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「経営戦略史」で必ず知っておくべき8人(革新篇)

2016年07月22日 公開
2022年12月08日 更新

三谷宏治(金沢工業大学虎ノ門大学院教授)

「小さな挑戦を繰り返す人」になろう

現代は、「答えが一つだけ」という時代ではありません。本書の内容もまた、自分に合ったものを取捨選択してもらえればと思っています。

そういう意味でもぜひ、知っておいてもらいたいのはクレイトン・クリステンセンです。

主著『イノベーションのジレンマ』の中でクリステンセンは、「顧客志向でありすぎてはイノベーションは生まれない」と説いています。大手企業は既存の中核顧客がとても大切なので、その要望に従って既存の技術や仕組みを磨き続けます。そしていつの間にか、まったく別のところで別の顧客相手に生まれた「破壊的イノベーション」に取って替わられてしまうのだ、と主張しました。

では、どうすればいいか。とにかく素早く鉄砲を撃ちながら、うまくいったやり方を選ぶしかない。「別働隊を作って、そこでトライアンドエラーを繰り返す」、そんな試行錯誤型の経営が、今は必要なのです。

これは言うほど簡単なことではありません。でもその挑戦を楽しめるかどうかが勝負です。怖いけどちょっとワクワク。マンガ版にもそんな人物がちらりと登場します(笑)。先の見えない時代、彼のように楽しみながらチャレンジを! 私もこの初めてのマンガ化経験、楽しみました。

その8
クレイトン・クリステンセン(1952- )

敬虔なモルモン教徒で、ボストン コンサルティング グループでのコンサルタント時代も、教会と家族のために週末は決して働かないことで知られていた。40歳でハーバード・ビジネススクールの教授になり、45歳で発表した『イノベーションのジレンマ』が話題となる。イノベーションは顧客のニーズの中からではなく、それから遠く離れたところで生まれ、顧客志向でありすぎるリーダー企業を苦しめると主張した(破壊的イノベーション)。悪性リンパ腫に冒されながらも「教育」「医療」「ビジネス」でのイノベーションを探究し続けるエネルギッシュな人物。

 

(『THE21』2016年7月号より)

著者紹介

三谷宏治(みたに・こうじ)

K.I.T.〔金沢工業大学〕虎ノ門大学院教授

1964年大阪生まれ、福井育ち。東京大学理学部物理学科卒業後、外資系コンサルティング会社に就職。以来19年半、ボストンコンサルティング グループ、アクセンチュアで戦略コンサルタントとして働く。2003年から06年までアクセンチュア 戦略グループ統括。途中、INSEAD(仏フォンテーヌブロー校)で経営学修士(MBA)修了。
仕事と並行して28歳頃から社会人教育に携わり始め、32歳からグロービスで「経営戦略」などの講師を務める。06年から教育の世界に転じ、地元小学校でのPTA会長などを経て、07年からK.I.T.(金沢工業大学)虎ノ門大学院教授を務める。同時に、「決める力」「発想力」と「生きる力」をテーマにした授業や講演で全国を飛び回る。年間7,000人以上の社会人・子ども・保護者・教員に接している。現在K.I.T. 虎ノ門大学院教授の他に、早稲田大学ビジネススクール客員教授、グロービス経営大学院 客員教授、放課後NPOアフタースクール 理事、NPO法人3keys理事、永平寺ふるさと大使を務める。

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