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棚橋弘至の「全力」お悩み道場4~栄養補給にプロテインを飲もう!

2016年10月08日 公開
2023年05月16日 更新

棚橋弘至(プロレスラー)

職場の士気をどう高めるか?

Q2 今、自分のいる業界全体が不景気で、職場の皆もモチベーションがなかなか上がりません。こんなときこそ盛り上げたいのですが、前向きなことを言うだけでは響かないようです。どうすれば士気を高められるでしょうか?

 

これは大変ですよね。同じ経験をしたからよくわかります。新日本プロレスも、ビジネスが厳しい時期がありました。このとき僕は、同じことをしているだけではお客さんが離れていくだけだという危機感を持って、新しいことにいろいろと取り組みました。でも、それらの挑戦は理解されず、会場はブーイングの嵐。社内にも賛同者はいなくて、浮いた存在でした。

たとえば会場では、自らファンに「タナハシ」コールを求めました。日本のお客さんは行儀がいいので、技が出たときには拍手をくれますが、行儀が良すぎてうまく盛り上がれないことも多いんです。でも、本当に気持ちが高揚したら、盛り上がってくれるはずなんです。たとえば長州力さんの入場でテーマ曲『パワーホール』が流れると、熱狂的な長州コールが起きますよね。僕は、あの盛り上がりを新日本のリングに呼び戻したかった。

当時の新日本には自らコールを煽ったりするレスラーはいなかったから、みんな戸惑ってました。腕を回して煽ってもファンは気づかないから、僕は自分で「ターナハシ、ターナハシ」って声を出しました。それでもシーンとしていたら、コールが起きるまで意地でも試合を始めなかった。

会社からは怒られましたよ。地方の大会もG1クライマックス(新日本の最大級の大会の一つ)でも同じように煽っていたら、「棚橋君、G1はそういう大会じゃないよ」と注意されたのです。でも、僕は曲げなかった。ビジネスが下がっているときなのだから、かっこつけている場合じゃないでしょ。

そうやって全力で取り組んでいたら、少しずつ賛同者が増え、3~4年で空気が変わってきました。そのとき思い出したのは、入門したときにコーチをされていた山本小鉄さんの「レスラーは3年先を見て練習しろ」という言葉です。筋肉はトレーニングしてすぐ明日つくわけじゃない、いつか強い筋肉になると信じて地道に続けるしかないという教えですが、職場の士気を上げるのも同じでした。最初は反応がなくても、先を見据えてやり続けることで、ようやくまわりも変わり始めるんです。

相談者さんも、変化はすぐに起きないことを覚悟して、今の取り組みを続けるしかないと思います。一つアドバイスするとしたら、一人でいいから早く味方を見つけることでしょう。僕のやり方がチャンピオンらしくないと批判されていたとき、音響のベテランスタッフである遠藤さんが、「みんなチャンピオンらしくないというけど、猪木さんに一番近いよ。棚橋君、君はそれでいいよ」と言ってくれました。この一言に、どんなに救われたことか。

職場の空気が変わるまでには、どうしても時間がかかります。そのときに一人でも仲間がいれば、未来を信じて頑張れる。口に出さないだけで、同じ志を持った人は必ずいるはず。そういった人たちが手を挙げやすい環境をつくるためにも、自分が口火を切って行動することが大切です。

 

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著者紹介

棚橋弘至(たなはし・ひろし)

プロレスラー/新日本プロレス所属

1976年、岐阜県生まれ。98年、入門テストに合格。99年、立命館大学法学部を卒業後、新日本プロレスに入門。同年デビュー。2003年、初代U-30王者。06年、IWGPヘビー級王座を初戴冠。09年、11年プロレス大賞MVP。14年、第7代IWGPインターコンチネンタル王者に。第45代、47代、50代、52代、56代、58代、61代IWGPヘビー級王者。著書に、『全力で生きる技術』(飛鳥新社)など。

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