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グローバルレベルのスピードは「完璧を求めすぎない」ことから生まれる

2016年01月31日 公開

梅澤高明(A.T.カーニー日本法人会長)

世界で活躍するコンサルタントの仕事術とは?

 

 世界のスピードについていけない──日本人の働き方がそんな評価を受けることも多い。私たちの仕事は本当に世界標準に比べて遅いのか? どうすれば追いつけるのか? 長年、グローバルエリートとともに仕事をしてきた梅澤高明氏にうかがった。

 

粗くてもいい仕事に不要な時間をかけない

 ホワイトカラーに限って言うなら、確かに日本のビジネスマンの仕事のスピードはやや遅い、と梅澤高明氏は言う。その「遅さ」には、2つの要因があるようだ。

「1つは、会社や組織としての意思決定のプロセスがまどろっこしいということ。決められないからスピードが遅い。

 もう1つは、個人としてワーク・ライフ・バランスに気を遣っている人がまだ多くないこと。お父さんが夕食時に帰らなくても当然とされ、男性が子育てに参加しなくても責められない、というように、そもそもワーク・ライフ・バランスを取るべきだという社会的なプレッシャーが弱い。だから、ダラダラ仕事をしてしまう。その2つの『合わせ技』で、仕事が遅くなっているのではないでしょうか」

 さらに梅澤氏は、日米の仕事のスタイルのこんな違いを指摘する。

「組織の中堅層で比べると、仕事のやり方は米国のほうが総じて粗いですよ(笑)。それは、優先順位をつけて、効率重視で仕事をしているとも言える。だから、さっさと切り上げることができる。日本人は『このレベルでは見せたくない』とさらに2時間くらい頑張ってしまうから、帰りが遅くなるわけです。

 たいていの仕事は多少粗くても通用します。最終的なアウトプットが必要な水準をクリアしていれば、中間のアウトプット、たとえば、社内の人しか見ない文書は、粗くたってかまわないはずです。すべてに完璧を求めてしまいがちな日本人の国民性が、仕事の遅さ、作業の長時間化につながっているのでしょうね」

 

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アウトプットイメージがないと効率が悪くなる >

著者紹介

梅澤高明(うめざわ・たかあき)

A.T.カーニー日本法人会長

1962年生まれ。東京大学法学部卒業。マサチューセッツ工科大学経営学修士。日産自動車〔株〕を経て、A.T.カーニーに入社。日米で20年にわたり、戦略・イノベーション・マーケティング・組織関連のコンサルティングを実施。『ワールドビジネスサテライト』(テレビ東京系)コメンテーター。デザイン、イノベーション、観光・ナイトタイムエコノミーなどのテーマで政府委員会の委員を務める。著書に『グローバルエリートの仕事作法』(プレジデント社)など。

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