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「やらないこと」を決めれば、英語は最速で習得できる

2016年01月12日 公開

三木雄信(ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト社長)

ストレスゼロで「1年」で身につける英語

最近、ある英語本が4万部を超えるベストセラーとなっている。ソフトバンクで孫正義社長の秘書を務めた三木雄信氏が書いた『「英語は1年」でマスターできる』だ。「英語を1年で」というと、さぞかしハードな勉強法だと思われそうだが、三木氏は「むしろこのメソッドは、人間の脳の仕組みに基づいたストレスフリーな方法なのです」と語る。その理由とは?

 

「やらないことを決める」ことが、学習のスタート

今では当たり前のように海外の企業と共同で商品開発をしたり、英語で講演や取材対応をしている私ですが、ソフトバンクに入社し孫正義社長の秘書として仕事を始めた時点では、英語はまったく話せませんでした。それなのに、「日常会話くらいはできる」と言ってしまったがために、孫社長の海外出張に同行。そこで英語がわからず冷や汗をかき、「なんとかしなくては」と一念発起したのです。

ただ、なるべく早く身につけねばならない一方、仕事は激務でとにかく時間がない。そこでなるべく無駄なく、効率良く英語を習得するにはどうしたらいいかを突き詰めて考えました。その結果、半年後にはほぼ聴き取れ、一年後にはまったく問題なく英語を使うことができるようになったのです。

その方法を一言で言えば、「ムダを極力排除し、仕事で使う必要最低限の英語だけを身につける」というもの。単語帳やフレーズ集は使わない、文法も覚えない。発音は諦める。教材は仕事内容に即したもの一冊に絞り、それをひたすら繰り返す。これは、世間一般の「TOEIC対策」と真逆の方法ですが、圧倒的に早く身につくのです。

その秘密は、人間の脳の仕組みにあります。脳内には、今まで覚えたことがすべて保管されていると言われます。ただ、それだと脳がパンクしてしまう。そこで普段は、当面不必要なことは忘れていて、必要なものはそのつど「海馬」から呼び出しがかかる。その呼び出しが繰り返されるうちに、すぐに引き出せる記憶となる。これが、「覚えている」状態です。

そう考えたとき、「必要なものだけ」を頭の中に入れ、それを「何度も繰り返し」学習することが、一番自然でストレスフリーな、ナチュラルな学習法ということになるのです。

一方、TOEICの頻出単語集やフレーズ集をひたすら覚えるという勉強法は、「興味のないもの」を、「広く、浅く繰り返す」ということであり、むしろ記憶を妨げてしまっているのです。

 

「情報過多」なほうが覚えられる!?

ここで私自身が実践し、お勧めもしているのが、「映画DVDを使った学習」です。好きな映画、それも自分の仕事や目標に関連する映画を選び、そのセリフを読みながら何度も聴き、最後は暗誦するくらいまでにマスターするという学習法です。私が勉強に使ったのは映画『ウォール街』。仕事上の言い回しが多数出てきて、当時、企業の買収案件に携わることが多かった私の仕事内容に近かったためです。

なぜ映画を勧めるかというと、映画には情報が「過多」だからです。セリフだけではなく映像や音楽、さらにはそのシーンを見たときの自分の感情までが、すべて含まれているのです。

みなさんも、若い頃に流行った音楽を耳にして、つい当時のことを思い出したりすることがあるはずです。これは、音楽が記憶を引き出すフックとなり、脳内から記憶を引き出してくれたから。このように、フックが多ければ多いほど、「あのとき、あの場面であの人が言った言葉だ」と、記憶を引き出しやすくなるのです。

そう考えると、たとえば「音声を聴き流すだけ」という教材では、なかなか思うように習得できないことがわかるでしょう。もともと頭に入っていない内容を何度繰り返しても、記憶と結びつくことはないからです。

 

単語をこれ以上増やす必要はない

単語に関しては、そもそも増やす必要はありません。学生時代に英語を勉強した人なら、基本的な三千の単語、いわゆる「OXFORD 3000」くらいは、頭に入っているはず。これで十分です。孫社長もいつも平易な単語ばかりを使っていますが、あるとき分析してみたところ、実に使用する語の93%以上が、この3000語の中に入っていました。

単語を増やしたいなら、むしろ自分の仕事で使う言葉を重点的に覚えるべきです。それはまさに「必要」で、「何度も繰り返される」単語なので、自然と頭に入ってきます。

これもまた、興味があるもの=関連するものだからこそ、覚えられるのです。よく、歳を取ると記憶力が落ちると言う人がいますが、こうした単語はむしろ、ビジネス経験を積んだからこそ記憶しやすいのです。

ついでに言ってしまうと、単語集だけでなく「フレーズ集」を使った学習も無駄が多いのでやめたほうがいいでしょう。こうした本にはいくつもの言い回しが載っていますが、実際にはそのうち一つの言い回しさえ知っていれば、ビジネスでは十分。これも孫社長の例で言えば、「私が言ったように」という表現ではほぼ100%「As I said」という表現を使います。それで十分事足りるのですから、他のフレーズを覚える必要はないのです。

 

残り「1000時間」をどう確保するか?

アメリカ国務省付属の外国語研修機関の調査によれば、英語話者が日本語を習得するには、同系統の欧州の言語に比べ圧倒的に多くの時間が必要で、実に2200時間。日本人が英語を習得するにも、同レベルの時間がかかると考えられます。

これだけ聞くと大変そうですが、我々は学校教育ですでに、1200時間ほど学習してきており、「読む」「話す」についてはほぼ問題ないはずです。

問題は「聴く」です。これについては、残りの1000時間をなんとか工面するしかない。ただこれも、1日3時間としたら1年で達成できます。大変そうですが、1年だけなら続けられると思いませんか。

ただ、それでも学習のモチベーションが続かないことはあるはず。そんなときは、「英語を勉強することで、どれだけ楽しい未来が開けているか」を改めて考えてみてはどうでしょうか。

私にも、とくに印象に残っている体験があります。以前のソフトバンクでは、コールセンターに電話がつながらないクレームが頻発していました。解決策を探ったところ、あるアメリカの会社がコールセンター業務を効率化するシステムを持っていることがわかった。早速私が行って交渉し、そのシステムを導入。クレームが激減しただけでなく、ユニークな成功例ということで評価され、数百人規模のカンファレンスにて英語で発表することになったのです。世界各国の同業者と英語で話をしながら、「英語ができると、こんなに世界が広がるのか」ということを痛感した体験でした。

私は、日本人はもっと自信を持っていいと思います。日本人のビジネスの知識やノウハウのレベルはかなり高く、世界中で評価され得るものです。なのに、「英語がしゃべれない」ばかりに、それを発信できず、自分を過小評価してしまっている。

この「ストレスフリー」の英語学習法で英語を最速で身につけ、ぜひ新しい人生を切り拓いていってほしいと思います。

iyashi

著者紹介

三木雄信(みき・たけのぶ)

ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト〔株〕代表取締役社長

1972年、福岡県生まれ。東京大学経済学部卒業。三菱地所〔株〕を経て。ソフトバンク〔株〕入社。27歳で社長室長に就任。孫正義氏の側で、「ナスダック・ジャパン市場創設」「Υahoo!BBプロジェクト」をはじめ、取多くのプロジェクトを担当。現在は自社経営のかたわら、東証一部上場企業など複数の取締役・監査役を兼任。内閣府の原子力災容対策本部で廃炉・汚染水対策チームプロジェクトマネジメント・アドバイザーを務める。近著に「海外経験ゼロでも仕事が忙しくても「英語は1年」でマスターできる」(PHP研究所)がある。

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