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「一斉休校」よりも「大人が外出自粛」すべき?…専門家の試算結果

大日康史,菅原民枝

2020年03月19日 公開 2020年03月19日 更新

 

「休校」の効果は意外と薄い?

休校の範囲として、保育園、幼稚園から大学までが休止した状態を想定しましょう。熱などで子供たちが集まってはいけないので、塾なども同時に休止されたとします。

他方で、子供が小学生低学年以下であれば 1人で自宅にとどめることもできないので、少なくとも保護者1名が付き添って自宅待機すると想定します。それによって就業者の一部が事実上外出自粛になるわけです。その割合は地域によって異なりますが、約8%程度と推定されています。

休校の開始のタイミングを想定するにあたり、ここでは以下のように考えます。

初発例(最初の患者)に症状が出て、医療機関に受診するのが感染5日目の午後とした場合、検査を経て感染が確認されるのは感染6日目です。直ちに国民に公表されるとしても、最速で意思決定がなされ対策が実行に移されるのは、感染7日目となります。

以上を踏まえ、初発例を確定診断した翌日、対策が実施される感染後第7日目から一斉に休校が実施されたとしましょう。この場合、ピーク時で約10%は有症者を減らすことができると試算されています。

10%と聞いて、意外に効果が薄いと感じた方もおられるのはないでしょうか。季節性インフルエンザに対して毎年のように学級閉鎖、休校が行われているので、さぞかしそれが有効であるという印象を無意識のうちに我々は持っているのかもしれません。

休校は学校内での感染を防ぐためのものです。その対象となる年齢階層での感染拡大スピードを抑制する上で、効果的なのは間違いありません。ですので、パンデミック初期の立ち上がりを抑える効果は期待できます。

とはいえ、各家庭には就業者もいますし、外出自粛をしていない家族が必ずいます。そこから家庭にウイルスが持って帰られた場合、家庭での感染を防ぐことは休校では不可能です。休校で自宅待機している年齢階層にもいずれ感染する可能性があり、その意味では流行期間の最後まで感染を防ぐことは期待できません。

そう考えると、休校という対策に期待できるのは、パンデミック初期の立ち上がりを抑え、ピーク時の感染者を抑えるまでで、最終的な有症者数を抑えることは理論的に難しいのです。

パンデミックの際には、流行初期、つまり可能であれば感染拡大が始まる前から休校にする必要があり、それによって先に示したような効果が期待されます。

 

「休校だけ」より効果大 就業者の「外出自粛」

外出自粛として、休校に加え就業者も予防的にすべての国民に対して自宅待機が勧告された状況を想定しましょう。しかしながら外出の自粛は強制ではないので、勧告にしたがわず日常生活を継続する人ももちろん出てきます。

ここでは想定として、電車・バスを使う通勤・通学の40%の人が、電車・バスを使わない通勤・通学の80%の人が外出自粛を実現した状況について検討しましょう。後者の方がはるかに高いのは、小中学校への通学は典型的には電車・バスを使わず、また休校になった場合には自宅待機に協力的であると予想されるためです。

40%の同じ人が外出自粛を続けるというよりは、交代で40%の人が外出自粛をしている状態で、社会全体としては60%の人が活動をしているという状態です。こうした対策が、先のシナリオに即して言えば、初発例を確定診断した翌日、つまり初発例感染後第7日目から実施されたとしましょう。

首都圏を例にすると、罹患率は対策を何も実施していない場合の50%から20%まで減らすことができると試算されています。実に国民の 30%が感染を免れ、罹患者(有症者)数は半分以下になる計算です。

さらに、外出自粛の勧告に協力的であれば、たとえば電車・バスを使う通勤・通学の60%、電車・バスを使わない通勤・通学の90%が勧告にしたがい自宅にとどまれば、罹患率は10%まで下がります。罹患率 10%と言えば、季節性インフルエンザと同じ水準なので、医療機関に患者が殺到することでの破たんは回避できるでしょう。

逆に外出自粛の協力が得られず、たとえば電車・バスを使う通勤・通学の20%、電車・バスを使わない通勤通学70%のみが勧告にしたがい自宅にとどまった場合でも、罹患率は30%まで低下すると予想されます。休校だけの対策と比べると大きな効果になります。

これは「家庭」という感染の場を考えると、休校では社会との接点が学校という経路では閉ざされるもののそれ以外には開いていたのに対して、外出自粛はすべての社会との接点を閉じることを意味するため、ウイルスの家庭への侵入を防ぐことができるからだと考えられます。

患者数が減少すると当然死亡者数も減少します。患者の入院のための医療施設のベッド、人工呼吸器などの医療機器や、そこで働く医療従事者を含めた医療資源の枯渇を免れれば、患者数の減少幅以上に、死亡者数を減らすことも可能かもしれません。

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「パンデミックが起きてから考える」では遅い

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