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加入率たった3割?熊本地震を機に「地震保険」の見直しを

2016年05月27日 公開
2023年05月16日 更新

高橋成壽(ファイナンシャルプランナー)

意外と知らない「地震保険」とは?

今年4月に起きた熊本地震では、いまだ多くの被災者が避難所生活を強いられている。リスクが少ないと言われてきた熊本・大分での地震災害にショックを受けた方も多いだろう。ファイナンシャルプランナーの高橋成壽氏は、「今こそ『地震保険』を見直すべき」だと語る。その理由と、「効果的な選び方」とは?

 

保険が下りるのはたった3割弱?

2016年4月に九州地方で発生した熊本を中心とした大地震は、5月に入っても断続的に揺れが続いています。日本損害保険協会によると、2016年5月半ばで地震保険から約1,234億円の支払いとなることが発表されました。これは、1997年の阪神・淡路大震災の支払額を超え、2011年に起きた東日本大震災に次ぐ、過去で二番目に多い支払額となります。この数字だけでも、今回の地震の影響と被害の大きさを知ることができます。

では、被災者の多くが地震保険で救われることになるのかといえば、実はそうとは言い切れないのです。

地震保険は世帯加入率と付帯率という2つの情報が公開されています。世帯加入率は、住民基本台帳に登録されている世帯数のうち、地震保険に加入している世帯数の割合で、日本全国の平均で30%を下回っています。そして今回、最も被害の大きかった熊本県においても、平均加入率とほぼ同程度でしかないのです。

3割の世帯しか加入していないということは、被災された3割しか保険金を受け取ることができないということ。家屋の被害状況にもよりますが、家の修繕や家の建て替えなどで、個々の家庭の家計は苦しいものとなるでしょう。

皆さんお気づきの通り、加入率30%未満という数字は、このような大災害が起きた場合に低すぎる数値と言わざるを得ません。ぜひ、地震保険の必要性を再確認していきたいと思います。

 

火災保険は「地震」から守ってはくれない

家を買うときになくてはならない金融商品が3つあります。1つ目が住宅ローン(もちろん、現金で買えればその限りではありませんが)。2つ目が、「団体信用生命保険」。借金の返済を担保するために、借主に生命保険をかけて、借主の死亡時に住宅ローンが完済される仕組みです(ただし、住宅金融支援機構のフラット35については、団体信用生命保険への加入は任意となります)。そして3つ目が、今回のテーマである「火災保険」と、それに上乗せする「地震保険」です。

上乗せという言葉が意味するように、地震保険は単独で契約をすることができません。火災保険に加入し、そのプラスアルファとして地震保険をつけることが可能になります。

なぜプラスアルファかというと、火災保険は地震による家屋の損害を免責(支払い対象外)にしているからです。火災保険の補償範囲としては、火災、落雷、破裂・爆発、風災・雹(ひょう)災・雪災、水災、外部からの飛来物、水濡れ、盗難などがあります。ただし、地震が原因となる火災や土砂災害では、保険金を受け取ることができません。

たとえば、火事で家屋が燃えた場合は、火災保険に加入していれば保険金が受け取れます。しかし、地震をきっかけにした火事で家屋が燃えてしまった場合は保険の対象外となり、火災保険からはお金を受け取れません。

土砂崩れも同様。大雨による土砂崩れで家屋が埋まってしまった場合、加入している火災保険が水による災害までカバーしていれば、保険金を受け取ることができます。しかし、その土砂崩れが地震がきっかけで起こった場合、家屋が住めない状態になったとしても、火災保険からはお金を受け取れないのです。

もちろん、地震そのものの影響で家屋が倒壊した場合も、火災保険からお金を受け取ることはできません。つまり、地震がきっかけである場合はすべて、火災保険から保険金は受け取れないというわけです。だからこそ、地震保険が必要とされるのです。

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著者紹介

高橋成壽(たかはし・なるひさ)

寿FPコンサルティング代表取締役

日本FP協会認定CFP。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、投資商品の営業、外資系生保の営業を経て、ファイナンシャル・プランナー会社を設立。女性のお金に関する悩みを解消するサービスとして、家計管理講座「マネーレッスン」を開講中。

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