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「プログラミング必須時代」の人材育成を担う

2016年04月25日 公開

真子就有(div代表)

【連載 経営トップの挑戦】 第6回
 〔株〕div代表取締役 真子就有

「これからのビジネスマンにはプログラミングのスキルが必須」という認識が広まりつつある。新しいウェブサービスやアプリをリリースすることで急成長している企業が増えているからだ。「プログラミングは下請けに任せればいい」という時代から、「プログラミングがわからなければ経営ができない」時代へと変化している。しかし、ほとんどのビジネスマンはプログラミングを学んだことがなく、独学しようとして挫折する人も多いのが現状だ。そこに着目したビジネスを展開しているのがdiv。創業社長の真子就有氏にお話をうかがった。

 

「手を動かして、わからなければ聞く」が最高の学習環境

 ――御社は、TECH::CAMPという、短期間でプログラミングを身につけるためのスクールを、教室とオンラインとで運営されています。そもそも、真子代表がプログラミングというものと出会われたのは、どういう経緯だったのですか?

真子 大学生のとき、漠然と「大きなことがしたいな」と思っていたところ、iPhoneやFacebookが日本に浸透してきて、ITに興味を持ったのがきっかけです。「ITが世界を変えていく」という勢いを感じたのです。マーク・ザッカーバーグをはじめ、世界で活躍しているIT系の経営者にはエンジニアが多いということを知って、自分もプログラミングを身につけようと考えました。

 日本では、プログラミングをするエンジニアは大手SIer(システムインテグレーター)が何十億円という規模で受注した大きな案件の2次請け、3次請けで、キツくて給料も安いというイメージが強いですよね。学生もそういうイメージを持っていて、エンジニアではなく、エンジニアをマネジメントする立場になりたいという人が多い。でも僕は、「プログラミングができる、新しいサービスを自分の手で作れる人こそが世界を変えられるんじゃないか」と思い、就活を途中でやめて、独学でプログラミングを学び始めました。

 ――自分でサービスを作って起業しようと考えられたのですか?

真子 その時点では、すぐに起業しようという気はなく、「いつかは」と思っていました。まずはITベンチャーでのインターンを始めました。エンジニアとして仕事をした他、人事も担当して、結果を出そうと必死に働いていました。

 ――独学で学んだプログラミングは通用しましたか?

真子 インターンをすることにしたのは、独学では絶対にムリだと感じたからなんです。最初は独学でなんとかプログラミングを身につけてやろうと思っていたのですが、ちょっとやるとわからないことが出てきて詰まってしまう。調べても、またわからないことが出てきて解決できず、一歩も前に進めない。自分が成長している実感もなくて、悶々としながら時間が過ぎていく。「これではいけない。わかる人が近くにいないとダメだ」と思いました。

 ところが、インターンをしても、意外と教えてもらえない(笑)。教えてくれる人もいたのですが、みんな忙しいので、つきっきりというわけにはいきません。「教えてください」と聞くと「ちゃんと調べたの!?」と高圧的に言われることもあって、怖がりながら質問をすることもありました。

 でも、そうやっているうちに、1年半くらいで「自分でサービスを作れるかな」というところまでにはなりました。

 ――そこまで上達したところで、独立を考えられた?

真子 インターン先に内定をもらっていたのですが、「人生における一番のリスクはやりたいことをやらないことだ」と思って、内定を辞退し、起業しました。大学4年生の冬のことです。それまでは、「自分が成長しないと、会社を興しても成功しないだろう」と思っていたのですが、「成長よりもチャレンジだ」と考え方を変えました。海外の事例などを見ると、必ずしも優秀な人がビジネスで成功しているわけではないからです。自分がやりたいことや解決したい問題があって、そのためにサービスをリリースして、それが当たるか当たらないか、というのがITビジネスの世界です。

 しかし、起業してリリースしたサービスは、数万ユーザーまでは伸びたものの、収益化には至らず、撤退に追い込まれてしまいました。その次にリリースしたサービスもうまくいかず、そうしているうちに仲間が一斉に会社を辞めてしまい、僕1人とインターン生数人だけになってしまった。2014年の秋のことです。こうして、またゼロからのスタートになったときに始めたのがTECH::CAMPです。

 TECH::CAMPを始めたのは、プログラミングを身につけるためには学習環境が重要だと気がついたからです。僕が自分でサービスが作れるようになるまでには約1年半かかりましたが、当社にインターン生とした入った新保麻粋(現取締役)は、まったくの未経験から約2カ月で、自分でiPhoneアプリを作れるまでになりました。他のインターン生を見ても、新保ほどではないにしても、やっぱりかなり早くプログラミングができるようになっていた。それは、とにかく手を動かして、わからなければ聞く、という環境にあったからです。

 プログラミングを教えている既存のスクールや大学では、先生がホワイトボードの前で講義をして、ちょっとだけ演習をして終わり、という授業が行なわれています。僕が通っていた大学でもプログラミングの授業があったのですが、プログラムが書けるようになる学生は1割もいませんでした。サービスを作れるレベルになるのは数%です。実践的な教育ではないから、できるようにならない。世の中にはそういう教育しかありませんでした。

 TECH::CAMPでは、講義はいっさいしません。話を聞いてもできるようにならないからです。とにかく手を動かしてもらいます。

 手を動かすためには、確かにインプットが必要です。従来、インプットのための手段は、講義の他には、本を読む、または動画教材を観るというのが主流でした。しかし、僕の目から見ると、本や動画教材にはすごくわかりにくいものが多い。初心者が「これ、どういうこと?」と詰まってしまうところが、ところどころある。そこで、TECH::CAMPの教材は、1度質問を受けたら2度と同じところで質問が出ないように更新しています。これまでの更新回数は5,000回以上。「一読してわからない教材は、わかりにくい教材だ」と考えています。

 そして、「すぐ質問できる体制」も整えています。土日祝日を含め、11~23時の間なら、教室でもオンラインでも、いつでも質問ができて、すぐに回答が得られます。

 ――卒業要件は決まっているのですか?

真子 決めていません。ただ、参加要件として、1カ月のコースなら月100時間以上を確保するようお願いしています。100時間やれば、自分で調べながらサービスのプロトタイプを作れるレベルになれます。職業としてできるようになるには、TECH::CAMPの環境なら300時間かかると思っています。

 ――挫折しないようにするためのサポートにも力を入れられているということですが、これは当初からですか?

真子 いえ、そういうわけではありません。最初は、それなりの金額をお支払いいただくので、みんな頑張ってくれるだろうと思っていたんですよ。ところが、いざやってみると、だんだんモチベーションが下がって教室に来なくなる方が少なくない。そのうち連絡もつかなくなる。挙句の果てには着信拒否される(笑)。

「お金を払ってくれたんだからいいじゃないか」というビジネスは、僕はしたくありません。成果に対してお金をいただく、ということをしたいんです。言ってみれば、プログラミング教育の『ライザップ』です(笑)。

 TECH::CAMPを始めて約1年半が経ちましたが、その経験から、教育は9割がモチベーションだと感じています。教材や質問できる体制も大事なのですが、本人のモチベーションがなければ成果は出ない。そこで、モチベーションをサポートするために、進捗が遅い受講生には電話をかけ、メンター(講師)と面談をして学習計画を立ててもらっています。自分との約束は簡単に破れても、他人との約束は破りにくいですから、メンターと約束してもらうことで学習を習慣にしてもらう。習慣になってしまえば、モチベーションに左右されることはなくなります。

 ――卒業後のフォローはあるのでしょうか?

真子 卒業から1年間は、「こういうサービスが作りたいんですけど」というような相談があれば、無料でアドバイスをさせていただいています。

 

実務で使わなくても「コードくらい書けないと」という時代に >

iyashi

著者紹介

真子就有(まこ・ゆきなり)

〔株〕div代表取締役

1989年、福岡県生まれ。青山学院大学理工学部情報テクノロジー学科に在学中にエンジニアとして複数のITベンチャーに勤務し、2012年に〔株〕we-b(現〔株〕div)を起業、複数のサービスリリースを経験する。14年、「サービスを生み出す人を増やしたい」という想いのもと、TECH::CAMPを始める。TECH::CAMPはこれまでに2,000人以上の卒業生を輩出。15年、『フォーブス』誌「注目のUnder30起業家10人」に選出。

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