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神田昌典×竹田恒泰<特別対談>今、必要な勉強とは〔1〕

2015年04月30日 公開
2023年07月03日 更新

神田昌典(経営・マーケティングコンサルタント),竹田恒泰(作家/慶應義塾大学講師)

 

IT化が進むほど「本」の価値はむしろ高まる

先が見えない時代の中、何を読み、何を学ぶべきか、悩む人も多いだろう。
そこで今回、2人の碩学に「本と知的生産」というテーマにて、対談をしてもらった。
自らのルーツでもある皇室の研究をベースに、さまざまな問題に対して鋭い意見を発し続ける竹田恒泰氏。
米国でMBAを取得後、数多くの実践により独自のマーケティング理論を打ち立て、国内外で活躍する神田昌典氏。
一見、好対照な2人だが、意外なほど多くの共通点もあった。
そんな2人が「知へのアプローチ」を縦横無尽に語り尽くす!

 

「本」の持つ意味が大きくなっている

――多くのベストセラーを出し続けている両氏。対談のスタートは、「本」についてのお話からお願いした。

神田 この対談に先だって竹田さんの本を何冊も読ませていただきましたが、驚いたことの1つが、巻末に載っている参考文献の多さです。しかも、なかなか手に入りにくい本ばかり。1冊の本を書くために、いったいどれくらい本を読んでいるのですか?

竹田 たとえば、『日本はなぜ世界で一番人気があるのか』(PHP新書)という本は、月刊誌『Voice』の連載をまとめたものですが、連載1回分のために毎月100冊くらいは本を買っていました。この本を書き終わった後、蔵書が1000冊近く増えていて自分でもびっくりしました。

神田 1000冊! しかも図書館などで借りるのではなく、買うのですか?

竹田 もちろん、現在入手不可能なものは借りるしかありませんが、借りる冊数には限界もありますし、付箋をつけたり書き込んだりもできないので、やはり関連する本は片っ端から買いますね。

神田 つまり、1000冊の本を読み込んだものが、1冊に詰め込まれている。

竹田 そういう意味では、1000冊の本を解析したものが800円弱で買えるのですから、読者はお得ですよ(笑)。

神田 実は私が最初にこの質問をさせていただいたのは、このような竹田さんの本の読み方、そして知的生産の方法が、この21世紀、2010年代のビジネスマンにとって非常に重要になってくると思うからです。
 というのも、インターネットの発達により、蛇口をひねれば水が出てくるように、検索エンジンを使えば情報がいくらでも手に入るようになりました。そうなると、情報を持っているだけでは、何も価値が生まれない。しかも、価値のある情報とそうでない情報が渾然一体となってしまっている。だからこそ、「多くの情報がある中で、その本質は何か」を突き詰めることが、価値になると思うのです。

竹田 確かに情報化が進んだことで、個人がツイッターやブログ、フェイスブックなどに何気なく書き込んだことまで、世界中を駆け巡るようになっていますよね。

神田 少し前まではそうした「体験知の共有」も大きな意味を持っていたと思います。たとえばベストセラー作家の勝間和代さんは、ほぼ参考文献を読むことなく、すべてご自身の経験の中から得られたことを本にしていました。それはもちろん重要なことですが、今ではいかに多くの情報を手に入れ、その本質を読み取り、発信していくかがより重要になっている。

竹田 なるほど。その意味で、近著『日本人が一生使える勉強法』(PHP新書)で書いたように、私は本の価値が相対的に高まっていると思います。というのは、思いつきで発信できてしまうブログと違い、1冊の本には長い時間と多くの人の手がかかっていますよね。たとえば「2ちゃんねる」の書き込みで真実を判断するのは難しいですが、出版社が手をかけて出した書籍に書かれていることは、よほどのことがない限り正しいと考えられる。少なくともネット上の情報よりは質が高いと言えるはずです。
 情報化社会が進むと活字はなくなると言う人がいますが、私はむしろ、情報化社会が進むほど活字の価値は高まってくると思いますね。

神田 同感です。これだけネット化が進んでいるのに、本の発刊点数はあまり減っていないことが、そのことを端的に表していると思います。数多くある情報の「本質」をつかむためには、本は今まで以上に重要なツールになるはずです。

竹田 私も著者として、1冊の本にどれだけの労力がかかるかを知っていますから、本を買えば買うほど、読めば読むほど、すごく得をしているなという気になりますね。

神田 また、ネット情報のもう1つの問題点は、その情報に「ラベル」が貼られてしまうこと。たとえば竹田さんのことをネットで調べると、「右翼」「反中反韓」などというラベルが貼られた情報ばかりが出てくる。あるいは、「AKB」とか(笑)。こうした断片的な情報にばかり接している人は、竹田さんの本を1冊も読んでいないにもかかわらず、竹田さんのことをわかったような気になってしまうわけです。それは非常に危険ですよね。

竹田 そうなんです。この前も韓国映画の試写会で「素晴らしい!」とコメントしたら、「裏切り者!」とネット上で炎上してしまいました(笑)。

神田 私もネットで竹田さんの発言を断片的に読んだ際には、反中反韓の急先鋒のようなイメージでした(笑)。こうして本を読み、直接会ってお話をうかがえば、全然違うことがすぐにわかるのですが。

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竹田流「読書術」と、神田流「読書会」 >

著者紹介

神田昌典(かんだ・まさのり)

経営・マーケティングコンサルタント、作家

上智大学外国語学部卒。ニューヨーク大学経済学修士(MA)、ペンシルバニア大学ウォートンスクール経営学修士(MBA)取得。大学3年次に外交官試験合格、4年次より外務省経済局に勤務。その後、米国家電メーカー日本代表を経て経営コンサルタントとして独立。多数の成功企業やベストセラー作家を育成し、総合ビジネス誌では「日本のトップ
マーケター」に選出。2012年、大手ネット書店の年間ビジネス書売上ランキング第1位。ビジネス分野のみならず、教育界でも精力的な活動を行っている。
主な著書に『2022――これから10年、活躍できる人の条件』(PHPビジネス新書)、『ストーリー思考』(ダイヤモンド社)、『成功者の告白』(講談社)、『非常識な成功法則』(フォレスト出版)など多数。
アルマ・クリエイション株式会社代表取締役。一般社団法人Read For Action代表理事。

竹田恒泰(たけだ・つねやす)

作家

昭和50年(1975年)旧皇族・竹田家に生まれる。明治天皇の玄孫に当たる。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。専門は憲法学・史学。作家。平成18年(2006年)に著書『語られなかった皇族たちの真実』(小学館)で第15回山本七平賞を受賞。最新刊『日本人が一生使える勉強法』を始め、著書多数。

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