観」が広まりつつあると指摘してこられました。ケントさんも、そのような江崎さんの言論について、ご著書『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』(PHP新書)の中で紹介しておられます。トランプの今回の問いは、まさにこのホワイト・ギルトに対する疑問だともいえるでしょう。なぜならこれが行き過ぎると、アメリカの建国の精神すらも否定されかねないからです。

江崎 インディアンを殺害し、黒人を奴隷とした白人たちとその文化、特にキリスト教には罪があるのだから、白人たちの文化やキリスト教を排撃しなければならないとする「ホワイト・ギルト」をとことん徹底していけば、アメリカという国は崩壊します。そしてホワイト・ギルトを広めている人たちは、まさにそれを目的としている。

倉山 日本では戦後、神話についての教育がなくなり、たとえば初代天皇について知る人が極端に少なくなりました。それに伴い、愛国心を持つ人もいなくなった。これと同じことがアメリカでも近年起きつつある。アメリカでも保守が少数派で負けっぱなしということですね。

江崎 テレビの世界では完全に負けっぱなしですね。一般の民衆は、常識を持っていて、メディアに対して疑問を持ちながら見ている人もいっぱいいるのですが。

ケント 地域差もありますね。アメリカの場合、メディアが集中しているのはニューヨークとカリフォルニアという海岸線の地域ですが、内陸部の人たちは、海岸線の人たちが嫌いなんです。出身地域が違うと、友だちになれるかどうかも怪しい(笑)。内陸部の人たちからすれば、海岸線の人たちはエリート意識をふりまいているように見えてしまうのですね。

江崎 たしかに、現実にはエスタブリッシュメントといわれる人たちが国を動かしていて、彼らを「鼻持ちならないエリート主義の人たち」とする見方があることも、たしかです。しかし、「それはアメリカの政治の伝統とは違う」という考え方も色濃くある。「We, the people of the United States(われら合衆国民)」の考え方で、われわれ民衆が政治を決めていくのが本来のアメリカ政治の伝統だという思想です。トランプは、それをなんとか取り戻そうとしている。なのに、メディアはトランプに「レイシスト」というレッテル貼りをして叩きのめし、日本のメディアも残念ながらそれを信じて、トランプ批判をしている。

ケント 前回の大統領選挙が何だったかというと、「犯罪者を選ぶのか、嫌われ者を選ぶのか」ということでした(笑)。

倉山 「ヒラリーか、トランプか」ということですね(笑)。

ケント 犯罪者というと強すぎる言い方ですが、実際に、ヒラリーに対してはさまざまな疑惑があって、連邦捜査局(FBI)が捜査しているわけです。民主党が腐敗しきっていて、大統領選挙で民主党のサンダースを応援した支持者たちも、それに対して不満を持っていました。私が思うに、アメリカのオバマ政権の8年間で、あまりにもリベラル側が既得権益を手にしすぎました。「ポリティカル・コレクトネス」という言葉も、広く一般に行きわたりました。

江崎 「メリークリスマス」といってはいけなくて、「ハッピーホリデー」と言い換えなさいというのも、その一つですね。

ケント そうです。たとえば、マーク・トウェインの『ハックルベリイ・フィンの冒険』も、中に黒人奴隷が自由州に行くのを手助けするシーンがあって、そこに差別用語が使われているので、アメリカ国内では気軽に読めなくなっています。さすがにマーク・トウェインはアメリカを代表する作家ですから大学では教えるわけですが、その講義を聴いて気分が悪くなるという学生のために、特別の休憩室まで設けられる。「なんだそれは?」という話です。このように文化が破壊されていることを、われわれ一般のアメリカ人は快く思っていません。

江崎 アメリカにおける「ポリティカル・コレクトネス」は日本の比ではなくて、日本のほうがまだマシだといえます。

ケント トランプは、「イスラム教の国の人たちの移民を認めない」と選挙中に主張していて、そのことでも「レイシスト」と批判されていました。それは違うと思いますけれど。

江崎 審査体制が不十分で、テロの犯罪予備軍とそうでない人をきちんと分けなくてはいけないが、現在は入国管理体制がしっかりしていないので、入国を一時的に止めて体制を整備するのだとトランプは一生懸命いっているのに、メディアは「イスラム教を差別している」という話ばかりする。

ケント そうです。トランプの入国禁止令については、トランプは最高裁で勝ちましたけれどもね。
 もう一つ、僕が問題だと思っているのは、「サンクチュアリ・シティ」です。つまり不法移民を保護する都市のことです。本当は「不法移民」がいることを連邦政府に報告しなければいけないのに、しない。報告すると強制送還になるからですが、しかし、「連邦法を守らなくてもいいんだ」というのは身勝手な考え方です。「国民が議会で決めたこと、大統領が決めたことはどうでもいい。自分たちがやりたいようにやるんだ」という考え方が許されるでしょうか。
 

日本とアメリカの「愛国心」?

倉山 アメリカは小学校の頃からしっかりとした愛国教育を行なっているといわれていましたが、最近ではそのアメリカでさえも怪しいところがある。アメリカ人の愛国心の実情はどうなっているのでしょうか。

ケント 今、とある黒人スポーツ選手が国歌斉唱の際に行なったパフォーマンスが非常に話題を呼んでいます。通常、国歌斉唱の際には胸に手を当てて歌うのが通例です。しかし、その選手は国歌が流れている間、その姿勢を取らずに地面にひざまずき、お祈りをするパフォーマンスを行なったのです。これは、「いまだに黒人差別の残っているアメリカには忠誠を誓えない」というメッセージでした。しかし、当然ながらこれは多くの人たちから批判されました。国旗や国歌に対する態度というのは、やはり時々問題になりますね。

江崎 ケントさんがお書きになった『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』は、そういったアメリカ国内の事情も解説してくださっているので非常にありがたいです。われわれ日本人も同盟国として、アメリカのそういった事情について正しく知る必要があります。しかも、今回ケントさんが解説してくださったアメリカにおける全体主義的なリベラルや左翼のあり方は、たとえば日本国内のSEALDsなどの左翼のあり方と明らかに連動している。そういった全体の構造を掴まなくてはいけません。

倉山 ケントさんの『ついに「愛国心」のタブーから解き放たれる日本人』は、発売即重版で9万部突破という、すごい売行きを見せていますね。

江崎 この本の中でケントさんは、民のかまどや十七条の憲法、五箇条の御誓文など、わが国の政治的な素晴らしい伝統についても書いていらっしゃいます。ケントさんのような方にご指摘いただくことは、非常に大きな価値があると感じました。
 特に、「Grass Roots Patriots(草の根の愛国者たち)」の精神が、明治維新の際の日本の「草莽(そうもう)の志士」たちの精神と非常に共通している部分を持ち合わせているのではないかという指摘は、素晴らしいですね。「Grass Roots Patriots」とは「普段は在野にあって市民生活を営んでいるが、いったん国家危急のときには、国家への忠誠心に基づいて国を守るための行動に出る人びと」の意味で、アメリカ建国の際に必要不可欠であったものです。日本とアメリカの伝統には実は近いところがあるのだということは、日米両方のエリートが見落とし、誤解している部分です。それをご指摘いただいたことは、非常に意義があります。

倉山 「草莽」というと、日本では吉田松陰に象徴されますね。「在野の志ある人びとが立ち上がるのだ」という精神ですが、これがアメリカではワシントンに象徴される「Grass Roots Patriots」につながるのではないかというご指摘は、たしかにいわれてみればそのとおりです。
 歴史から学ぶということでいえば、江崎道朗先生の『コミンテルンの謀略と日本の敗戦』(PHP新書)も、発売から数日で品薄になってしまうほどに売れて、ネットの書店でもコンスタントに全体のランキングで100位以内に入っていますね。あっというまに重版を重ねていますが、416ページの本がこれだけの勢いで売れるというのは驚くべきことです。
 真実を知りたい、隠された歴史を知りたい、正しい歴史について知りたいという読者が増えてきているのでしょう。素晴らしいことです。

ケント いいことをいってくださいますね(笑)。

チャンネルくらら(2017年8月27日配信)より
https://www.youtube.com/watch?v=6fTiShVMko4

iyashi

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