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棚橋弘至の「全力」お悩み道場1~無理にポジティブにならなくていい!

2016年08月18日 公開

棚橋弘至(プロレスラー)

時には全力でクヨクヨし、ダラダラしよう

新日本プロレスをV字回復させた「100年に一人の逸材」・棚橋弘至。何事にも全力で組織をも変えた、その生き様は従来のプロレスファンのみならず、さまざまな人から支持されている。この企画では読者の皆さんからお寄せいただいたお悩みに、棚橋選手がお答えする。《取材・構成=村上敬、写真撮影=永井浩》

 

前向きになれない時はどうする?

Q1 棚橋さんを見ていて、「全力」という言葉が好きになり、自分の教訓にしています。でも、どうしても前向きになれないときがあります。そういうときはどうしたらいいですか?

 

気持ちが前向きにならないときにやることは一つ。今の自分の気持ちに「全力」で正直になること。それだけです。

たとえば、何かうまくいかないことがあってクヨクヨしているなら、全力でクヨクヨすればいい。また、朝起きて何もやる気が起きないなら、「今日は絶対に何もしないぞ」と決めて、全力でダラダラする。中途半端に無気力で過ごすと一日が無駄になったような気がするけど、「今日は全力でダラダラした」というと、なんとなく有意義な一日になった気がするでしょ?

全力で落ち込めば、深い谷の底に落ちてしまって戻ってこられない?
そんな心配はいりません。気持ちを切り替えるには、むしろ一度とことん落ちたほうがいいんです。たとえば、子供に口うるさく「勉強しなさい」といっても、勉強しませんよね。それより「全力で遊べ」といって好きなだけ遊ばせるべきです。トコトン遊べば、いずれ飽きてきて気持ちが勉強のほうに向いてきます。僕たち大人も同じです。これ以上落ちられないというところまで落ちれば、あとは勝手に気持ちが切り替わりますから。

もちろん僕も、うまくいかないときは落ち込みます。僕はヒール(悪役)ではなくベビーフェイス(善玉)なのに、お客さんからブーイングを浴び続けた時期があります。新日本プロレス伝統の「ストロングスタイル」とは違うものを目指していたから、お客さんに受け入れられるまでは毎回、ブーイングの嵐でした。あの時期は、本当につらかった。
でも、ずっと落ち込んでいたって仕方がない。クヨクヨしていても強くはならないけど、落ち込む時間を練習にあてれば強くなれる。そう思って、気持ちを切り替えるしかないんです。

これはプロレスラーにかぎった話じゃない。どのジャンルでも、伸びる人ほどネガティブな感情を引きずらず、パッと気持ちを切り替えます。まわりを見ていると、できる人ほどそうやってます。
気持ちを切り替えるコツは、やっぱり一度は全力で後ろ向きになることです。中途半端で、ふり幅が小さいのが一番ダメ。深く屈んだときのほうが高くジャンプできるのと同じで、しっかり落ち込んだほうが切り替わったときに元気になれます。
別の言い方をすれば、まずはクヨクヨしている自分を受け入れることが大切です。

遠征で姫路に行ったとき、ホテルでマッサージをしてくれたおばちゃんから、いいことを教わりました。「僕はいつもプラス思考なんですよ」と自慢げに話したら、「あんた、それは危険よ」という。理由を尋ねたら、「まず、すべてを受け入れなさい。そうすれば次が見えてくるから」。これにはガツンとやられました。

僕は、プラス思考になることを何より優先したほうがいいと考えていました。だけど、今の自分を受け入れることなく無理やりプラス思考に切り替えるのは、現実から目をそらすことと同じ。自分にウソをついているわけだから、どこか後ろめたい気持ちが残って、本当の意味で前向きになれない。おばちゃんの言葉で、そのことに気づいたのです。

実はこれって、プロレスの「受け身」の論理と同じなんですよ。プロレスラーは、相手の技を避けずに受け止めます。まともに食らえば、もちろん痛いですよ。でも、痛みを体感するから、「これなら耐えられる」と冷静に判断できる。どんな痛みかわからないまま逃げ回るより、痛みを避けずに引き受けたほうが、ずっと前に向かっていける。これはたぶん人生も変わらないと思う。ツラいことがあったら、まずはその現実と全力で向き合うこと。すべてを受け入れてこそ、ふたたび力強く立ち上がれるんです。

現実がツラくて簡単に受け入れられないときは、自虐にして笑うのが効果的です。僕もよくやりますよ。たとえば膝が痛くて歩くのがツラければ、「エースなのに、今日は電車で歩いてこいと言われた」といってネタにします。そうすると、ツラいことも客観視して受け止めやすくなります。

厳しい現実を受け止めて、全力で落ち込み、落ちるところまで落ちてから切り替える――。

僕はブーイングを浴び続けたせいか、いつしかこの一連のプロセスを一瞬でできるようになっていました。具体的には、何か嫌なことがあると、顔の前で指を一回転させて、パチンと鳴らしながら「わーすれろ!」という。おまじないみたいものだけど、これでバッチリ気持ちが切り替わります。前向きな気持ちになれないときは、ぜひお試しあれ!

 

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iyashi

著者紹介

棚橋弘至(たなはし・ひろし)

プロレスラー/新日本プロレス所属

1976年、岐阜県生まれ。98年、入門テストに合格。99年、立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入門。同年デビュー。2003年、初代U-30王者。06年、IWGPヘビー級王座を初戴冠。09年、11年プロレス大賞MVP。14年、第7代IWGPインターコンチネンタル王者に。第45代、47代、50代、52代、56代、58代、61代IWGPヘビー級王者。著書に、『全力で生きる技術』(飛鳥新社)など。



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iyashi

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