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私に勇気を与えてくれた偉人たちの名言

2016年04月27日 公開
2022年10月27日 更新

竹中平蔵(東洋大学教授/慶應義塾大学名誉教授)

 

私が勇気づけられた松下幸之助の言葉

 経営者の中でも、とりわけ「創業者」の言葉には力強いものが多く見られます。会社のオーナーとして全責任を負う立場ならではの気迫とパワーが、短い言葉に凝縮されています。

 その代表格は、やはり松下幸之助でしょう。数多くの名言を残した松下さんですが、中でも私が勇気づけられるのは「失敗の原因は成功する前に諦めてしまうことだ」という言葉です。

 経営者にとって、失敗とはなんでしょうか。判断ミスや多額の損失、とりわけ最大の失敗と言えば「経営破たん」だと考える人が多いのではないでしょうか。

 しかし、これを「会社の終わり」だと思うのは間違いです。

 経営破たんとは正確に言うと、一般に不渡りを2回出すことによって、銀行取引停止になった状態を意味します。つまり、銀行との取引ができないだけで、商売がいっさいできなくなるわけではないのです。

 ここで諦めて成功する努力を止めてしまえばすべては終わり。もちろん、多額の負債がある場合など、状況にもよりますが、自分が諦めないかぎり、終わりは来ない。経営者のみならず、ビジネスマンはすべからくこの精神を持つべきでしょう。

 これは「状況をどう捉えるか」という問題でもあります。

 十数年前、私は小泉純一郎元首相から、非常に印象深いひと言を言われました。

 三位一体改革を推進すべく、日々地方自治体との交渉に当たっていた私は、なかなか進まない話し合いに苦労していました。ところが小泉さんにその旨を報告したとき、「そこまでまとまったか! あと少しだ!」と答えたのです。

「ここまでしかできていない」と考えるか、「ここまでできた」と考えるかで見え方は180度変わるのだ、と改めて実感しました。今思えば、小泉さんは私たちの士気を上げるために、あえてそう言われたのかもしれませんね。

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著者紹介

竹中平蔵(たけなか・へいぞう)

東洋大学教授・慶應義塾大学名誉教授

1951年、和歌山県生まれ。1973年、一橋大学経済学部卒。2001年、経済財政担当大臣に就任。以後、金融担当大臣、総務大臣などを歴任する。2013年、安倍政権で産業競争力会議有識者委員に就任。著書に、『竹中流「世界人」のススメ』(PHPビジネス新書)ほか多数。

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