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「見栄」を手放せば何事にも動じない心が手に入る!

2015年10月09日 公開
2016年01月09日 更新

蛭子能収(漫画家/タレント)

 

結構ひどい仕事であっても「断わらない」

 仕事のほうが大事とはいえ、他人に嫌われたくないというのは、蛭子氏もいつも思っていることだ。そのためにしていることは至ってシンプル。「笑顔でいること」と「断わらないこと」の2つに尽きると蛭子氏は言う。

「いつもニッコリしていれば、嫌われる心配はまずないと思っています。それから、頼まれごとにもできるだけ応えたいですね。単に断わるのが下手なだけということもあるかもしれませんが(笑)。仕事も、パラシュート降下みたいに怪我や命の危険を伴うようなものでない限りは、結構ひどい扱いをされたこともありますけど、どんなものでも引き受けてきました」

 スタッフや共演者とは、ある程度の関係を築ければ、必要以上に仲良くすることはないと考えている。

「共演者に自分から話しかけることはまずありません。向こうから話しかけられれば、もちろん話をしますよ。

 これは、誰か特定の人と仲良くなることを避けたいと思っているからなんです。『Aさんとはよく話すのに、Bさんとはあまり話さない』という不均衡や、固定された関係ができてしまうことが嫌なんですね。それくらいなら、1人でいたほうがいい。1人を寂しいと感じることもありません」

 このように話を聞いてくると、どのような環境も自然に受け入れ、自分らしく生きる蛭子氏の自由さは、決して考えなしのものではなく、むしろ明確な考え方に裏打ちされているものであることに気づかされる。

「そう、意外と計算しているんです(笑)。人間関係もそうですが、お金や生活設計に関しては、さらに緻密に先を読んでいます」

 

仕事なんて、選ばなければいくらでもある!

 人によっては、先々のことをあれこれ考えると、かえって不安になるかもしれない。蛭子氏がそうならないのは、「何をしてでも生きていける」という自信が根底にあるからだろう。

「僕は今年で68歳になりますが、もしタレントとしても漫画家としても食べていけなくなったとしたら、別の仕事をすればいいと思っています。また配達業に戻ってもいいし、肉体労働でもいい。

 仕事なんて、選ばなければいくらでもあるじゃないですか。将来、食べていけるか不安だという人は、見栄があるんじゃないかな。僕にはないんでしょうね。

 昔から、どんな仕事をするか考えるとき、内容にこだわることはありませんでした。仕事はお金を得る手段ですから、『いくらもらえるか』のほうが大事。見栄を捨てれば、生きる方法はいくらでもある。少し見方を変えれば、人生で思い悩むことは少なくなると思いますよ」

 

《取材・構成:林 加愛 写真撮影:永井 浩》
《『THE21』2015年10月号より》

著者紹介

蛭子能収(えびす・よしかず)

漫画家/タレント

1947 年、長崎県生まれ。長崎商業高校卒業後、看板店勤務を経て70 年に上京。ちり紙交換、ダスキンの配達などの職業を経て漫画家となる。その後、俳優やタレントとしてバラエティ番組やテレビドラマ、映画にも出演。『蛭子能収コレクション』(マガジン・ファイブ)をはじめとする漫画作品の他、ベストセラーとなったエッセイ『ひとりぼっちを笑うな』(角川新書)などの著書がある。

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